森の魔女と囚われ王子 《 第三章 19

「はぁっ、ぅ……っ」

 硬い舌先で探るようにツン、ツンッと乳頭をノックされた。夕闇はまださほど濃くはない。むしろまだあたりは明るい部類だ。それなのにこんなことを――と、背徳感を覚える。
 では暗ければなにも問題ないのか、ということには彼女自身、無意識に目をつむっている。
 湯気に濡れてつやめく白金髪が小刻みにうごめく。オーガスタスは顔の角度を細かに変えて、あらゆる方向からリルの乳首を舐め上げる。
 硬く濡れそぼった乳頭は彼の舌を弾く。オーガスタスはそれを面白がっているのか、わざと舌を滑らせているようだった。

「や、だ……。遊ばないで……。っふ、ぁぅ……」

 オーガスタスはリルの乳首に舌を這わせたまま「んん」とうめくように返して、なまめかしくみずみずしい薄桃色の先端を大きく口に含んだ。

「あぁっ……! ゃ、ぁ……ッ」

 あまりに強く吸い上げられると、先端からなにか出てしまうのではないかと心配になってしまう。まるでなにかを吸い尽くしているかのような、そんな勢いで乳首を吸引されるのだ。
 ちゅぽっ、と淫猥な音が立って、乳頭が彼の口から出てきた。ようやくそこへの愛撫が終わったのかとひといきつくものの、今度はもう片方のそれを口腔へおさめられてしまった。

「ん、ゃっ、やぁ……っ、オーガスタス……!」

 そろそろべつのところにも刺激がほしくなってきた。自分がもっと素直な性格ならば、と思うけれど、28年間こうなのだから急には変えられない。
 下半身が焦れてくるのは、彼の愛撫がたくみだからだ。緩急をつけて乳首を舐め転がされている。ときに素早く、ときにはねっとりと。その落差がたまらなく下肢の付け根をくすぶらぜる。
 舌の腹を使って大胆になぶられるのもいい。熱い舌の感触が、頭のなかまで容易に痺れさせる。

「あ……陽が落ちる。リル、前を向いて」
「へ……っ?」

 急に終わってしまった舌戯に拍子抜けする。彼は本当に奔放だ。
 オーガスタスはリルの腰もとをつかんでくるりと回転させた。

「ここで見る夕暮れは格別に美しい」

 彼はときおり妙に真面目な調子で言う。ふだんがおどけてばかりだから、よけいにそう感じる。

「……ええ」

 ぽつりと小さくあいづちを打ち、ぼうっとオレンジ色を眺める。
 まるでなにかに吸い込まれるかのように、急かされるかのごとく太陽は山の向こうへ消えていった。
 あたりは夕焼けでまだ薄暗い程度だが、間もなくして真っ暗になってしまうだろう。

(オーガスタスはいつまでこうして戯れるつもりなの)

 ランプに明りを灯さなければなにも見えなくなってしまう。そんな焦りはあるものの、この戯れを早く終わらせたいとは――いまは思っていない。

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