甘い香りと蜜の味 《 22

 拓人はティーカップの紅茶をすべて飲み干してからあらためて美樹と向かい合う。

「髪の毛、もっとちゃんと拭かないと。ほら、タオル持ってここにおいで」
「はい」

 少しあわてたようすで美樹は立ち上がり、クローゼットから小ぶりのバスタオルを取り出してトコトコとやってきた。

「じゃ、俺の膝の上に」

 そう言って膝の上を叩くと、美樹はタオルを持ったまましばし固まった。

「え、えっ!?」

 頬を赤らめて棒立ちになっている美樹の腰もとを抱き寄せて、いささか強引に膝の上に座らせる。
 前を向いたまま「恥ずかしいです」とつぶやく美樹を「まぁまぁ」となだめて拓人は彼女の頭にタオルをかぶせた。
 あまり力は入れず、優しく揉み込む。タオルはすぐに湿り気を帯びた。

(俺を迎える準備を優先してくれてたのかな)

 そう思うと腹の底がむずがゆくなった。嬉しい。
 いてもたってもいられず、タオルごと髪をつかんで横に避けて肌をあらわにし、首すじに口づける。

「ひゃっ!」

 美樹は驚いたのか、ビクリと大仰に肩を震わせた。

「……肌が熱い」

 感じたままをつぶやくと、美樹は頬だけでなく耳も赤くした。

「拓人さんの唇は……冷たく感じます」
「湯上がりで火照った肌にはちょうどいいでしょ?」

 彼女の返事を待たず、ふたたび首すじに唇を押しつけて軽く肌を吸う。

「う……んん」

 どちらともつかない返事を勝手に「イエス」と決めつけて、今度はきつく肌を吸い上げた。真っ白な肌にひとすじの赤みがさす。

「た、拓人さん」
「……もっと目立たない位置にしたほうがいい?」

 薄手のセーターの裾を胸のあたりまでめくり上げる。残念ながら美樹はきちんと下着をつけていた。もっとも、少しいたずらをするだけだからそのほうがありがたいわけだが。じかに乳房を目にしてしまったら途中でやめられなくなる。
 拓人は美樹の脇腹をすうっと素早く撫で上げた。

「ん……!」

 美樹の声を心地よく思いながら、彼女の肩越しに下着をのぞき込む。
 このあいだ見たよりも格段にセクシーな下着だ。少女趣味なものも大歓迎だが、これはこれでいい。
 彼女の体をくるりと回転させてこちらを向かせ、紅いレースに覆われた乳房の端に唇を押し付ける。
 そうして唇で少し触れただけでも美樹は「ンッ」と高い声を上げるものだから、その細い腰に腕をまわしてぎゅうっと抱きしめた。
 華奢な体だ。太ったなどと言っていたが、本当にそうなのだろうかと疑問に思うくらい。
 拓人はあらためて、彼女のふくらみの上部を唇で吸い上げ、キスマークをつけた。

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