森の魔女と囚われ王子 《 第三章 12

「なにもかも、あなたが初めて、よ……」

 彼につられてしまったのか、頬に熱がこもる。

「……うん」

 うなるように答えて、オーガスタスは身を乗り出した。肉傘が蜜口に押し当てられている。思わず息が止まってしまう。

「大丈夫……。ゆっくり、息をして。ほら、吸って……吐いて」

 すう、はあ、と何度か彼の声に合わせて呼吸した。それだけで不思議と気持ちだけは落ち着いてくる。体は、依然として興奮したままだ。
 大きく息を吸い込んだときだった。

「―――っ!!」

 ぎちぎちっ、とそんな音が聞こえたわけではないが、それに近いものを体感した。小さくせまいそこに入り込んできた肉塊は媚壁をめりめりと押し広げて突き進んでくる。

「っ、く……ッ!」

 ある一点を通過されると、内側を切り裂かれているような痛みに見舞われた。ひどく喉が渇き、悲鳴も嬌声も出てこない。いまだかつて経験したことがない、壮絶な痛みだった。
 リルのまなじりに浮かんだ涙をオーガスタスがそっと舐め取る。それから彼はゆっくりと肉棒を進め、根もとまでおさめきると、しばらく微動だにしなかった。
 どく、どくんと痛みによる脈動で全身がたぎっているあいだじゅう、オーガスタスはリルの唇を優しくついばんだ。

「……まだ、痛む?」
「い、いえ……」

 ちくちくとした痛みはまだ残っているが、否定した。

「動かすよ……」

 そうされることでいったいどうなるのか、わからないので返事はしない。
 体のなかに打ち込まれている硬直が静かに動き出す。彼の表情がつやめいたものに変わる。

「ああ……すごくせまい。さすがに鍛えてるだけあるね?」

 そんなところ、鍛えた覚えはない。しかし返す言葉がない。体内でうごめく陰茎が肉襞をこする感覚はもちろん初めてだが、まるで昔から知っていることのように心地よいのだ。痛みにまさる快感に、心も体も酔い始める。

「……っふ、う……」

 隘路を往復する肉竿の動きが速いのかゆるやかなのか、リルは知らなかった。ずっとこのまま、ぬるま湯に浸かっているような快さが続くのだと思っていた。

「そろそろ、思いきり……いいかな」

 低い声音で告げられ、目を丸くする。現状がすべてではなかったことに驚く。

「え……っ?」

 頓狂な声を上げたのと同時に、ぐんっ、と体が大きく揺れた。

「――っ、あぁ、うっ!!」

 ベッドのきしみがいっきにひどくなった。リルの体とともにぎしぎしと大きく揺れて弾む。
 ぐらぐらと揺らぐ視界には、額に汗を光らせる白金髪の王子様。青と金の瞳が交錯して光の軌跡を作っている。いっそう、美しい。

「あぁ、んっ……! くっ、ふぅっ」

 リルの体内をまさぐる楔に遠慮はひとかけらもなかった。彼女のなかで痛みが消え、すべてが快感に支配されているのをオーガスタスは知っている。

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