スパイラル・ストラップ 《 06

 ちょうどすっぽりと目もとを覆うことができそうなその布紐の用途は容易に想像がつく。

「ご名答」

 優香がなにも言っていないにもかかわらず神澤はニイッと笑った。どうやら彼には優香の心の声が聞こえるらしい。あるいは顔に書いてある。「その紐で視界まで奪うつもりなのか」と。
 神澤は優香の双眸に平らな布紐をかぶせて目隠しをした。
 目の前が真っ暗になり、ますます不安になる。次になにをされるのか、彼はいまなにを見ているのか。そして、彼がいまどんな顔をしているのかまったくわからない。

「な、なにかしゃべってもらえません?」

 神澤がなにも言わないのもまたいたたまれない。

「なにか――……そうだな。きみの乳首、きれいな色してる」
「そっ、そういうことじゃなくてっ!」

 彼がいまどこを見つめているのかその言葉でわかってしまい、優香は身をくねらせた。

「なに、もじもじしちゃって。かわいいけど」
「……!」

 いったいどういう風のの吹きまわしだろう。神澤にはけなされることは多々あっても、褒められたり増して愛でられたりすることはなかった。いや、申し訳ていどに褒められることはあったような気がするが、これほどストレートな言いまわしではない。

「触ってもいいかな」
「だ、だめです。触らないでください」
「はは、そんなの無理だよ」
「じゃあ聞かないでくださいっ!」

 だってきみがなにかしゃべろって言うから、と反論して神澤は優香の双乳をぐにゃりとわしづかみにする。

「やっ!」

 優香はビクッと肩を震わせた。彼の両手は思いのほか冷たい。
 こんなふうに、だれかに胸を触られるのはいつ振りだろう。ただ揉まれているだけだというのに、脚の付け根がむずがゆくなってくる。そこはまだバスタオルに覆い隠されているのがせめてもの救いだ。多少モジモジしたところで彼には勘付かれないだろうと思った。
 しかし、優香の心理を見透かして意地悪をしているのか、神澤はバスタオルをいっきに剥ぎ取ってしまう。
 いよいよ丸裸になって、優香は言いようのない焦燥感に見舞われる。
 視界は真っ暗、手は動かせない。神澤は次の行動を予告してくれるわけではない。
 そうしているあいだにも胸はぐにゃぐにゃと揉まれ、先端が凝り固まっていく。
 いつそこに触れられるだろうかと身構えるものの、いっこうにそうはならない。

「ん、んぅ……」

 優香の息が自然と荒くなる。いや――乳首に触れられたいなどと、待ち望んでいるわけでは決してないのだ。

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