「――誕生日、おめでとう。やっと僕の手に入る」
その夜、事は起こった。
若菜《わかな》は明日が18歳の誕生日だということをすっかり忘れて床に就いた。日付が変わった頃にはすっかり深い眠りに落ちていた。
午前零時を一秒だけまたいだときだった。
聞きなれた声が聞こえて、急に体が重くなった。何事だろうと思って目を開ければ、そこには仕えている主人の顔があった。
「か、和臣、さま……?」
体にしっかりと掛けていたはずの布団はどこかへ行っている。代わりに、この広大な邸の主人である東條 和臣《とうじょう かずおみ》が重くのしかかっていた。
(和臣さま、お部屋をお間違えになった?)
和臣の寝室である奥座敷の次の間が、この邸に住み込みで働いている若菜の寝床だ。
「今日をずっと待ち望んでいたよ」
和臣は端正な顔で笑みを形づくる。どうやら寝床を間違えているわけではなさそうだ。
「夢にだって何度も見た」
若菜には彼がなにを言っているのかさっぱりわからない。
「和臣さま? あの……」
「きみはあまりにも鈍感だ。だから、実力行使をすることにしたんだよ」
和臣の大きな手のひらが着物の上のふくらんでいる部分をつかんだ。若菜の体がびくりと跳ね上がる。
「ひゃっ!?」
「ああ……きみのここは触れたらこんなにも柔らかいんだね」
和臣は若菜の着物の上からふくらみを両手でわしづかみにして円を描くように揉みまわす。ときおり指先に力を入れて、感触を確かめるようにぐにゃぐにゃとふくらみを押した。
「やっ!? あ、ゃぁっ……!」
胸を揉みまわされているうちに着物の衿あわせが崩れてきた。和臣は胸をつかんだまま左右に手を広げて若菜の乳房をあらわにする。
若菜は慌てて自身の胸もとを押さえた。
「和臣さまっ……! 酔っていらっしゃいますか?」
酔っているのでなければ、真面目で温厚な彼が突然、豹変してしまったことの説明がつかない。
「……そうだな。そうかもしれない。きみに酔いしれている」
そう言いながら和臣は闇色の着物の腰紐をほどく。彼の着物の裾がはらりと落ちると、隆々とした腹筋がのぞくのと同時にそのすぐ下に異様なまでに大きくそそり立つ肉塊があった。若菜は初めて目にする雄の象徴に驚いて顔を凍てつかせる。
「そんな目で見られると、いたたまれないな」
和臣が哀しげに笑う。
(どうして、こんな……)
兄のように慕っていた人。それ以外の感情は持ち合わせていない。雇い主に対してそのような感情を抱いてはいけない。
――私はただの家事手伝いなのだから。
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その夜、事は起こった。
若菜《わかな》は明日が18歳の誕生日だということをすっかり忘れて床に就いた。日付が変わった頃にはすっかり深い眠りに落ちていた。
午前零時を一秒だけまたいだときだった。
聞きなれた声が聞こえて、急に体が重くなった。何事だろうと思って目を開ければ、そこには仕えている主人の顔があった。
「か、和臣、さま……?」
体にしっかりと掛けていたはずの布団はどこかへ行っている。代わりに、この広大な邸の主人である東條 和臣《とうじょう かずおみ》が重くのしかかっていた。
(和臣さま、お部屋をお間違えになった?)
和臣の寝室である奥座敷の次の間が、この邸に住み込みで働いている若菜の寝床だ。
「今日をずっと待ち望んでいたよ」
和臣は端正な顔で笑みを形づくる。どうやら寝床を間違えているわけではなさそうだ。
「夢にだって何度も見た」
若菜には彼がなにを言っているのかさっぱりわからない。
「和臣さま? あの……」
「きみはあまりにも鈍感だ。だから、実力行使をすることにしたんだよ」
和臣の大きな手のひらが着物の上のふくらんでいる部分をつかんだ。若菜の体がびくりと跳ね上がる。
「ひゃっ!?」
「ああ……きみのここは触れたらこんなにも柔らかいんだね」
和臣は若菜の着物の上からふくらみを両手でわしづかみにして円を描くように揉みまわす。ときおり指先に力を入れて、感触を確かめるようにぐにゃぐにゃとふくらみを押した。
「やっ!? あ、ゃぁっ……!」
胸を揉みまわされているうちに着物の衿あわせが崩れてきた。和臣は胸をつかんだまま左右に手を広げて若菜の乳房をあらわにする。
若菜は慌てて自身の胸もとを押さえた。
「和臣さまっ……! 酔っていらっしゃいますか?」
酔っているのでなければ、真面目で温厚な彼が突然、豹変してしまったことの説明がつかない。
「……そうだな。そうかもしれない。きみに酔いしれている」
そう言いながら和臣は闇色の着物の腰紐をほどく。彼の着物の裾がはらりと落ちると、隆々とした腹筋がのぞくのと同時にそのすぐ下に異様なまでに大きくそそり立つ肉塊があった。若菜は初めて目にする雄の象徴に驚いて顔を凍てつかせる。
「そんな目で見られると、いたたまれないな」
和臣が哀しげに笑う。
(どうして、こんな……)
兄のように慕っていた人。それ以外の感情は持ち合わせていない。雇い主に対してそのような感情を抱いてはいけない。
――私はただの家事手伝いなのだから。