俺さま幼なじみとの溺愛同居 《 06

 パタン、と玄関の鉄扉が閉まる。

(うぅぅ~っ、何であんなにカッコイイの!)

 未来は両頬を押さえて足をじたばたと動かした。
 これがスーツ萌えというやつだろうか。ストライプのジャケットにダークグレーのネクタイを締めた弘幸はふだんの三割増でかっこよく見えた。彼は見た目だけは本当にいい。
 しばし惚けていた未来だが、頬に添えていた手を肌から離してパン、パンッと自分自身に気合いを入れてから朝食の後片付けをした。


 食事の後片付けを終えた未来は掃除、洗濯と順調にこなし、休憩がてらソファに座ってココアを飲んでいた。

(入社式まで暇だなぁ……)

 まだお昼の12時すらまわっていない。

(ちょっと早いけど、お昼ごはんを作ろう)

 ココアを飲み干した未来はサッと立ち上がり、エプロンをつけて台所に立つ。献立はサンドイッチだ。多めに作っておいて、おやつにしよう。
 鼻歌まじりに気分よくパンにバターを塗り込めているときだった。
 ガチャッ、というのが何の音なのか、未来はまだ聞き慣れていない。

「――!?」

 突如、響いた物音に未来は縮み上がる。

(そういえば私……戸締まりしたっけ!?)

 弘幸にあれほど注意されたのに、玄関の鍵を締め忘れたような気がする。

(だれ、か……入ってきた!?)

 リビングのガラス扉の向こうに人影が映った。弘幸はこの時間、まだ会社のはずだ。

(ど、どっ、どろぼう!!?)

 未来は手近にあった包丁を構えた。物騒なものを持っていれば泥棒は逃げ帰るかもしれない。

(ううん、逆に挑発することになったりして……。っていうか、どろぼうも刃物を持ってるかも!)

 そう思い至ると、足がすくんで一切動けなくなった。摺りガラスの扉が開くのを、ただ見ているしかない。

「……玄関の鍵、掛かってなかったぞ」

 現れたのは仏頂面の弘幸だった。ジャケットを肘に掛けて、不機嫌そうに歩み寄ってくる。

「あ、え……? ヒロくん、会社は?」
「いま昼休みだ。ここから会社まで徒歩三分だからな。それより、玄関の鍵だ。気をつけろって言っただろ」
「はい……。ごめんなさい」

 未来は下を向いて、サンドイッチ作りを再開してから控えめに尋ねる。

「それで、どうしたの? 忘れもの?」
「ん、まあ……そんなとこ」

 ジャケットをダイニングの椅子の背に掛け、弘幸はキッチンカウンターに並べられたサンドイッチを眺める。

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