雨の香り、蜜の気配 《 02

(でもきっと、すぐに彼と同じか……それ以上に熱くなる)

 体の内側、とくに下のほうはすでに熱を帯び始めている。表皮まで火照るのは時間の問題だ。
 蓮沼は雫の黒いショートヘアに頬ずりをして彼女のワイシャツに片手をくぐり込ませた。背中からだ。湿ったブラジャーのホックをプチンと静かに外す。

「っん……。裕貴、さん……?」

 濡れそぼって重くなっているワイシャツは脱がせてくれればよいものを、彼はそうする気がないようだ。前ボタンを二、三外しただけの状態でシャツごとふくらみを揉みしだき始めてしまった。
 ホックを弾かれたことでゆるんだブラジャーは揉みくちゃにされ、乳房を覆いきれなくなる。

「ぁ、っう……!」

 ブラジャーの合間から顔を出した薄桃色のつぼみを、蓮沼はシャツ生地ごしに指で丹念に押さえつけた。ムクムクと勃ち上がったそこを、咎めるようにぎゅっ、ぎゅうっと押し込めている。

「はぁっ、あ……ッ」

 雫は脱衣所の壁に両手をついた。手のひらはすでに乾いているから、壁を濡らすことはない。
 身をよじり、振り返って彼を見やる。するとすぐに唇が重なった。

「んくっ、ぅ」

 5つ年上の上司である蓮沼とは付き合ってもうすぐ1年になる。黒い髪の毛はいつも短く切りそろえられ、几帳面かつ真面目そうな見た目とは裏腹に彼は「こういう」とき非常に情熱的だ。否定的な意味で言っているわけではない。むしろ――。

「ふぅっ、んっ……!」

 巧みな舌にはいつまで経っても翻弄されてしまう。口腔を這いまわる舌はねっとりと熱く、それで上顎をくすぐられると本当にたまらない。体の疼きが度を増して、ぐずぐずと焦れてくる。

「ンンッ、ふ……」

 蓮沼の指がせわしなく動いて乳頭を刺激する。じかに触れてほしくてたまらない。雫は深い口付けと指戯にもだえてもじもじと太ももの内側を擦り合わせた。

「んくっ」

 唇が遠のく。ジジジ、というのはスカートのファスナーがおりる音。ゆるんだものの、スカートは簡単には落ちない。太ももに張り付いたグレーのスカートを、蓮沼は両手でズルズルと膝の下あたりまでずらした。それから雫の股間に背後から膝を割り入れ、グリグリと押す。

「……んぁっ! あっ、ぅ……!」

 ショーツごしに割れ目を膝でえぐられている。そこが濡れているのは雨のせいなのか、あるいは内側からの分泌物によるものなのかわからない。
 彼の両手がふたたび乳首をさいなみ始める。下半身への刺激とあいまって、快感は高まるばかりだ。喘ぎ声が止まらなくなる。

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