クールでウブな上司の襲い方 《 番外編(2) 02

「慎太郎さん、待って……! もうちょっとこの水着を着ていたいんですってば。それに、こんなところでなんて」

 彼の手を逃れるようにしてヨロヨロとあとずさる。

「だったら着たままでいい。それに、ここに人目はない。俺以外は」

 トンッと背に当たったのは切り立った硬い岩壁だ。

「し、慎太郎さん……」

 彼の恍惚とした――欲情しきった顔にはグッときてしまう。見ているだけでその気にさせられてしまうので世話がない。かといって、やはりこんなところでそういうことをするのはどうかと思う。

「じゃあ、コテージに戻ってから――……」

 視線をさまよわせながらおずおずと見上げると、クイッとあごをすくわれ唇を塞がれた。それが彼の答えだ。優樹菜はなにも言えなくなる。

「んむっ、ん」

 両肩をつかむ彼の素手はゴツゴツとしていて雄々しい。素肌をつかまれているので、よけいにそう感じた。
 口付けはいきなり情熱的だった。すぐに翻弄される。口腔に入り込んできた舌は灼熱で、いつにも増して存在感がある。
 ふたりがいるのは岩陰だが、全身が太陽から隠れているわけではない。雲間から顔を出した太陽が足もとを照りつける。足先が熱いのは陽光のせいか、それとも口のなかを我が物顔で這いまわる獰猛な舌のせいなのかわからない。

「ふっ、ぅう……!」

 ふくらみの頂点を水着ごしに指で執拗に擦り立てられている。そんなふうにされると、水着で覆われているとはいえ薄桃色のつぼみはすぐに硬さを増して尖りきってしまい、じかに触れて欲しくてたまらなくなった。
 息遣いも荒くなる。ふたりともだ。口いっぱいに彼の舌を感じながら鼻で荒く息をする。唇の上が、なんとなく熱い。

「ふっ、ぅ……ん、ンッ」

 めまぐるしく口のなかを這いまわる慎太郎の舌に応えて自身のそれを動かす。絡め合わせることに夢中になっているあいだに秘所をあらわにされてしまう。いつものことだ。
 優樹菜の乳房を覆う水着の端に指を引っ掛け、慎太郎は海色の生地を横へずらした。

「んっ」

 優樹菜のまぶたがピクンッと揺れる。ディープキスのせいで体が火照り、胸もとは蒸れていたので、水着をずらして乳房を露呈させられるとやけに開放的で心地がよかった。

(やだ、これじゃあ露出狂みたい)

 胸をさらして喜んでいるだなんてと罪悪感を覚えつつ、だからといってそこをふたたび覆い隠すことはしなかった。すでに慎太郎の両手が乳房をじかに揉みまわしているので、隠せない。いや、彼の大きな手のひらにある意味で隠れてはいる。

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