俺さま幼なじみとの溺愛同居 《 07

「お、うまそうなのあるじゃん」
「たくさん作ってるから、よかったら食べていって」
「ああ、そうする」

 未来は大皿に盛り付けていたサンドイッチをダイニングテーブルへと運ぶ。

「飲み物は何にする?」
「んー……コーヒーかな。そんなに時間があるわけじゃないから、インスタントでいい」

 未来は「わかった」と返事をしてインスタントコーヒーを準備する。なにがどこに置いてあるのか、昨日彼から説明を受けたのでわかる。

「おまえも食べたら?」
「うん」

 小皿とコーヒーをトレイに載せてダイニングテーブルに置く。そのあと自分のぶんのコーヒーも淹れた。砂糖とミルクがたっぷり入っている。
 ダイニングテーブルで向かい合ったふたりは同時に「いただきます」と挨拶をして食べ始めた。

「おまえ、こういうのも上手なんだな」
「あ、ありがとう」

 彼にはあまり褒められることがないので照れてしまう。未来は手に持っているサンドイッチに視線を据えて黙々と食べ進めた。

「あー……いいな、こういうの」
「こういうのって?」

 尋ね返すと、弘幸はぎくりとしたようすで「あ、いや」と口ごもった。

(どうしたんだろ? 何だかようすがへん)

 いつも余裕たっぷりで、あまりうろたえることのない彼だ。いったいなにに焦っているのだろう。

「その……家で、だれかと食べるっていうのが。いいなぁって」
「そうだね――って言っても、私はずっとだれかと一緒にしか食べたことないからわからないけど。一人暮らしってやっぱり寂しいものなの?」
「……そう、だな」

 不意に見つめられ、その視線の意味がわからなくて未来は首を傾げる。

「……ごちそうさま。さてと……俺は会社に戻るけど、今度こそ戸締まりしておけよ。……いや、俺が出て行くときは自分で鍵掛けることにする」
「はは、ごめん……。ええと、行ってらっしゃい」

 今朝と同じように彼を見送る。玄関まで見送りに出たというのに、弘幸は先ほど言っていたとおり外から鍵を締めた。
 未来はパタパタと音を立ててリビングへ戻る。ついさっきまで彼が座っていた椅子をちらりと見たあと、空のコーヒーカップをキッチンへ運んだ。
 残り数個のサンドイッチを仕上げて冷蔵庫の中におさめ、後片付けをする。それからダイニングテーブルの前の椅子に腰を下ろして部屋をぐるりと見まわた。

(あ、ほんと……一人だと、寂しい)

 彼がいないというだけで部屋の中が閑散とする。

(夜……遅いのかな)

 未来は窓の外を見やった。さっきまで太陽がのぞいていたのに、いまは厚い雲に隠れている。
 ――早く、帰ってきて欲しい。

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