クールでウブな上司の襲い方 《 第三章 14

 ポタリ、と髪先から雫が落ちて湯面に波紋する。
 立ち込める湯気と、それから背に感じる体温がとても心地よい。

「――節子さんが言っていたな。早くひ孫の顔が見たいと」

 お腹のあたりに巻きついていたたくましい腕がへそを通って上へのぼりつめ、そうかと思うとまた下降した。お腹を上下に撫でられている。

「俺も――きみとの子どもが欲しい」

 優樹菜はぴくっと肩を震わせて顔だけをうしろに向ける。
 予想どおりというか、慎太郎の頬は赤く染まっていた。湯船に浸かってまだ間もないから、湯あたりしているわけではないと思う。

「自分で言って照れるの反則です! かわいいんだから、もう……っ」

 こちらまでつられて頬が火照ってしまう。のぼせてしまいそうだ。いや、気持ちとしてはすでにそうかもしれない。

「……それで、きみはどうなんだ」
「なにがですか?」
「……子ども。俺との」

 そう言って頬ずりをされれば、体も心もあらゆるところがきゅうっと切なくなる。

「……っ! ほ、しい……です。いま、すごくほしくなりました」

 想いが通じ合ってまだまだ日が浅いというのに、こんな気持ちになるのが不思議だった。突発的に燃え上がっているのかもしれないけれど、それでもきっと後悔はしない。
 慎太郎が声もなく「ふっ」と笑う。

「――俺はひとつのことに固執するタイプだ。……わかるだろう?」

 湯のなかでお腹を撫でていた彼の両手がゆるゆると動いて上へのぼってくる。

「きっとこれからも、四六時中きみに夢中になる。覚悟しておいてくれ」
「んっ、ぁ……」

 振り返って慎太郎の顔を確かめる余裕が優樹菜にはなかった。ふくらみの先端をふたつともつままれ揺り動かされている。
 ぱちゃっ、ぱちゃっと湯が弾ける。乳首はちょうど湯面ぎりぎりのところにあった。彼の指は温かく、触れられているだけでも気持ちがよいのだが、薄桃色をすりつぶすようにしてこすり合わされているので、身もだえせずにはいられない。

「あぁっ、ぅ……っ。慎太郎、さん……」
「……ん? もっと強く、か?」

 からかうような調子で返され、素直にうなずいてよいものかとしばしためらわれる。うなずいたが最後、めちゃくちゃにされてしまいそうだ。

「え……っと……。ほどほど、に……」
「……それは、難しい注文だな」
「ひぁっ!?」

 乳房を下から持ち上げるようにわしづかみにされた。湯が大きな波を作り、湯船のなかがゆらゆらと揺れる。

「もだえるきみはすごくかわいくて魅惑的だから、手加減なんてできない」

 優樹菜の茶色く長い髪の毛はざっくりと結い上げられていた。むき出しの首すじにちゅうっ、と吸い付かれ、それと同時に乳首をぎゅうっと指のあいだに挟まれた。

「はぅっ、う……!」

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