オナニーオフィス

柚子川 杏里(ゆずがわ あんり)が勤める会社は少し変わっている。どんな風に変わっているのかと言うと、休憩室での自慰行為が公に認められていることだ。

(同僚の前で一人エッチなんて、あり得ないわ……!)

入社して五年が経つ今も、杏里は くだんの休憩室には寄り付いたことがなかった。これからも、その場所に行くことは無いだろうと思っていた。

(ああ、暇ね……)

新人の頃は仕事に追われていたが、世界的な金融危機の煽りを受けて仕事量が激減している。暇をもて余した杏里は古い資料を整理することにした。

(もう……重いっ)

フロアの最奥にある倉庫と自分の部署を往復すること一時間、疲労は腰に蓄積している。とにかくどこかで休憩しなくては。
杏里は休憩室の札が掛かった部屋に入った。そう、入ってから気がついたのだが、ここは自慰専用の休憩室だ。
幸い、中には誰もいない。部屋の造りは普通の休憩室と全く変わらず、コーヒーやお茶のサーバーにちょっとした菓子まで置いてある。他の休憩室と異なるのは、沢山の大人のおもちゃが菓子棚の隣に並んでいることだ。
杏里はアダルトグッズから目を逸らして菓子を物色してコーヒーを淹れ、真ん中に穴が空いている椅子に腰掛けた。誰も来ませんように、と祈りながらコーヒーを啜る。

(エッチな道具って、どんなのが置いてあるんだろ……?)

見ないようにしていたものの、やはり気になる。菓子を食べ終えた杏里は入り口の扉が開かないか気に掛けながら手近にあったアダルトグッズを取った。
小さくて真っ白なローターは卵みたいで可愛らしい。

(これをアソコに押し当てたら、気持ち良いんだろうな……)

杏里はローターを持ったまま再び椅子に腰掛け、ストッキングを膝の辺りまでずり下げた。下着は脱がず股間にローターを押し当てる。いつ誰が来るか分からないから、秘部を晒すわけにはいかない。

(あ……イイ……)

割れ目を押していると次第に生地が湿り気を帯び、直接 触れたくなって来た。

(まだお昼前だし、誰も来ないよね)

性欲に負けた杏里は都合の良いように考えて、ローターの電源を入れた。そしてショーツの隙間からそれを滑り込ませ、クリト●スをなぶった。

「ぁ、あ……っ!」

自分の部屋でするのとは比べものにならない快感だった。ローターの性能が良いのかそれともこの状況がそうさせているのかは分からない。隙間から弄るだけでは物足りなくなって、杏里はショーツを脱ぎ去った。

「んんっ、あ、ふぅ……っ」

大きく脚を開いて割れ目の中の突起をローターで押し潰すと、杏里はすぐに下半身を収縮させた。だけどこのままでは終われない。身体は未だに疼いている。
杏里はジャケットとブラウスのボタンを外してブラジャーを捲り上げ、今度は上半身の突起をローターで突ついた。

「あ、ああん……んっ、んく……っ!」

滴る蜜は自身の指で絡め取り、潤滑剤にして一気に膣肉の中に突っ込んだ。

「んんっ、あ、ひああ……っ」

(もう、イク……!)

そう思ったのとほぼ同時に休憩室の扉が開いて、杏里がよく知る同僚の顔が視界に入った。

「柚子川さんがここに居るなんて意外」

杏里は勢い良く指を引き抜き、胸元を腕で隠して脚を閉じた。

(最悪……! よりによって、コイツに見られるなんて……!)

「そっちこそ、珍しいじゃない。中村くんがここを使ってるって話は聞いたことなかった」

杏里は同期の中村 嘉昭(なかむら よしあき)に背を向けて、ブラウスのボタンを掛けた。彼と杏里は同じ部署で、主任の椅子を巡って争っているライバルだ。

「そうだね。俺、今日 初めてここに来たから。アレ……柚子川さんはオナニー止めちゃうの?」

「……もう終わった」

「俺は今からだから。見ててよ、柚子川さん」

中村は椅子から立ち上がろうとする杏里の両肩を掴んで強引に座らせた。それから別の椅子を向かい合わせ、両脚で杏里の身体を囲った。

中村は杏里の顔を見下ろしながらベルトを外し、ズボンのファスナーを下ろした。彼の一物は既に膨らんでいて、トランクスが盛り上がっている。

(やだ、私……なにマジマジと見てるんだろ)

彼の陰毛が目に入ったところで、杏里はハッとして目を逸らした。

「柚子川さん、俺のチ●コを見るんなら、その代わりに君の大事なところも全部 見せて。じゃなきゃ俺、イけない」

「何で私が中村くんに見せなきゃいけないの。ここには〝そういう〟ビデオがいっぱいあるんだから、それを見ればいいでしょ」

「君の身体が魅惑的すぎて、無理だよ。ねえ、早くオッパイ見せて」

中村はこんなことを言う人だっただろうか。不意に目を伏せたら大きな雄棒が目に入ってしまい、途端に杏里の下半身はドクンと疼いた。

「……じゃあ、少しだけ」

いかにも彼のためと言わんばかりに杏里は再びブラウスのボタンを外し、ブラジャーのホックも外してカップを少しだけ下にずらした。

「それじゃ乳首が見えないよ。もしかして焦らしてる?」

「焦らすもなにも、これ以上は見せられない」

「君は俺の大事なモノを見てるのに、不平等だよ」

中村は肉棒をしごいていない方の手をテーブルに伸ばした。そして先ほどまで杏里が使っていた白いローターを手に取り、ブラジャーの上から敏感な突起に押し当てた。

「っちょ、止めて……っあ」

杏里は彼の腕を両手で掴んだが、男性の力に敵うはずもなく、中村はローターでブラジャーのカップを下にずらした。

「鮮やかな色だね。もうこんなに硬くなって……美味そう」

「ああっ、あ……っ、いや、やぁ……っ」

ローターは乳首を激しく なぶっていて、彼の腕を掴む手に力が入らない。下半身の疼きは増す一方で、蜜が噴き出して来るのが分かった。

「柚子川さん、スカート脱いで。下着もね」

杏里は喘ぎながら彼の言う通りにした。下半身を露出するのと同時に中村は杏里の乳首に食らい付き、椅子の真ん中の穴から膣内に向かって勢い良くローターを突き上げ押し挿れた。

「あああっ! あ、んふぅぅ……!」

「自分でクリ●リスを弄ってもいいんだよ。この休憩室はそういう場所だから」

中村は杏里の乳首を摘まみながら相変わらず自身の陰茎をしごいている。彼の指摘した箇所を弄りたくて堪らなくなっていた杏里は ためらうことなく割れ目の中の突起に指を押し当て、もう片方の手は彼が摘まんでいない方の乳頭に触れた。

「んんっ、ふ、ひぁぁ……あっ、イッ……イッちゃ……うううっ!」

「こんなに卑猥な柚子川さんが見れるなんて……俺、幸せ」

彼の声はもはや聞こえていなかった。身体はあらゆる性感帯を塞がれて悶えている。

「……っん!」

突然、乳房ごと脇腹を鷲掴みされて彼の方に引っ張られた。何か考える間も無く唇が重なり、ねっとりと熱い舌が絡みついて来る。

「んんっ、ん……っふ、うう!」

それから、杏里が絶頂するのと同時に彼も果て、杏里はグッタリと彼の胸に身体を預けた。

「……ここでのセックスは禁止されてるから、場所を変えようか」

静かに響いて来た彼の声に、杏里は黙って頷いた。

半身に埋め込まれたローターを取り出そうとしていたら、

「ソレはそのまま持って行こうよ」

中村に手首を掴まれ、杏里は彼を見上げた。中村は何食わぬ顔で杏里の下着とスカートを履かせて、ショーツの隙間にローターの紐を通している。

(ちょっと待って……何でこんなことになってるんだっけ)

頭が冷えて、改めて考えると不可解な状況だ。破れてしまったストッキングをゴミ箱に捨て、しばし呆然と立ち尽くしていた。すると、

「じゃ、行こっか」

「……っん!」

クイッとローターのコードを引っ張られ、杏里は中村に連れられて膣にローターを突っ込んだまま会社の廊下を歩いた。

「あの、中村くん……どこに……っぅ!」

カチッと音がして、膣内の異物が振動を始めた。繋がれた犬の散歩でもするような顔をして、中村は杏里の少し前を歩いている。

「柚子川さん、古い資料の整理をしてたでしょ。倉庫の鍵、まだ持ってるよね」

「持って……る……けど……っな、中村くん……歩くの、速い……っんく」

「ああゴメン。そんな顔の君を誰かに見られたら嫌だから、つい」

口では謝っているものの、中村が歩調を緩める気配は微塵も無かった。
倉庫に着くと中村はすぐに内側から鍵を掛け、杏里の身体を背中から扉に押し付けた。

「……っ、中村くん……っあ、ああっ!」

ショーツの上からローターを押され、杏里は扉に両手を付いて うねる快感に耐えた。足がガクガクと震え、そうしなければ立っていられない。

「俺、柚子川さんがオナニールームに入って行くのを見かけて、いてもたってもいられなくなったんだよね。君の身体をグチャグチャにしたくて。でも、あそこは監視カメラが付いてるからね……」

ジャケットとブラウスは後ろから引きちぎるような勢いで剥ぎ取られ、すぐに乳房が露わになった。

「中村く、ちょ……っ、待って……っ! 私……」

「ここなら、思う存分 君の身体を犯せる。まさか君はさっきので満足してないよね。俺は全然 足りないんだ。柚子川さんの中に入りたくて堪らない」

「あ、ああっ! ん、んっ……!」

彼は身体を密着させて来て、杏里の双乳を掴んで冷たい扉にその先端を擦り付けた。

(私、完全に流されてる……でも)

擦れる蕾と振動する蜜壺は淫液を量産している。うなじをねっとりと舐められると、直接 触れられているわけでは無いのに陰核が鼓動した。

「はふ……っく、ぅぅ……ッ!」

中村は杏里のショーツを荒っぽく下ろして、イッたばかりの陰部からズプリとローターを引き抜いた。そして間髪入れずに今度はもっと大きな異物がヌルリヌルリと侵入して来た。

「ふぁ、は……あぅ、んんっ!」

「ああ、思ってた通りの締め付けだ。柚子川さんはどう?自分でするのと、どっちが気持ち良い?」

分かり切っている答えを返す余裕は無かった。上半身の蕾と割れ目の中の花芽をなぶる指は痛いくらい強引なのに、膣肉を激しく蹂躙する雄棒のせいで痛覚は快感に変わっている。

「あああっ、も……っぅ、や、あ、んぅぅっ!」

「ねえ柚子川さん、君の中にたくさん出すよ。もしこれで子どもが出来ても、出来なくても……俺と結婚してくれる?」

こんな付け焼き刃のようなプロポーズ、とてもじゃないけど信じられない。それなのに、蜜壺を満ちて行く彼の陰液をありありと感じて、杏里はただそれを受け入れた。

FIN.

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