今宵、お兄ちゃんに夜這いします。 《 05

智香は喘ぎながら考える。友哉のことは初めから意識していた。なにせひとめぼれだ。
だが顔だけではない。もしそれだけなら、寝込みを襲おうとまでは考えなかったと思う。けっきょくは反対に襲われているような顛末だが、そこはいったん置いておく。

(お兄ちゃんの、優しいところが好き)

智香の仕事の愚痴を、嫌がらずに聞いてくれる。厳しいことを言いながらも、励ましてくれる。
酒を飲み交わしながら彼と過ごす時間が智香はとても好きだった。

「んぅっ! う、あ、あんっ!!」

きっとほかにも、友哉を好きな要素はたくさんある。けれど、いまはそれ以上なにも考えられない。
硬くしこったふくらみのいただきを、ぴちゃぴちゃと音を立てながら吸い上げられている。
智香は首を縦に振りながら彼に告げる。

「す、き……。あ、ん……っ、好きなの、ぜんぶ……。お兄ちゃんのこと……!」

安っぽい言葉でしか気持ちを伝えられないのがもどかしい。
しかしそれが真実ですべてだ。友哉のことが好きでたまらない。
義理とはいえ兄なのだから、とあきらめようとしたこともあった。ほかのひとを好きになろうと努力したのだが、そうやってひとを好きになるのは根本的に間違っていると、すぐに気がついた。

「智香……」

つやっぽい声で名前を呼ばれ、それだけで胸がいっぱいになる。中央に集まっている、乳房の濡れそぼった先端を親指と人差し指できゅうっとひねられ、快感に身をよじらせているあいだに唇を塞がれた。なにもかもが荒々しい。求められていると思ってもいいのだろうか。

「ん、ぅ……っ、ふ、ぅ」

友哉は智香に口付けながら彼女の下半身に指を這わせていった。下肢の割れ目はもともと透けているが、蜜口からあふれたもののせいでよけいに透明になっている。

「んんっ……!」

ショーツの腰ひもを両方ともほどかれた。秘めた裂け目をたどる指は性急だ。
友哉の指は膣口の蜜をすくいとり、ぷっくりとふくれ上がった小さな豆粒をまさぐる。

「んふっ、ぅ……っ!」

舌を絡め取られるのと同時にそれをされて、智香は初めてのことに困惑して身悶えしながら喘いだ。
彼の舌が、指がこのうえなく気持ちがよい。
蜜奥がいっそうみだらに疼き、淫液をあふれさせる。どんどん濡れてくる。

「あっ、あぁ……お兄ちゃん、気持ちいいよぉ……っ。はっ、ぅぅ」

唇が離れたのでそう言った。友哉はにいっとほほえむばかりでなにも言わない。身体を下方へすべらせていく。

「っ!? お兄ちゃん、なにするの」

両脚を大きく抱え上げられている。その中央には兄の顔。
腰ひもを解かれてしまったショーツはソファのうえにポツンと置いてけぼりだ。

透けたキャミソール生地から顔を出す乳房と、あらわになった陰部。もともと恥ずかしい格好だったが、大きく脚を広げているこの体勢と、それから彼の顔が濡れた秘部を見つめているという事実がいっそう智香の羞恥心をあおる。

「智香の蜜の味が知りたくなった。舐めてもいいか? おまえは甘いものに目がないから、蜂蜜みたいに甘かったりしてな」

「そっ、そんなわけ……っあ、アアッ!!」

じゅっ、じゅるるっと大きな水音がした。
花びらのなかに隠れていた真珠を思いきり吸われた。快感が全身を駆け巡り、四肢の先端がじりじりとむずがゆくなって智香はぎゅうっと握りこぶしをつくった。
足先にも力がこもり、指を折り曲げる。

「あ、あふ……っ、や、あぁんっ!!」

愛蜜でぬめった花芽を舌でなぶられている。ざらざらとした感触がとてつもなく気持ちがよくて、甘い声はとどまるところを知らず、さらなる蜜とともにあふれ出す。

(お兄ちゃんが、私の……を、舐めてる)

下半身を見おろす。兄の黒髪はなまめかしさを感じさせる動きで揺れている。
そのままずっと舐め続けられるだけかと思っていたがそうではなく、友哉は智香にさらなる快感をもたらす。

「ひぁぁっ! ……んぁっ、ふ、うっ」

つい先ほどまでは生温かい舌だけが蜜口の浅いところをえぐっていた。しかしいまは、舌よりも硬く、しかも角ばったものが智香の秘めた肉襞を突き進んでいる。
友哉は智香の隘路に指を沈め、無遠慮にまさぐり始めた。

「ん、せまいな……。自分で挿れたこと、ないか?」

ぶんぶんと首を横に振りながら友哉の質問に対して意思表示をする。

「ふうん……。どうだ? 自分のナカに別のモノが入ってる感覚は」

「あ、ぅ……っ、なんか、へん……っ! やっ、ぁぁぁっ!!」

媚壁をこする指の動きが速まった。それほど奥までは指は入っていない。お腹側のある一点を執拗にこすり立てている。

「やっ、やだっ、へん……。それ、だめ……あ、ああぁっ!!」

ぷしゅうっと勢いよくなにかが噴き出してソファを濡らした。

「え、あ……? な、なに……。ご、ごめんなさい」

智香は身体を起こし、がたがたと震えながら口もとに手を当てた。ソファは智香のなかから放出した液体で濡れて染みになっている。

「いいよ……気にするな。それより、覚悟はできてるか?」

「か、覚悟……?」

「おまえ、初めてだろ。……痛むぞ」

友哉はいつの間にかベルトをはずしてスラックスの前を開いていた。トランクスも下にずり下げられ、高々とうえを向く一物が目に入る。

(お兄ちゃんの……すごく、大きい)

男性のそれを目にするのは初めてだから、ほかの誰かと比べているわけではない。指とは比べものにならないほど大きな肉棒を目の当たりにして、それが身の内に入るのだと思うと少なからずおののいた。
友哉は智香の表情を見て彼女の心理を悟ったのか、優しい声音で語りかける。

「といっても、痛いのは初めのほんの少しだけだ。だが、どうする? いやなら……怖いのなら、やめる」

怖い。だがそれ以上に、彼とつながりたい願望のほうがまさる。

「……挿れて、お兄ちゃん。欲しい、の……。お兄ちゃんのすべてが」

すがるような視線を兄に向ける。
友哉はまぶたを細め、あらためて智香の両脚をひらいた。雄々しい切っ先を蜜口にあてがう。

「あ……っ、ぐ」

めりめりと入ってくるそれはとてつもない圧迫感で、反射的に腰が引けてあとずさる。
しかしあとには引けない。友哉は智香の両脚に腕を絡めて固定しているし、なによりも智香自身が彼のものを身の内におさめたいと強く願っている。

「……やっぱり、やめておくか?」

友哉は智香の悲痛な顔を見て気遣わしげに言った。
まだほんの先端しか入っていない。

「っ、やめ、ないで……。へいき、だから……もっと、奥まで」

身体の反応とは逆のことを言いながら兄に乞う。
欲しい、欲しくない。いや、やはりつながりたい。大好きなお兄ちゃんと。

「智香……っ」

ぐっ、といっきに剛直が下肢をつらぬく。
ほとばしる痛みに、智香はいまだかつて出したこともないような声を上げる。


絶叫が響く新月の夜。
兄への夜這いは、成功――したのだと、思う。

FIN.
お読みいただきありがとうございました。

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