あいまいな恋の自覚 ~鬼畜な御曹司と淫らな遊び~ 《 14



ガヤガヤとうるさい居酒屋独特の喧騒のなか、碓氷 諒太はひざのうえで眠る部下の頭をそっと撫でた。

「諒太くんてば、ほんとにその子のこと気に入ってるんだね。なんで?」

テーブルをはさんで正面に座る従兄弟の要は好奇心旺盛なようすでニヤニヤと口角を上げている。

「それ、私も聞きたいです。愛莉ちゃんはたしかに可愛いけど、でも見た目だけじゃないんでしょう?」

要の隣にいる蜷川はそう言ってグラスをあおっている。
諒太はすうすうと寝息を立てる愛莉の髪の毛を指でもてあそぶ。

「きみたちには関係ない」

吐き捨てるように言って、ふたたび愛莉に視線を戻した。
しかし本当に、要に誘われて居酒屋にきてよかったと思う。
愛莉もいる、とつけ加えられていなければ飲みの誘いはいつもどおり断っていたはずだ。
父親と食事をしたあとはドッと疲れるからそのまま帰ろうと思っていたのだが、彼女に会えるのであれば少々の労は惜しまない。

「いいじゃん、教えてよ。えーと、愛莉ちゃんとはグループ合同の飲み会で知り合ったんだっけ?」

要の質問に諒太は短く「ああ」と答えた。
愛莉と初めて顔を合わせたのは一週間ほど前にグループ会社合同で催された宴の席だった。
たまたま彼女が隣に座った。愛莉はそのときもしこたま酒を飲んでいて、仕事のポリシーやら流儀やらを語っていた。

「で、初恋のひとに似てるから興味を持ったわけだね?」

「眼鏡以外は似てない」

焼酎をグイッと飲み干す。眼鏡の女性は昔からタイプだが、それだけで彼女に興味を持ったわけではない。
酔っ払っていても仕事に対する情熱は充分に伝わってきたし、なにより諒太のことを怖がらずに話してくれたことが嬉しかった。

感情を表に出すのが苦手な諒太はいつも周りに気を遣われていた。そういう自覚はあっても、幼い頃からの性格はそう簡単に治せるものではない。

「ふうん。でもさでもさっ、愛莉ちゃんは諒太くんのこと完全に怖がってるよ」

「それは……まだ、これから」

本社の人間である彼女を自分の会社に引き抜いて、部下になったあの日。
怯える彼女を前に諒太は苛立った。酒宴で愛莉は泥酔していたから諒太のことを覚えていなかったのかもしれないが、それでも彼女の記憶に自分が留まっていないのだと思うと悲しくなった。

なんとか彼女に自分を印象づけたい。そう思って、彼女の勤務初日から無理難題を言いつけると、本当に商品の使用感レポートを提出してきたから少し驚いた。やはり彼女は真面目だ。
その報告書を読むとますます彼女への興味がわいた。どんなふうに喘ぐのだろうか、と。

「……俺はそろそろ帰る。塩野谷を頼んだぞ、要」

テーブルの端で酔い潰れている役立たずな部下を一瞥し、諒太は愛莉を抱きかかえて立ち上がった。

「えー。俺だって持ち帰るなら女の子がいい」

無言で要を見おろす。こういうとき、諒太と要は言葉を交わさなくてもいい間柄だ。

「ごめん、冗談です。お願いだからそんな害虫を見るような目をしないで」

「……じゃあな」

ふうっと息を吐き、諒太は愛莉を抱え直して居酒屋をあとにした。


愛莉を抱えたままタクシーで自宅に戻った諒太は寝室へ直行した。
ベッドに寝かせると、起こしてしまったらしく彼女はまぶたを開け、ぼんやりとしたようすでこちらを見つめてきた。

「……碓氷さん?」

「……名前で呼んでくれないか」

先ほど居酒屋で彼女が従兄弟の名前を呼んでいたことが悔しかった。自分も、呼んでもらいたい。むしろほかの男の名前なんて呼ばせたくない。恋人同士でもないのに身勝手かもしれないが、そう強く思った。

「えっと……」

「……諒太、だ」

彼女に覆いかぶさって、耳もとでささやく。より近くで、彼女の声を聞きたい。

「りょう、た……」

愛莉はおうむ返しをした。名前を呼ばれただけだというのに全身が震える。

(……触れたい、知りたい)

考えるよりも先に手が動く。服を脱がせにかかると、彼女は特に抗うようすもなかったので幸いとばかりに性急に全て取り去った。
自身も服を脱いで、彼女に馬乗りになる。

「……抱いてもいいか」

裸にしたにもかかわらず彼女がなにも言わないから、触れる前にいちおう尋ねた。
途中で止める自信はないからだ。

「ん……いい、ですよ。私も……したい」

「……本当に?」

諒太は疑り深い。昔から自分の周りには言うことを聞いてくれる人間ばかりだったから、相手が心から従ってくれているのかといつも推し量っている。
愛莉に対してもそうで、彼女が自発的に想いを伝えてくれなければ信じられないのだ。

もしも自分の想いを先に告げたら、彼女は気を遣って合わせてくれるかもしれない。しかしそれでは嫌だ。互いが心から想い合っていなければ意味がない。
そういう愛を、諒太は求めていた。

「ぁ……んぅ……っほん、とう……っんぁ!」

彼女の自分に対する気持ちがあいまいでわからないままなのに、こんなことをするのは卑怯かもしれない。
それでも今は、抱いてもいいと言われたのだからそうせずにはいられない。
諒太は可愛らしく勃ったふたつのつぼみをさらに強くつまみ上げた。

「あっ、んく……っふ、はぁ……っ」

愛莉は艶かしい声音で喘いで気持ちよさそうに身体をくねらせている。
指の間に挟んでいる乳首をこすり合わせるようにひねると、彼女は大きく息を漏らした。
諒太は美味そうないただきを無遠慮に口に含む。

「ゃんっ! あ……ふぁっ……ッ!」

喘ぎ声を聞いているだけでイッてしまいそうだった。片手を彼女の下半身に伸ばして潤い具合を探る。思ったよりも濡れていた。そのまま花弁を剥いて肉芽を押し潰す。

「ひぁぁっ! あ、うぅ……ゃんっ、イッちゃう……っ!」

指先がわずかに脈動をとらえる。宣言通り彼女は陰核を絶頂させたようで、諒太はたまらなくなって間髪入れずに愛莉の脚を大きく押しひらいた。

「あ……ん、んぁっ……!」

いま彼女は泥酔している。もしかしたら、このあいだのように忘れてしまうかもしれない。それでも、諒太は欲にまみれて肥大した肉棒を愛莉の膣口に押しつけた。
たとえ彼女の記憶に残らなくても、この肉塊を押さえ込むことはできない。

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