伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 《 終 章 07

 彼はエリスの下半身でもたついていた衣服をすべて拭い去った。生まれたままの姿になったエリスに素早く視線を走らせたあとでジェラルドは彼女の脚を押し広げ、その中央に顔を寄せた。

「すっかりふくらんで赤くなっているな」
「は、んっ……!」

 割れ目の奥に潜んでいた秘玉が熱い吐息になぶられてよけいに充血する。甘やかすつもりなら早くその肉粒に触れてくれればよいものを、ジェラルドはしげしげと観察するばかりで手も舌も出してはくれない。

「せん、せ……」

 か細い声でエリスがねだると、ジェラルドは唇に弧を描いてようやく舌をのぞかせた。しかし花芽には触れず、その両側の溝を舌でたどるだけだ。

「ん……んっ、ぅ」

 エリスは腰を揺らす。その動きが「早く核心に触れて」と代弁している。ジェラルドは眉根を寄せて秘芯を舌で舐め上げた。

「んぁっ……!」

 ひとたび触れられればそこからは怒涛の責めが待っていた。花芽は舌でこれでもかとなぶられ、蜜口は指で浅いところをくすぐられる。体は何の隔ても遠慮もなく彼からの刺激を快感と捉え、その悦楽はあっという間にふくれ上がって爆ぜた。

「は、ぁ――っ」

 瞬く間に達したエリスにジェラルドが視線を投げた。後ろへ撫で付けられていた前髪のひとすじが乱れて額にかかっている。そのさまはひどく妖艶だった。そんな顔でこちらを見上げるのはやめて欲しい。

(恥ずかしいから、隠し持っていたいのに)

 秘めた隘路で燃え盛る情欲と言う名の炎に薪をくべないで。蜜は隠れるどころかとどまるところを知らず際限なくあふれ、彼の口をさらに汚す。

「どんどんあふれてくる。きみの蜜は……甘い。錯覚だとわかっているが、甘くて美味い」

 ジェラルドはいつになく余裕のない表情をしていた。暑いのか、むしり取る勢いで自身のドレスシャツと、それからトラウザーズや下履きも脱ぎ捨てる。
 怒張は高々と天を向いていた。

「俺の名を呼べ。名を呼んで、コレが欲しいと乞うんだ」

 ――ああ、いつもの命令口調だ。これを聞いて安堵している自分は彼が以前言っていたとおりマゾヒズムの気があるのかもしれない。

(私を甘やかすとか言っていたけど)

 こういうふうに命令されるほうがしっくりくるなどとは絶対に言いたくないが、ジェラルドは酔いが覚めてきたのか結局は彼もふだんどおりになってしまっている。やはり、性根はそう容易く直せるものではない、お互いに。

「ふ、ぁ……っ」

 硬直が蜜口のまわりを滑走していく。早く中へ入りたいと訴えかけてくる。エリスもまたそれを迎えたくてたまらなかった。

「ジェラルド……さま」

 いきなり呼び捨てにしては怒られるかもしれないと思って敬称を付け足したのだが、彼はかえって不満そうだった。
 エリスは視線を不自然にさまよわせる。

「……ナカに……くだ、さ……い」

 彼が望む言葉を紡ぎ終わると、ジェラルドはエリスが予想していた嘲笑とは正反対の爽やかな笑みを見せて腰を突き動かした。衝動的とも思える性急な動きだった。

「あ、ぁあっ!」

 純粋に、愛ゆえに求められているのがわかってしまった。先ほどの笑顔は反則だ。なぜあんなにも無邪気に笑うのだ。胸の高鳴りが一向にやまない。血圧も高い。このまま不整脈を起こしてしまったらどうしようかとも思ったが――

「あぁ……狭くて、気持ちがいい。ずっとこうしてつながっていたい。きみがどこかへ行ってしまわないように、つなぎとめておきたい……ッ」

 情欲と独占欲を色濃くむき出しにしていま体をつなげているのはまぎれもなく医者なのだから、安心していい。愛しいからこそ安心してすべてを委ね、同時に彼を咥え込むことができる。たとえそれが、果てしなく肉欲が旺盛なお医者さまだとしても。


FIN.

お読みいただきありがとうございました!

熊野まゆ

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