先生の淫らな指先 《 05

「あぁっ、ん、せんせ……っ、ふ、あぅ……!」

 先生が、先生でなくなる。
 日々の授業で顔を合わせることも、放課後の指導室でこうして秘め事をすることもなくなる。

 綾音は初めて、自分たちのあいまいな関係がいやになった。
 彼に抱かれているだけで幸せだった。しかし遅かれ早かれ、綾音が卒業すれば終わってしまう関係だ。

 落胆する綾音に雪谷が救いの手――あるいは、くもの糸を垂らす。

「なあ、おまえ……就職希望だろ? じゃあ、俺と一緒に来いよ」

 願ってもない話に綾音はふたつ返事だ。

「いき、ます……んっ、く……! っぅ、あ」
「ふうん、恥ずかしげもなく宣言するんだな。もう我慢できないのか?」
「ちがっ、そういう意味じゃ、な……っぁ、ンンッ!」

 セーラー服のすそから入り込んできた手に乳首をつままれ体を引き寄せられ、さらに強くナカを突きまわされた。
 絶頂するのは時間の問題だ。

「あっ、アァッ……ん、むっ!?」

 突然、口もとを手のひらで覆われ、喘ぎ声がくぐもる。

「声、でかすぎ」
「んんっ、ふぅっ――……!」

 びくっ、びくんと下半身が大きく波を打つ。
 彼も達したようで、体内におさまっているそれがびくびくと収縮しているのを身をもって感じた。

 じゅぷっ、という水音とともに陰茎を引き抜かれる。
 力の抜けた綾音の体をうしろから抱きしめ、雪谷はふたたび椅子に腰をおろした。

「……ところでおまえ、俺のなにが好きなんだ?」

 髪を撫でる彼の手が気持ちよい。綾音はろくに考えもせず、頭のなかに浮かんだことをそのまま答える。

「え、と……顔」
「単純だな」
「え、えっと、それから……。えっちな、ところ」
「それは、男ならみんなそうだ」

 綾音は顔を上げて雪谷を振り返った。彼女の髪の毛を撫でる雪谷の手が止まる。

「おまえは俺を『好き』だと勘違いしてるんじゃないか?」
「ちっ、違います! 先生の切れ長の目とか、低い声とか……指先も、髪の毛の一本だって……ぜんぶ、好き。愛しくて、たまらない」
「ふうん……?」

 信じていない、と顔に書いてある。雪谷は綾音の「好き」を信用していない。

「先生、は……? 私のこと……」
「さあ、どうだろうな……。これからのおまえしだいってところかな」

 頬を覆う手は熱い。
 節くれだった男性的な手のひらが、綾音の頬をゆっくりと撫でおろし、あごをすくう。

「だから、俺の目の届くところにいろよ。これからも」

 返事はできなかった。
 唇を、塞がれてしまったから。


FIN.

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