しかしそうしたあとで、扉は開けっ放しのほうがよかっただろうかと思った。
(まあ、美樹ちゃんは気にしてないようだし……このままでいいか)
一度、閉めたドアをまた開けるのも不自然だろう。拓人はもとの場所に座り、彼女に話しかける。
「ランニングから帰ってきたばかりだよね? ごめんね」
「いえ、平気です」
美樹はシャワーを浴びて間もないらしく?が紅潮していた。髪もところどころ濡れていて、色っぽい。
(これはまた……まずいな)
やはり扉は閉めるべきではなかった。
拓人は後悔しながら彼女から視線を外し、「いただきます」と言いながらテーブルの上に置かれた紅茶に手をつけた。
美樹は拓人の向かいに、テーブルを挟んで座った。カーペットの上に座り込み、こちらのようすをうかがってくる。
(そうか、俺が『話がある』と言ったから)
それで、何事だろうかと考えているのだろう。
「あー……その、単刀直入に訊くけど。最近、俺が作ったケーキを食べてくれないよね。どうして?」
「えっ!?」
どうやら、無自覚だったようだ。拒絶されたり避けられたりしていたわけではないとわかる。
「拓人さんが作ったケーキ、というか……甘いもの全般、控えてます」
「なんで?」
美樹は下唇を噛み、なにやら言いづらそうに視線をさまよわせ始めた。
「ねえ、教えて」
まくし立てると、観念したようにうつむいたあとで、ゆっくりと顔を上げて口を開いた。
「こ、ここのところ太り気味なんですっ……!」
――何だ、そんなことか。
拓人はとたんに笑顔になる。
「もともと細いんだから大丈夫だよ」
「大丈夫じゃ、ないですってば」
美樹はお腹のあたりを押さえて、わなわなと唇を震わせる。
「こんな……とても、拓人さんに見せられないです! だからダイエットしてるんですっ」
そう言い放った美樹の瞳は涙ぐんでいる。
「だって……これから、もっと……ええと……このあいだみたいなことを……するんですよね?」
「――!」
なんて可愛いらしいのだろう。潤んだ瞳で見上げられ、いますぐにでも押し倒して彼女の服を剥ぎ取りたくなったが、グッと我慢する。
「じゃあ、低カロリーで太りにくいものを作る」
――どんな彼女だって好きなのには違いないが、俺のために努力してくれているのだから俺もなにかしたい。
「それ、いいですね!」
ようやく笑顔になった美樹を見て、拓人は心底ホッとした。
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(まあ、美樹ちゃんは気にしてないようだし……このままでいいか)
一度、閉めたドアをまた開けるのも不自然だろう。拓人はもとの場所に座り、彼女に話しかける。
「ランニングから帰ってきたばかりだよね? ごめんね」
「いえ、平気です」
美樹はシャワーを浴びて間もないらしく?が紅潮していた。髪もところどころ濡れていて、色っぽい。
(これはまた……まずいな)
やはり扉は閉めるべきではなかった。
拓人は後悔しながら彼女から視線を外し、「いただきます」と言いながらテーブルの上に置かれた紅茶に手をつけた。
美樹は拓人の向かいに、テーブルを挟んで座った。カーペットの上に座り込み、こちらのようすをうかがってくる。
(そうか、俺が『話がある』と言ったから)
それで、何事だろうかと考えているのだろう。
「あー……その、単刀直入に訊くけど。最近、俺が作ったケーキを食べてくれないよね。どうして?」
「えっ!?」
どうやら、無自覚だったようだ。拒絶されたり避けられたりしていたわけではないとわかる。
「拓人さんが作ったケーキ、というか……甘いもの全般、控えてます」
「なんで?」
美樹は下唇を噛み、なにやら言いづらそうに視線をさまよわせ始めた。
「ねえ、教えて」
まくし立てると、観念したようにうつむいたあとで、ゆっくりと顔を上げて口を開いた。
「こ、ここのところ太り気味なんですっ……!」
――何だ、そんなことか。
拓人はとたんに笑顔になる。
「もともと細いんだから大丈夫だよ」
「大丈夫じゃ、ないですってば」
美樹はお腹のあたりを押さえて、わなわなと唇を震わせる。
「こんな……とても、拓人さんに見せられないです! だからダイエットしてるんですっ」
そう言い放った美樹の瞳は涙ぐんでいる。
「だって……これから、もっと……ええと……このあいだみたいなことを……するんですよね?」
「――!」
なんて可愛いらしいのだろう。潤んだ瞳で見上げられ、いますぐにでも押し倒して彼女の服を剥ぎ取りたくなったが、グッと我慢する。
「じゃあ、低カロリーで太りにくいものを作る」
――どんな彼女だって好きなのには違いないが、俺のために努力してくれているのだから俺もなにかしたい。
「それ、いいですね!」
ようやく笑顔になった美樹を見て、拓人は心底ホッとした。