淫らに躍る筆先 《 17

「責めてるわけじゃないよ」

 龍生は和葉の気持ちの変化に機敏だ。和葉としては、どうして考えていることがわかるのだろうといつも疑問に思う。

(でも、それなら……私がじれったく感じてるのもわかってるはずなのに)

 じかにそこに触れて欲しいのだと、彼はじゅうぶんわかっているはずだ。優しそうに見えて、龍生は意外と意地悪なのだと和葉は最近になって知った。

「……龍生さん」

 相手の名前を呼ぶことは彼の意思表示だ。だったらこっちだって、という思いで和葉は龍生を見つめる。龍生はほほえんだまま小さくため息をつき、膝を折った。無機質なタイルの上に両膝をつき、和葉のショーツの端に手をかける。
 ストッキングと一緒につま先へ向かってするすると脚を滑り落ちていく、濡れそぼった自分自身の下着を和葉は声もなく見送る。
 下着も、ストッキングも、靴すらもすべて脱がされて、残ったのは紺色のスカートだけだ。

「全部脱いでしまったら恥ずかしいだろうから、スカートは残しておくね」

 ――嘘。
 心にもないことを言わないで欲しい。彼の本当に意図はべつにあるのだと、さすがにわかる。

「……いじわる」

 和葉がぽつりと言うと、龍生は意味ありげに笑みを深くした。ほほえんだまま、和葉の胸と胸のあいだを指でたどる。筆でなぞられたときとはまた違った快感がほとばしり、これはこれでやはり気持ちがよい。
 大きく息を吸い込み、短く吐き出す。彼の指先のじれったさをやり過ごすにはこうするのがいい。

「筆できみに触れてるとき……本当はじれったかったんだ」

 彼の顔がしだいに真剣味を帯びてくる。

「じかに触れたくてたまらなかった。きみの肌がなめらかなのを、俺はもう知ってるから」
「……っ!」

 龍生の両手が急に乳房をつかんできた。やけに性急だった。

「あっ……ぁ、んぁっ……!」

 感触を堪能するように激しく揉みまわされ、同時にふくらみの頂点も指のあいだでくにくにと刺激されて喘ぎ声が止まらなくなる。
 乳頭を指でなぶって欲しい、と思ったそのとき、龍生の無骨な指先が尖りを押しつぶした。

「ひぁっ! あぁ……んっ、そこ……あ、ぁぅっ」

 彼も焦れていたというのは本当のようだ。いきなり激しい指遣いで乳首をめちゃくちゃになぶられる。
 和葉は喘ぎながら必死に脚を閉じた。そうしていなければスカートや椅子が淫らな蜜で汚れてしまう。そのことに龍生が気が付かないはずもなく、彼は和葉の胸をつかんだまま上体を低くした。

「ぁっ……や、だめ……!」
「……なにが?」

 俺はまだなにもしていないよ、と付け加えて龍生は肘を無理やり和葉の脚のあいだに割り入らせる。

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