秘されし、その甘やかな救済 《 第二章 06

 しかしそうしていつまでも無遠慮に見つめているだけでは埒があかない。

「ど……、どうすればよろしいのですか?」
「――え」

 ラティーシャがなにかしなければ、彼の昂りはおさまらないのだろう。ラティーシャは義務感を覚えてマティアスに迫る。

「その……どうすれば公爵さまのそれは落ち着かれるのですか?」
「いや……無理はしなくていい」
「いいえ、私にできることなら、いたします。公爵さまには恩がありますから」

 マティアスは口もとに指を当ててふいっとラティーシャから視線を逸らす。

「ラティーシャは忠義だな……。そんなきみに仕えてもらえる神がうらやましいよ」

 彼の碧い瞳がゆっくりとラティーシャのそれをとらえる。立ち込める湯気のせいか、マティアスの瞳が濡れているように見えた。澄んだ水底を思わせる美しい碧だ。

「――だが、この邸にいるあいだはきみの主人は俺……ということで、いいね?」
「は、はい」

 気圧されてうなずく。別段、高圧的な物言いをされたわけではないのに、従わされてしまう。もとよりそのつもりなので反発する必要もない。彼にはすすんで奉仕したくなるのは、なぜだろう――。

「ここの……根もとを握り込むんだ」

 ラティーシャは言われるまま肉竿の根をつかむ。

(……硬い)

 手のひらに触れている男根の表皮は柔らかいが、その奥――芯の部分はとんでもなく硬い。握り込んでみて初めてそれがわかった。

「前後に動かしてくれ。……そう、上手だ」

 マティアスが「はぁ」と小さく吐息まじりに声を漏らす。

(私……)

 不埒な行いをしている。
 ――これは神の御心に反する行為ではないの?
 頭の中でもうひとりの自分がそう警告してくる。
 しかしラティーシャの手は止まらない。
気持ちよさそうに眉根を寄せるマティアスの顔をもっと見ていたいと思った。
 彼を、もっと悦ばせたい――。
 気がはやったせいか、ラティーシャの手の動きも速くなった。
 肉棒の先端から透明の液体がにじみ出てきた。それは快感ゆえの先走りなのだが、ラティーシャにそういう知識はない。

(公爵さまは悦んでいる?)

 手でこすっているだけなのに気持ちがいいのだろうか。彼の表情でそれを確認するべく上を向く。
 マティアスとラティーシャの目が合う。

「――っ!!」

 ドクッ、ドクッと手の中にあるそれが激しく打ち震える。

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