スパイラル・ストラップ 《 05

 視界は神澤で埋め尽くされている。なにがどうしてこんなことになっているのだろう。
 「家に連れて帰るよ」と言われたことは何となく覚えている。そのときじつは淡く期待した。彼となにかあるのではないか、と。
 期待はしたが、縛られることを望んでいたわけではない。

(私を縛って、どうするつもりなんだろう……?)

 彼が筋金入りのサディストなのはすでに知っている。だからこそ、空恐ろしくなる。
 記憶にないこととはいえ縛られることに同意してしまった以上、従わないわけにはいかない。
 優香が大人しくなると、神澤は彼女の両手を頭の上でひとまとめにした。平たい布紐を手首に巻きつけて優香の自由を奪う。
 紐を巻きつけ終わると、神澤は嬉しそうに口角上げた。それから、緩慢な手つきで優香の体を覆うバスタオルの端をつまむ。

「あ……で、電気……消してもらえますか」

 自分の体に絶対の自信があるというわけではないから、明るいところでは見られたくない。すると神澤は「ああ」と言っていったんベッドからおりて、シーリングライトのリモコンを手に取った。
 神澤は天井のライトに向けてリモコンのボタンを何回か押した。

「……あ、あのっ?」

 どう考えても、さっきよりも明るくなっている。

「明るさは五段階調整できるんだ。いちばん明るくしておいた」
「え――えぇっ!?」

 彼は聞き間違えたのかと思った。いや、「電気を消して」という言葉をどうやって聞き間違えるのだ。そのほうが難しいに決まっている。
 よけいに明るくなった寝室で、神澤はあらためて優香に馬乗りになる。
 優香の体のバスタオルをつかみなおし、クッと引っ張って彼女の胸をあらわにする。

「ゃっ……!」

 つい両手に力が入るものの、手首は紐でぐるぐる巻きにされているし、ご丁寧にベッドの柵に紐の端をくくりつけてあるので、柵がわずかばかりきしむていどで両手は少しも動かせない。胸もとは隠したくても隠せず、彼が明るい照明の下でまじまじとそこを見るのをどうすることもできないのだ。
 優香の頬が瞬く間に羞恥の色へと様変わりする。

「……恥ずかしい? 全身、真っ赤になった」

 指摘されるとよけいに羞恥心を煽られる。優香は下唇を噛んでうつむく。しかしそうして目に入るのは自分自身のさらけ出された乳房だ。もはや目のやりどころがない。
 もう、目は閉じてしまうほうがまだいいかもしれないと思ったそのとき、神澤が今度は幅の広い布紐を手に持っていることに気がついた。

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