淫らに躍る筆先 《 20

 恥ずかしそうにうつむく和葉に龍生は「褒めてるんだよ」と軽い調子で言った。それから両手で和葉の脇腹を撫で上げ、ふくらみの下のほうをつかんで揺さぶる。
 揺らされているだけなのに尖りきっている自身の乳頭を見つめて和葉は「やれやれ」と思うのと同時に、そこを尖らせて興奮しているのは龍生も知るところなのだから早く触れてほしいと思った。龍生は身をひねって和葉の顔と胸をのぞき込んでいる。

「ああ、たまらないな」

 ――それはこっちの台詞だ。

「ん、んんっ……」

 律動は相変わらず緩慢だし、龍生は乳輪を指のあいだに挟んだだけでいただきをいじってはくれない。彼のモノを中に受け入れているのに、これでは依然として物足りない。

「……ごめんね」

 なぜ謝るのだろう。

「きみがじれったそうにしてるその顔が、すごく好きなんだ」
「え……!?」

 和葉は声もなくあわあわと口を動かす。

(私、いまどんな顔してるんだろ?)

 倉庫に鏡や窓のたぐいはないので自分の顔は確かめることができない。

(あ……棚のガラス戸になら映るかも)

 へんな顔ではないだろうかと心配になり、和葉はちらりと棚のほうを見やる。

「……っ!!」

 ――見なければ、よかった。

「ん……? ナカが締まったよ」
「そ……です、かっ?」

 和葉はすぐに視線を真正面へ戻す。龍生にうしろから突かれている自分のみだらな姿を目の当たりにして、いっそう情欲をかき立てられてしまったのだとは絶対に知られたくない。

「どうして興奮したの」
「ふ、ぅっ……」

 言いたくなくて、首を小さく横に振る。それでも龍生は「ねえ」と甘く低い声を出して理由《わけ》を知りたがる。抽送はよりいっそうゆるやかになってしまった。和葉のなかでなにかがプツンと切れる。

「も……むり、です……! もっと、激しく……して!」

 すると龍生はなにがおかしいのか「ふっ」と笑って、和葉の乳首をつまみ上げた。

「かわいい。大好きだ」

 誘惑的にささやきながら龍生は腰の動きを速める。

「ひぁ、あぁあっ……!!」

 急に激しくなった突き込みで体がぐらぐらと揺れる。不安定な和葉の体を龍生は乳房ごとしっかりと抱き寄せ、そのいただきを指でいじりながら腰を振りたくった。

「やうっ、ふぅ……ん、んぁっ……!」

 体の中にうずまった彼の筆先は淫らに躍り、私を快楽のとりこにする。


FIN.

お読みいただきありがとうございました!

熊野まゆ

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