甘い香りと蜜の味 《 28

 ――拓人さんは私が恥ずかしがることを積極的にしている。
 そんな気がしてならない。
 裸になってしまった美樹はもぞもぞと手を動かして脚の付け根を押さえた。しかしかえってよくなかったかもしれないと、あとから思った。
 拓人は美樹の手を払い、陰毛をくすぐりはじめる。

「ふ、うぅっ……!」

 茂みを漁るようにぐるぐると円を描く拓人の指先が心地よい。心地よいけれど、とにかく恥ずかしい。
 拓人が乳頭を吸い上げると、ちゅうっ、ぴちゃっという水音が響く。ホテルの部屋はとても静かだから、その卑猥な水音がよけいに耳を打つ。
 美樹の薄桃色をさんざん舐めまわしたあと、拓人は舌を素肌に這わせたまま腰のほうへと下りていった。

「……っ!? 拓人、さん」

 彼の顔が両脚のあいだにある。

「舐めるのは乳首だけ――なんて、言ってないよ?」

 そうして乳頭をつまみ上げられた美樹は「ンッ」と小さく喘ぐ。

「まま、待ってください。だめです、そんな――ぁ、ああっ!」

 拓人は美樹の両脚を無理やり開いてその中央にある陰唇にちゅっと口づけた。
 美樹がバタバタと脚を動かしても、拓人は舌をどけない。

「やっ、拓人さ……ぁ、んんっ!」

 しだいに美樹の抵抗が弱くなっていく。両脚は快感を映したようになまめかしくビク、ビクッと跳ね上がるだけになる。

(見られてる……。舐め、られてる)

 揺れ動く黒髪を見下ろすことで、はっきりとそれを認識した。とたんに体の隅々まで甘いしびれが行きわたる。全身が快感を覚えて悦んでいる。

「んぅ……ん、はぁっ……!」

 快楽に制圧された美樹の蜜口をちゅっ、と音を立てて吸い上げたあとで拓人はぽつりと言う。

「美樹ちゃんの――甘い」
「……っ」

 美樹の体がピクリと跳ねる。

「すごく甘い蜜だ」

 大きく息を吐き、拓人はふたたび美樹の陰部に舌を這わせた。ぽってりとふくらんだ珠玉をレロレロと舐めまわし、蜜のあふれ口には指を挿し入れる。
 美樹の狭道はよく濡れていた。指は痛みもなく奥まで進む。
 拓人はふたたび悩ましげなため息をつく。

「美樹ちゃん……いい?」

 それがなにを確かめる言葉なのか――拓人がボトムスのポケットから取り出したものを見て理解した。
 心臓が脈を打つ音が、頭のなかにまで響いてきたと錯覚するほどの緊張が走る。

(怖い、けど……)

 彼とひとつになりたいという願望も確かにある。ひとつになったらどうなるのだろう、という好奇心だってある。

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