「あぁっ、んぅ……は、ぁうっ」
彼がなにを想っているのか、自分が彼をどう思っているのかわからぬままつながり合ってしまった。
心の内がわからずとも気持ちがいいもので、そんな自分に嫌悪感を覚えるものの、ズッ、ズッと内壁をえぐるように律動されるとたやすく達してしまいそうになる。
快楽に溺れているのは明らかだった。そう自覚しても、いまさら「やめて」だなんて言えない。これほど喘いでよがっておいて、どの口が言うのだ。
――やめないで、最後までして。
むしろそんな言葉が出てきそうになる。
意地悪な彼のことだ。途中でまたじらされるかもしれないと不安になる。
「……っ、優香」
「――!?」
しかし神澤は少しも律動を緩めない。悦に入ったようすで腰を突き動かす。
初めて名前を呼ばれた優香はその一瞬、息が止まりそうになった。
(もう、どうして――!)
上司と部下という関係はとうに超えているが、名前を呼ばれることでいっそう関係性が変わったような気がする。
「ん、締まった……」
低くかすれたつぶやき声が、優香の内壁をさらに狭める。
将来を誓い合った、心から愛しいひととつながりあっているような錯覚に陥る。
(神澤さんはどういうつもりなの?)
週明けにはまた会社で顔を合わせることになる。彼は部署異動してきたばかりだし、こちらが異動する予定もない。
酒の勢いだけでこうなったのだとしたら、なんて気まずいのだろう。
「ふはっ、ぁ……あんっ!」
最奥を強く穿たれれば、脳内を白いヴェールで覆い隠したように思考が鈍くなる。
――いまだけ、溺れてもいい?
鈍った頭が「いい」とも「だめ」とも言う。
優香の瞳に涙が浮かんでも、だれもそれを目にすることはない。
さえぎられた視界では口づけも突然だ。
「ん、っ――!!」
深いキスですべてがのみ込まれる。
体のなかにあった彼のものがドクン、ドクンと脈を打つのと同時に優香の蜜壷もまた収縮して、ともに果てた。
週はじめはいつも少し憂鬱だけれど、今日はいつにも増してそうだった。
(一夜の過ち――なんて、してる場合じゃないのに)
年初めに神頼みしたことを思い起こす。あれは誓いのようなものだ。今年こそはいい人を見つけて結婚するのだと、神に誓ったのだ。
(神澤さんは……かっこいいし仕事もできるけど……)
お互いに本気ならば、もっと順を追うべきだ。先に体だけつながってしまった時点で手遅れのような気がする。
(体から始まる関係、っていうのもあるかもしれないけど!)
なにぶん、崖っぷちだ。上手くいくかわからない橋を渡るよりも、初めから結婚を前提にしてお付き合いを始める関係のほうがいい。そのほうが幾分か気楽だ。