あいまいな恋の自覚 ~鬼畜な御曹司と淫らな遊び~ 《 16

ジーッという音で愛莉はまぶたを開けた。

「あれ、私……寝ちゃってました。すみませ――……って、碓氷さんっ!」

先ほどの、金属がこすれるような音は愛莉が着ているニットワンピースの背中のファスナーがひらいた音だった。
眠ってしまったことを詫びつつ、上半身を起こす。碓氷が両脚に乗っかったままだから、完全に起き上がることはできない。

「何だ、起きてしまったのか」

「何だじゃなくて……あの、待って……っぁ」

今度はプチンと小気味のよい音がした。ブラジャーのホックを弾かれたのだ。ワンピースのそでは下着ごと腕からすり抜けていく。

(また、流されちゃう)

愛莉は身体をベッドに押しつけて乳房を隠した。彼の指はしかたなしに背中をツツツ、とたどる。

「……今日はそんなに疲れたのか?」

優しい声。愛莉を気遣ってくれているのが伝わってくる。

「そうじゃないです、けど……んっ」

肩甲骨のあたりを熱い舌が這う。くすぐったくなって身をよじったら、ベッドと身体に隙間が空いてしまったようで、彼の手が滑り込んできた。

「あ、ぅ……碓氷さ……んっ、んぅ……!」

シーツに押しつけていたつぼみを無理にすくわれ、素早くなぶられる。
愛莉はふたたび頭を枕にしずめて、くぐもった喘ぎ声を漏らした。

(気持ちいい。でも……)

互いに恋人はいないのだから、こういう行為は誰にもとがめられない。
だからといって、想い合っているわけではない。だが少なくとも愛莉は碓氷に惹かれていた。
強面の下に垣間見る笑顔や彼の優しい愛撫が愛莉を虜にしていくのだ。みだらな遊びにはまってしまっている。

「んっ、あぁ……っ!」

突然、大きな手で力強く肩をつかまれ、仰向けにさせられた。そうかと思うとすぐに碓氷は愛莉の胸もとに顔を寄せ、なぶって硬くしこった乳首に食らいついた。

「はふっ、う……ぁ、ああ……ん、ゃぁっ……」

吸い立てられて生じる淫猥な水音を聞きながら彼を見おろす。
気持ちがいいのに、いっぽうで胃のあたりがわずかにきゅうっと締まる感じがした。
想いが強くなればなるほど、不安も増していく。

「んぁっ、ふ……ぁ、うぅっ」

愛莉は喘ぎながら目を閉じた。思い切って彼の気持ちを聞いてみようか。でもそれで、この関係が終わってしまったら――?

「っ、え、あっ……!?」

ぼんやりと考えごとをしていたせいで、身体に玩具を貼りつけられているのに気がつかなかった。

「碓氷さん、これ……っぁ、だめっ……!」

「嫌がらないから、かまわないかと思ったんだが」

「あ、あ……ふぁぁっ!」

両の乳首に柔らかいテープで貼りつけられているのは透明な楕円形の玩具。そこからつながるふたつのコードの行く先は碓氷の手のなかだ。

「アッ、いや……ん、んぁっ!」

ふくらみの頂点に貼りつけられたローターは小刻みに振動して愛莉の官能を揺さぶる。あまりの快感でおかしくなりそうだったから、それを取り去ろうと両手を伸ばす。

「感想を聞かせてくれないか」

「ひぁっ……! ん、ンン……ッ」

両手首をつかまれてベッドに押さえ込まれる。それから血流の盛んな首筋をちゅうっときつく吸われ、愛莉の下半身が脈打つのはたやすかった。

乳首を揺らしていたローターの電源が切れた。愛莉は大きく息を吐き出す。

「ん……」

下半身でもたついていた衣服をむかれ、未だに心地よく脈動している秘部が顔を出す。
愛莉はそれを黙って見つめていた。さわってもらいたい、と願ってしまった。
碓氷はローター越しに上半身のふくらみの頂点を指でツンと突ついて、おもむろに口をひらく。

「この、貼りつけてるテープは痛くないか」

「っぅ……平気、です……って、それは何ですか……?」

下半身の秘部は指でいじられるものだと思っていた。でもそうではなく、秘めやかな箇所にはいつの間にか小さなハサミのようなものを押しつけられていた。

「どこをはさんだらきみは気持ちよくなるかな。リクエストを受けつけよう」

いたずらっぽく笑いながら碓氷は愛莉の脚をひらいて身体を割り入れ、陰唇をわざとらしくハサミの先端で突ついた。
ハサミと言っても刃にあたる部分は太くて丸っこい。

(リクエストって、そんな……わかってるくせに)

あふれ出した蜜で濡れた花びらのうえをハサミ型の玩具が焦れったく行きかう。敏感な肉芽にはわずかにしか触れない。

「っふは……ぁ……っ」

愛莉は恥ずかしげもなく脚を大きく広げたまま腰をくねらせた。

「ヒクヒクとうごめいてるな。きみのココは、なにを待ってる?」

「ぁ……っ、碓氷さん……っ、早く……はさんで、下さい」

「どこを?」

挑発的な眼差しを受けて身が焦げる。はさんで、と口にするだけでも恥ずかしかったのに、案の定、彼は具体的な名称を言わせるつもりだ。

「……ここ」

愛莉は視線をベッド端に落としながら、下半身の小さな豆粒に人差し指で触れて彼に示した。
碓氷は驚いたように目を見ひらいた。それから徐々に眉間にシワが寄っていく。

「……その仕草は反則だ。いじるよりも先に挿れたくなる」

碓氷は不機嫌顔のまま衣服を脱いでいく。ジャケットとネクタイを床に脱ぎ捨て、スラックスとトランクスをズルリと太もものあたりまでおろした。
肉塊は雄々しくそそり立ち、碓氷はそれを愛莉の蜜口に押しつける。

「ぁ、あ……碓氷さん……っひぁ、う」

「心配するな、ちゃんとコッチもいじってやるから」

「あ、あ、アァッ……!」

上半身に貼りつけられているローターがふたたび振動を始める。
碓氷は熱く太い幹を愛莉の蜜壺に打ち込みながら、ハサミ型のローターで花芽をなぶった。

「んぁっ、ひぅ……はぅぅっ……あん……っ!」

つぼみと花芽はそれぞれローターにはさまれて震え上がっている。それだけではなく、彼の巨根が奥深くまで到達していて、愛莉は顔を両手で覆った。

「……どうした?」

いったん最奥を穿って、ゆっくりと引き戻しながら碓氷は尋ねた。

「あ、う……恥ずかしく、て……っぁ、ふぁぁっ!」

「はしたなく喘ぐのが恥ずかしいか? ではそっちの口も塞いでやる」

「んん……ッ!」

碓氷は肉芽をローターでこねくりまわしながらベッドに片手をついて身を伏せ、あふれ出る嬌声をせき止めるように愛莉の唇を塞いだ。

息苦しくなってしまうほどの激しい口づけだった。あらゆる性感帯を余すことなく責め立てられているから、余計に酸素が頭にいかなくてクラクラしてくる。

「んっ、ん……!」

乳首と陰核で振動するローターの機械音と、彼が腰を揺することで生じる水音が織り重なって響く。ついこのあいだ感じたばかりの、あの絶頂が訪れる予感がした。

唇は塞がれたままだから声は出せない。そうでなければ叫んでいたかもしれない。ねっとりと心地良く絡みつく舌を感じながら、愛莉は思考を止めた。

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