美樹がすべて言い終わっていないにもかかわらず拓人は「いやだ」と言って彼女の要望を突っぱねた。
「店の制服、似合ってるよ」
唐突にも思える言葉には続きがある。
「だからこそ、この服が乱れてるところもよく見たい」
視線が痛いと感じたのは初めてだった。
間近から、射るように注がれる拓人の視線。顔や胸もとを舐めるように見まわされている。
心臓だけでなく、どうしてか下半身までもがドクドクと強く脈を打ち始めた。そんなところにも脈を打つ器官があったのだろうかと疑問に思う。
コツン、と彼の額がぶつかる。間近に迫った拓人の顔に気を取られているあいだに、ふくらみのいちばん尖ったところに彼の指先が触れていた。
「あっ……!」
ツンッとつつかれたのは、一瞬のこと。
彼の指は乳頭をわずかに弾いただけだというのに、両肩をつかまれて体をガクガクと揺さぶられたときのような衝撃があった。
坂道を全力で登ったあとのように息が切れて、胸が鳴る。
口を開けたり閉じたりしてうろたえる美樹を見て、拓人は口もとの笑みを深めた。
「かわいい」
ぽつりと言って、拓人はふたたび美樹の胸もとへ手を伸ばす。
「あ、あのっ」
反射的にそこを隠そうとしたが、それよりも先に拓人の手が触れた。外側から包み込むようにして乳房を持ち上げられる。
乳頭を指で弾かれるのよりも衝撃は少なかったものの、それでも恥ずかしいのには違いない。
――こんなこと、想像もしなかった。
彼とどうにかなりたい、と少しも思わなかったわけではない。けれど切望していたわけでもない。拓人の温かな手のひらは大きく、ごつごつとしていて、自分とは絶対的に違うものなのだと思い知らされ、少々怖気づいてしまう。
この男性的な両手から繊細で甘いケーキが生み出されているのだと思うと、妙な感じがした。
「……柔らかい。美樹ちゃんの肌」
感じ入ったようすで拓人がつぶやく。やわやわと胸を揉み込まれている。
「ん……ん、ぅ……」
美樹の体は強張っていた。拓人が手を動かすたび、ビクッ、ビクッと小刻みに揺れる。
「怖い? 俺に触られるの」
「う、んん……少し」
「……そうだよね。ごめん」
しかし拓人は美樹を放さない。それどころか、よりいっそう彼の手に力がこもる。
「でも、やめたくない。美樹ちゃんが怖くないように、少しずつにするから……いい?」
美樹はしばしためらったあとで、小さく「はい」と返事をしながらうなずいた。
――彼は私を家に帰そうとしていたのに、「いい」と言って無理に留まったのだ。
それに、彼に触れられるのが嫌なわけではない。
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「店の制服、似合ってるよ」
唐突にも思える言葉には続きがある。
「だからこそ、この服が乱れてるところもよく見たい」
視線が痛いと感じたのは初めてだった。
間近から、射るように注がれる拓人の視線。顔や胸もとを舐めるように見まわされている。
心臓だけでなく、どうしてか下半身までもがドクドクと強く脈を打ち始めた。そんなところにも脈を打つ器官があったのだろうかと疑問に思う。
コツン、と彼の額がぶつかる。間近に迫った拓人の顔に気を取られているあいだに、ふくらみのいちばん尖ったところに彼の指先が触れていた。
「あっ……!」
ツンッとつつかれたのは、一瞬のこと。
彼の指は乳頭をわずかに弾いただけだというのに、両肩をつかまれて体をガクガクと揺さぶられたときのような衝撃があった。
坂道を全力で登ったあとのように息が切れて、胸が鳴る。
口を開けたり閉じたりしてうろたえる美樹を見て、拓人は口もとの笑みを深めた。
「かわいい」
ぽつりと言って、拓人はふたたび美樹の胸もとへ手を伸ばす。
「あ、あのっ」
反射的にそこを隠そうとしたが、それよりも先に拓人の手が触れた。外側から包み込むようにして乳房を持ち上げられる。
乳頭を指で弾かれるのよりも衝撃は少なかったものの、それでも恥ずかしいのには違いない。
――こんなこと、想像もしなかった。
彼とどうにかなりたい、と少しも思わなかったわけではない。けれど切望していたわけでもない。拓人の温かな手のひらは大きく、ごつごつとしていて、自分とは絶対的に違うものなのだと思い知らされ、少々怖気づいてしまう。
この男性的な両手から繊細で甘いケーキが生み出されているのだと思うと、妙な感じがした。
「……柔らかい。美樹ちゃんの肌」
感じ入ったようすで拓人がつぶやく。やわやわと胸を揉み込まれている。
「ん……ん、ぅ……」
美樹の体は強張っていた。拓人が手を動かすたび、ビクッ、ビクッと小刻みに揺れる。
「怖い? 俺に触られるの」
「う、んん……少し」
「……そうだよね。ごめん」
しかし拓人は美樹を放さない。それどころか、よりいっそう彼の手に力がこもる。
「でも、やめたくない。美樹ちゃんが怖くないように、少しずつにするから……いい?」
美樹はしばしためらったあとで、小さく「はい」と返事をしながらうなずいた。
――彼は私を家に帰そうとしていたのに、「いい」と言って無理に留まったのだ。
それに、彼に触れられるのが嫌なわけではない。