甘い香りと蜜の味 《 16

 美樹がすぐに拒んだものだから、拓人は不満そうだった。いつになく子どもっぽく唇が尖っている。

「じゃあ、こっちは……? 触ってもいい?」
「……っ!!」

 紺色のスカートの上から脚の付け根をさすられる。
 先ほどすぐに「だめ」だと言ってしまった手前、拒絶しづらい。

「直接じゃ、なければ……」

 彼の顔を見ながら言うことはできなかった。
 美樹はあらぬほうを向いて瞳を潤ませる。そこに、直接ではないにしろ触れられるのだと思うと、とたんに緊張した。

「んん……、わかった」

 拓人は美樹のスカートに載せていた手をゆっくりと動かして裾をめくる。それから彼はソファを下りてカーペットの上にひざまずいた。

「直接じゃなきゃ、なにしてもいいってことだよね?」
「え――!?」

 見上げてきた彼はどこか挑発的だった。脚を左右に大きく開かされる。

「あ、あのっ、やっぱり……その」

 明るみに出たショーツは少女趣味の野暮ったいものだった。こんなことならもっと大人っぽいものを履いていればよかった、と思ったところでもう遅い。

「いまさら『だめ』はナシだよ?」

 開かされてしまった脚を閉じようとしたが、拓人に両手で押さえつけられているので少しも動かせない。

「……美樹ちゃんが痛がるようなことはしない」

 そう宣言して、拓人は美樹の太ももを付け根に向かってすうっと撫で上げた。

「うぅ……」

 何でもないところを撫で上げられ、くすぐったさとともに官能的ななにかを感じて美樹はうめく。
 大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出す。「深呼吸をして」と言われたわけではないが、そうすることで幾分か落ち着く。
 彼の手は緩慢に動き、ショーツの端に差し掛かる。そのままゆるゆると真ん中のあたりまで這っていった。

「あ、っ――」

 息が止まりそうになる。いや、一瞬、止まってしまった。ショーツ越しに敏感な豆粒を押されたからだ。
 体のなかを駆け巡ったのは、恐怖心とは違うなにか。
 美樹はふたたび深呼吸する。いましがた駆け巡ったものが何なのか、確かめるように。
 拓人はしばらく両手を動かさず、美樹のようすをじいっと観察していた。怖がっているのではないと判断したのか、再度動き出す。

「んっ……ぅ!」

 生地の向こう側で割れ目になっているところを拓人はカリカリと指先でこすり立てた。
 それほど強い力ではない。先ほどほとばしったものが何なのかはっきりした。それは快感にほかならない。気持ちいい。それに尽きる。

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