森の魔女と囚われ王子 《 第五章 16

 よく晴れたある朝。
 リルとオーガスタスは白馬――オーガスに乗って森を駆けていた。
 頬を撫でる風は早朝独特のつめたさがあって、しかし心地がよい。背に感じる体温のおかげかもしれない。

「よーし、いい子だ。僕の分身」

 リルが振り返る。嬉々として馬を走らせているオーガスタスを見上げてみる。
 彼と出会ったときからの仲である白馬は、リルがオーガスタスを捜しに出かけたあの日、あのあと。どこにも行かずに屋敷で待っていてくれた。
 オーガスと名付けたとリルが言うと、オーガスタスは白馬を分身だと称していっそうかわいがった。
 いまは日々の街への往診に大いに役立ってくれている。
 リルはマレット商会へ卸す薬の量を減らした。屋敷で作る薬の大部分は、オーガスタスとともに直接、街のひとへ売っている。

「――ねえ、私たちが街でどういうふうに呼ばれているか知ってる?」

 コンプレックスはおそらくふたりとも、いまだにぬぐえない。けれど、外見だけではなく本質を見てくれる心優しいひとたちにあふれている。彼と街のなかをめぐるようになって、そう気づかされた。
 白馬に乗った医者と魔女。
 それが、ふたりの通り名。
 リルは「ふふっ」と声を出して笑った。頬に当たる風が爽快で、つい笑い出したくなってしまった。

「なかなか、悪くないわ――」

***

 往診を終えて森の家へ帰る途中のことだった。
 休憩をしようと彼が言うものだから、馬を走らせるのに疲れたのだろうと思って素直に従ったのだが――。

「……オーガスタス! もう日が暮れちゃうわ……。んっ、ん!」

 この森に何十年かは自生しているであろう木の幹に手をつき、リルはぐるりとうしろを振り返ってオーガスタスをとがめた。

「だって……森のなかですると、よけいに気持ちがいいんだもん」
「んぁっ! ぁ、うう」

 淡いピンク色のドレスは夕陽に染まり、乱れた色濃いドレスは淫猥さを際立たせる。

「だ、だめ、もう……。んくっ、あぁ……っ!」

 オーガスタスの白衣が風と律動で揺れる。ひらかれたドレスから顔を出しているリルの豊満な乳房をうしろから揉みしだきながらオーガスタスは言う。

「だれも僕らを見ていないよ。だから安心して、リル。あなたの淫らな姿を見知っているのは、僕だけだ――」
「――っ、ひぁぁっ!!」

 ぐんっ、と強く最奥を穿たれ、悲鳴じみた嬌声を上げる。もっとも深いところを突いた肉棒は入り口のところまで引き戻り、ふたたび、それまで以上の圧力で突き込んでくる。
 大胆な動きで隘路を往復されている。そうして草むらに散り落ちた蜜は、夕陽に照らされてきらきらとなまめかしく輝いていた。


FIN.


つたない作品を最後まで根気強くお読みいただき、本当にありがとうございました。
精進してまいりますので、今後とも拙作をどうぞよろしくお願いいたします。

熊野まゆ

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