御曹司さまの独占愛 《 06

(ああ、私……どうしちゃったんだろう!)

 先ほどから初めての感覚に見舞われてばかりだ。わけがわからなくなってくる。
 動悸がひどい。息遣いも荒い。このまま意識を失ってしまったらどうしよう。

「……嫌では、ない?」

 このタイミングでふたたびそれを訊かれるなんて――。
 和臣の唾液で湿ったそこに吐息が吹きかかり、瞬時にぞわりと鳥肌が立つ。
 若菜は両手で自身の顔を覆い隠した。そうすることで、その質問には答えられないのだと暗に示す。
 和臣はわずかに眉間にシワを寄せて、大きく口を開いた。自分の乳頭が彼の口腔に吸い込まれていくのを指と指のあいだから垣間見る。

「――っ!」

 ふくらみの先端をじゅうっと水音が立つほどに吸い上げられる。さまざまな感情ごとそうして彼に吸い取られているような気がしてくる。
 若菜が小さく首を横に振る。しかし和臣はそのことに気がつかない。

(和臣さまはご主人さまなのに)

 いままでそれを忘れたことはなかった。主人に仕える従順な自分を誇りにすら思っていた。
 ――それなのに。

「ぁ、あっ……は、ぅっ!」

 胸の先を執拗に貪る彼を主人だとは思えない。そして、そうされることでもだえている自分自身もまたそうだ。私たちはいま健全な主従関係ではない。

(どうして……どうして?)

 こんなふうに変わりたくなんてなかった。彼はずっと憧れのままでよかった。和臣は清廉潔白で堅実な人だ。

(そう……そんな和臣さまに、憧れていた。それはきっと……)

 心の奥――自分でも気がつかないくらい隠されたところで和臣のことを慕っていたのだと思う。そうでなければいま、不快感でいっぱいになっているはずだ。

「ふっ……!」

 いっそうひどい水音を響かせて彼の唇が遠のく。口もとの唾液を手の甲でぬぐいながら和臣は言う。

「僕はずっと変えたかった。きみとの関係を」

 障子ごしに射す月明りに照らされた彼はやけに儚げに見えた。

「だから、今日――きみが18歳になる今日を、きっかけにしたかった」

 和臣はゆっくりと若菜の着物の裾をかき分ける。

「あ……っ」

 下着が脚から抜ける。慌てて手を伸ばしたものの、ショーツは手の届かないところに放られてしまった。

「僕は後悔していない、なにひとつ」

 両膝をつかまれ、左右に割られる。着物の裾がするりと落ちて、脚の付け根が無防備になった。

「……若菜。僕に触れられたくないのなら逃げるんだ。いますぐに」

 若菜は短く息を吸ってそのまま固まった。

(逃げる――って、どうやって……)

 両脚は彼の手で押さえられている。和臣の手にさほど力は入っていないから、振り払って逃げ出すことはできるかもしれないが――。

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