パタン、と玄関の鉄扉が閉まる。
(うぅぅ~っ、何であんなにカッコイイの!)
未来は両頬を押さえて足をじたばたと動かした。
これがスーツ萌えというやつだろうか。ストライプのジャケットにダークグレーのネクタイを締めた弘幸はふだんの三割増でかっこよく見えた。彼は見た目だけは本当にいい。
しばし惚けていた未来だが、頬に添えていた手を肌から離してパン、パンッと自分自身に気合いを入れてから朝食の後片付けをした。
食事の後片付けを終えた未来は掃除、洗濯と順調にこなし、休憩がてらソファに座ってココアを飲んでいた。
(入社式まで暇だなぁ……)
まだお昼の12時すらまわっていない。
(ちょっと早いけど、お昼ごはんを作ろう)
ココアを飲み干した未来はサッと立ち上がり、エプロンをつけて台所に立つ。献立はサンドイッチだ。多めに作っておいて、おやつにしよう。
鼻歌まじりに気分よくパンにバターを塗り込めているときだった。
ガチャッ、というのが何の音なのか、未来はまだ聞き慣れていない。
「――!?」
突如、響いた物音に未来は縮み上がる。
(そういえば私……戸締まりしたっけ!?)
弘幸にあれほど注意されたのに、玄関の鍵を締め忘れたような気がする。
(だれ、か……入ってきた!?)
リビングのガラス扉の向こうに人影が映った。弘幸はこの時間、まだ会社のはずだ。
(ど、どっ、どろぼう!!?)
未来は手近にあった包丁を構えた。物騒なものを持っていれば泥棒は逃げ帰るかもしれない。
(ううん、逆に挑発することになったりして……。っていうか、どろぼうも刃物を持ってるかも!)
そう思い至ると、足がすくんで一切動けなくなった。摺りガラスの扉が開くのを、ただ見ているしかない。
「……玄関の鍵、掛かってなかったぞ」
現れたのは仏頂面の弘幸だった。ジャケットを肘に掛けて、不機嫌そうに歩み寄ってくる。
「あ、え……? ヒロくん、会社は?」
「いま昼休みだ。ここから会社まで徒歩三分だからな。それより、玄関の鍵だ。気をつけろって言っただろ」
「はい……。ごめんなさい」
未来は下を向いて、サンドイッチ作りを再開してから控えめに尋ねる。
「それで、どうしたの? 忘れもの?」
「ん、まあ……そんなとこ」
ジャケットをダイニングの椅子の背に掛け、弘幸はキッチンカウンターに並べられたサンドイッチを眺める。
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(うぅぅ~っ、何であんなにカッコイイの!)
未来は両頬を押さえて足をじたばたと動かした。
これがスーツ萌えというやつだろうか。ストライプのジャケットにダークグレーのネクタイを締めた弘幸はふだんの三割増でかっこよく見えた。彼は見た目だけは本当にいい。
しばし惚けていた未来だが、頬に添えていた手を肌から離してパン、パンッと自分自身に気合いを入れてから朝食の後片付けをした。
食事の後片付けを終えた未来は掃除、洗濯と順調にこなし、休憩がてらソファに座ってココアを飲んでいた。
(入社式まで暇だなぁ……)
まだお昼の12時すらまわっていない。
(ちょっと早いけど、お昼ごはんを作ろう)
ココアを飲み干した未来はサッと立ち上がり、エプロンをつけて台所に立つ。献立はサンドイッチだ。多めに作っておいて、おやつにしよう。
鼻歌まじりに気分よくパンにバターを塗り込めているときだった。
ガチャッ、というのが何の音なのか、未来はまだ聞き慣れていない。
「――!?」
突如、響いた物音に未来は縮み上がる。
(そういえば私……戸締まりしたっけ!?)
弘幸にあれほど注意されたのに、玄関の鍵を締め忘れたような気がする。
(だれ、か……入ってきた!?)
リビングのガラス扉の向こうに人影が映った。弘幸はこの時間、まだ会社のはずだ。
(ど、どっ、どろぼう!!?)
未来は手近にあった包丁を構えた。物騒なものを持っていれば泥棒は逃げ帰るかもしれない。
(ううん、逆に挑発することになったりして……。っていうか、どろぼうも刃物を持ってるかも!)
そう思い至ると、足がすくんで一切動けなくなった。摺りガラスの扉が開くのを、ただ見ているしかない。
「……玄関の鍵、掛かってなかったぞ」
現れたのは仏頂面の弘幸だった。ジャケットを肘に掛けて、不機嫌そうに歩み寄ってくる。
「あ、え……? ヒロくん、会社は?」
「いま昼休みだ。ここから会社まで徒歩三分だからな。それより、玄関の鍵だ。気をつけろって言っただろ」
「はい……。ごめんなさい」
未来は下を向いて、サンドイッチ作りを再開してから控えめに尋ねる。
「それで、どうしたの? 忘れもの?」
「ん、まあ……そんなとこ」
ジャケットをダイニングの椅子の背に掛け、弘幸はキッチンカウンターに並べられたサンドイッチを眺める。