花の香り、蜜の予感 《 05

 彼の切実そうな顔はどこか憂いを帯びている。

「きみに嫌われたくない。けど――触れたくてたまらないんだ」

 頬に伸びてくる手はやけに鈍い動きをしている。ためらいがちなのだ。肌に触れる一歩手前で彼の手が止まる。

「……さわってもいい?」

 訊かれ、夏帆はすぐにこくっと首を縦に振った。
 雑賀は少々面食らったようだったが、
「嫌だったら言って。すぐにやめる」
 夏帆の両頬を手のひらで包み込み、顔を寄せる。

(えっ……!? あ、そっか……。さわるって、そういうこと……)

 頬を撫でられるだけだと思った夏帆は、すぐにうなずいてしまったことが恥ずかしくなった。しかしそれを弁明する余地はない。

「ん……!」

 そっと、一瞬だけ押し重なった唇は熱く、初めての感触に驚いているあいだにまた唇を押しつけられた。

「ふ……む、ぅ」

 鼻から抜ける息はなまめかしさを伴っている。こんなことなら音楽か、あるいはテレビをつけておけばよかった。自分の吐息の漏れる音が、いやに恥ずかしい。
 彼の手が背中をゆっくりと撫で上げる。

「……っ!」

 くすぐったさの中に隠れた確かな快感がピリリと手足の先へとほとばしる。

(いやだ、私……)

 男性と話をするだけで顔が赤くなってしまうのだから、『そういう』ことをされるのは絶対に耐えられないだろうと思っていたのに――。

「嫌じゃ、ない?」

 雑賀にそのものずばりを言い当てられてしまった夏帆は、いっそう頬を赤らめてあわてふためく。
 赤く色づいた頬を雑賀は指で撫でたどった。

「……いまきみの顔が赤いのは、俺のせい?」

 眉尻を下げて微笑したまま彼は続ける。

「俺の心臓が早鐘を打ってるのは、きみのせいだよ」

 片手をつかまれ、彼の胸に運ばれる。そこから伝わってきた脈は確かに早いような気がした。夏帆もまたつられて、心臓がさらにバクバクと早鐘を打ち始める。

「もう少しだけ……さわってもいいかな」
「え……と」

 背中に添えられていた彼の手が、のろのろとした動きで前へやってくる。
 大きな手のひらが、ふくらんでいるところをのぼり始めてしまう。どうすることもできず、夏帆は身を硬くするしかなかった。

「――っ!!」

 雄々しい指先がふくらみのいただきを探り当てて引っかくと、体が過剰に反応して肩がビクンと跳ね上がった。夏帆の顔がひきつる。
 すると雑賀は思案顔になって、名残惜しそうに手を引いた。

「……まだ、早かったみたいだね」

 夏帆はなにも答えることができなかった。赤い顔のままうつむき、ひそかに足の付け根をこすり合わせる。
 ほのかな甘い香りがベランダから風に乗ってただよう。
 蜜の訪れはもうすぐ、そこに。

FIN.

お読みいただきありがとうございました!

熊野まゆ

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