ひきこもり令嬢は囚われの貴公子に溺愛される 《 終 章 想いのままに 05

「ん……」
 小さくうめいて、オーランドはリルの肩に顔をうずめた。ちゅうっと音を立てて首すじを吸いながら彼女の乳首を指で弾き、下半身の豆粒をくにくにとつまんで揺らしている。
「っ、は、ぅ……ん」
 彼に倣って首すじを吸ってみようかと思ったが、そこまでの余裕はなかった。硬い陰茎を手で覆ってこすり立てるだけでいっぱいいっぱいだ。
 オーランドのつやっぽい吐息を聞いているだけでも達してしまいそうになる。
「リル……。根もとのほうからつかんで、前後させてみて」
 哀願するような声音で指示をされた。
 彼が自分にほどこしてくれているのをまねるのにも限界がある。リルは男性器のなぐさめかたが少しもわからなかったので、言われたとおりにやってみることにした。
「こう……?」
「ん、そう……。上手だよ」
 オーランドの表情がいっそうなまめかしさを増す。リルは嬉しくなって、手の動きを速めた。
「っ、リル……! そんなに速くしたら、もたなくなる」
「……でも、気持ちがいいんでしょう?」
「そう、だけど……。でも、もっとじっくり愉しみたい」
 ぽつりとつぶやくと、オーランドはリルの体を強引に回転させた。
「えっ!? やっ、ちょっと……!」
「こうするほうが、リルのおっぱいを両方ともいじれるし、ね?」
 背中から抱き込まれる格好になった。オーランドはふたつのふくらみをうしろからわしづかみにして揺らしている。
「でも、これじゃあ私は……あなたのを、さわるれないわ」
「それは、大丈夫」
「ひゃぅっ!?」
 泡に浸かっている下半身がうごめき、股のあいだに雄物を挟み込まれた。
「これなら、僕のペースで好きなようにできる」
「ぁぅっ、ん、ぁあ……ッ!」
 両方の乳房を勢いよく揉み込まれ、もともとぬめっていたそこがいっそう泡立ってくる。乳頭は指のあいだに挟まれてくにくにと踊らされ、すべやかな感覚がなんともいえない。ただひたすら気持ちがよい。
「ふぁっ! あ、ぁううっ、ンンッ」
 オーランドが腰を揺らす。剛直が花芯を執拗にこすり立てる。
「っは、ぁ……。すごく気持ちいいよ、リル……」
「んっ、んん……っ。わたし、も……。っぁ、あ」
 オーランドの腰の動きに合わせて体が弾み、彼の指の動きが不規則になる。上半身のつぼみを予期せぬ動きでなぶられ、弾かれる。淫核をこする肉竿は果てを目指して速さを増していく。――昇りつめていく。
「あぁっ、ぁ、うう――……!!」
 ふたりの秘所は重なり合ったままビクン、ビクンッと痙攣して呼応する。
 愛しさがあふれるなか、リルは脱力しきってオーランドの胸にもたれかかった。
「続きはベッドで……たくさん、しよ?」
 穏やかな声音で告げられた。
 愛するひとの褪せない情欲にうんざりすることはない。
 リルもまた、彼と同じ気持ちだった。


 よく晴れたある朝。
 リルとオーランドは白馬――オーガスタスに乗って森を駆けていた。
 頬を撫でる風は早朝独特のつめたさがあって、しかし心地がよい。背に感じる体温のおかげかもしれない。
「よーし、いい子だ。僕の分身」
 リルが振り返る。嬉々として馬を走らせているオーランドを見上げてみる。
 彼と出会ったときからの仲である白馬は、リルがオーランドを捜しに出かけたあの日、あのあと。どこにも行かずに屋敷で待っていてくれた。
 オーガスタスと名付けたとリルが言うと、オーランドは苦笑したのちに、白馬を分身だと称していっそうかわいがった。
 いまは日々の街への往診に大いに役立ってくれている。
 リルはマレット商会へ卸す薬の量を減らした。屋敷で作る薬の大部分は、オーランドとともに直接、街のひとへ売っている。
「――ねえ、私たちが街でどういうふうに呼ばれているか知ってる?」
 コンプレックスはおそらくふたりとも、いまだにぬぐえない。けれど、外見だけではなく本質を見てくれる心優しいひとたちにあふれている。彼と街のなかをめぐるようになって、そう気づかされた。
 白馬に乗った医者と魔女。
 それが、ふたりの通り名。
 リルは「ふふっ」と声を出して笑った。頬に当たる風が爽快で、つい笑い出したくなってしまった。
「なかなか、悪くないわ――」


 往診を終えて森の家へ帰る途中のことだった。
 休憩をしようと彼が言うものだから、馬を走らせるのに疲れたのだろうと思って素直に従ったのだが――。
「……オーランド! もう日が暮れちゃうわ……。んっ、ん!」
 この森に何十年かは自生しているであろう木の幹に手をつき、リルはぐるりとうしろを振り返ってオーランドをとがめた。
「だって……森のなかですると、よけいに気持ちがいいんだもん」
「んぁっ! ぁ、うう」
 淡いピンク色のドレスは夕陽に染まり、乱れた色濃いドレスは淫猥さを際立たせる。
「だ、だめ、もう……。んくっ、あぁ……っ!」
 オーランドの白衣が風と律動で揺れる。ひらかれたドレスから顔を出しているリルの豊満な乳房をうしろから揉みしだきながらオーランドは言う。
「だれも僕らを見ていないよ。だから安心して、リル。あなたの淫らな姿を見知っているのは、僕だけだ――」
「――っ、ひぁぁっ!!」
 ぐんっ、と強く最奥を穿たれ、悲鳴じみた嬌声を上げる。もっとも深いところを突いた肉棒は入り口のところまで引き戻り、ふたたび、それまで以上の圧力で突き込んでくる。
 大胆な動きで隘路を往復されている。そうして草むらに散り落ちた蜜は、夕陽に照らされてきらきらとなまめかしく輝いていた。


FIN.

お読みいただきありがとうございました!
熊野まゆ

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