あいまいな恋の自覚 ~鬼畜な御曹司と淫らな遊び~ 《 19

「……ん?」

もぞり、と胸もとでなにかが動いた。感じたのはそれだけではない。なんだか寒い。

(しまった、うたた寝してたから……)

そのせいで身体が冷えたのだと思った。けれどそうではなかった。

「えっ、え……!?」

まぶたを開けるとそこには待ち焦がれていたひとの姿があった。
碓氷はソファに横たわる愛莉に覆いかぶさっている。それだけならまだしも、愛莉は自分の姿を確認して心底おどろいた。

「よく似合ってるぞ」

「なっ……あの、ぅ……ッ!」

ソファに寝転がったときはたしかエプロンを身につけたままだった。いまもそれは変わらない。けれど、それしか身につけていないから寒い。
裸にエプロンだけを着ている状態なのだ。

「碓氷さん、えっと……。おかえりなさい、遅かったですね……っぅ、ん」

「ああ、蜷川さんと一緒に食事へ行っていた」

「っぁ……!」

身体を仰向けられ、エプロン生地をふくらみに押しつけられる。ふたつのつぼみは布地の下で立ち上がって、そこだけが尖っていてなんともいやらしい。
碓氷はエプロン越しに乳頭を突つく。

(また、蜷川さんと食事……?)

乳首を愛撫されているというのに、愛莉はそれに悶えるでもなく別のことを考えていた。
碓氷と蜷川はいったいどういう関係なのだろう。やけに親密そうだけれど、もしかして彼女とも――……?

「どうした? うわの空だな」

「んっ……!」

エプロンの白い生地ごと強くつぼみをつままれてわれにかえる。
碓氷はふたつの硬い乳首の根もとを指の腹ではさんでひねっている。

「んぁっ、う……は、ぁん」

「きみはもう食事はすんだのか?」

「んっ、く……ぁ、まだ……」

「じゃあ腹が減ってるんじゃないか? 俺のぶんも用意してくれていたんだろ。せっかくだから一緒に食べようか」

「……いい、です。あとからで……っぁ、んぅ」

「そうか。なら先にきみをいただこう」

彼の目が楽しげに細まって、それからすぐに碓氷はふくらみの尖った先端に食らいついた。

「アッ……! ん、はぅっ……やぁ、ん……っ!」

お腹はたしかに空いていた。けれどそれよりも、いまは彼に触れてもらいたかった。
愛莉は乳頭をしゃぶる彼の頭をそっと片手で抱いた。

短めの黒髪を撫でてみる。すると碓氷は少し驚いたようすでこちらを見上げ、けれど乳頭を唾液で濡らすのをやめなかった。
布地が透けて薄ピンク色の先端がぷっくりと浮かび上がっている。

「はぁっ、ぁ……ん、ん……ふぁっ、ぅ」

碓氷と蜷川の関係は気になるけれど、それを彼に聞くのははばかられた。
彼女ともこういう行為をするのだと言われたら立ち直れそうにない。自分だけが彼を独占したいと、そう願ってしまう。愛莉は碓氷の頭を撫でながらそう思った。

「頭を撫でられるのは悪くないな」

濡れそぼった桜色の棘から唇を離して碓氷はつぶやいた。それからエプロンの両端をつまんで中央に寄せた。双乳がぷるんと揺れて踊り出る。

「んぁっ、は……ぁ、碓氷さ……ん、ぁぁ……」

両の乳房は脇のほうから大きな手で持ち上げられ、谷間にはくしゃくしゃになったエプロンがはさみ込まれている。碓氷は胸を枕がわりに顔を押しつけた。

「……もう少し撫でていてくれないか」

くぐもった小さな声が聞こえる。

(碓氷さん、甘えてる……?)

そう思うと何だか急に嬉しくなった。愛莉はほほえみながら彼の頭をよしよしといったふうに撫でる。

(なんか、可愛い)

おさな子のように胸に顔をうずめる彼に愛おしさを感じる。

「どうしたんですか? なにか嫌なことでもあったんですか」

「いや、そういうわけではないが……。少し悩んでいることがあってな。こうしていると落ち着く」

「そうなんですか……? ふふ、でも頭を撫でられて落ち着くだなんて、子どもみたいですね、碓氷さん。……っあ、ちょ……っん、ぁ……っ!」

愛莉の脚のつけ根には いつの間にか彼の指が伸びていた。先ほどの愛撫で潤いをたたえていた秘部の蜜をすくわれる。

「子どもはこんなことをしないだろう?」

「っぁ、う……ひぁっ、あ!」

子どもあつかいしたことが癪にさわったわけではないと思う。碓氷は顔を上げてにこやかにほほえみ、愛莉の下半身の割れ目をまさぐっている。

「あっ、いや……そんな、速く動かしちゃ……だ、め……っぁ、ああ……っ!」

ずぷっ、ぬちゅっという大きな水音を発しながら蜜壺の中をゴツゴツとした指がうごめく。細長い指はたやすく最奥を突き、何度も何度も肉襞のなかを往復して官能を刺激した。

「どこがいちばん感じる? きみが好きなところを突いてやる。ここか、それともこっちか」

「アッ、ん……っ。ふぇっ、う……や、ぁぁっ!」

碓氷は口角を上げて愛莉の乳首をつまむ。同時に膣内にうずめている指をあらゆる方向に動かした。愛莉の好きなところを探っているふうではなくて、どちらかというと的確に、感じる箇所を突いている。

「ああ、だめ……そこ、そんなに突いちゃ……ぁ……っふ、ぁう」

「ここを突いていたらきみはどうなるんだ?」

「やぁっ、だめ……っ、イクの、止まんなくなっちゃ……っぅ、アアッ!」

言い終わる前に愛莉は膣内をビクビクと収縮させた。心地よい波動が全身に広がり、なにも考えられなくなった。
愛莉は痙攣する自身を抱きしめて彼の下半身を見つめた。早く彼のものを打ち込んで欲しい。けれど碓氷は服を脱ぐそぶりがない。

「碓氷さん、はやく挿れて……」

しびれをきらしてそう言うと、碓氷はニイッと笑いながら「まだだ」とささやいて愛莉の下半身へと顔を近づけていった。
このごろ彼はよく笑顔を見せてくれるようになったから、愛莉はそのほほえみだけで気持ちがいっぱいになってしまう。

「んぁ……ゃ、碓氷さん、そこ……きたないです。まだシャワー……浴びてないし」

「清められているよりもこのほうが興奮する。きみのかぐわしい匂いがよくわかるしな」

「な……っぁ、やん……!」

ザラザラとした舌先で殻を除かれる。なかの真珠はぷっくりと腫れ上がり、触れられるのを待ち望んでいる。それなのに碓氷はなかなか突起には舌を這わせない。

「っゃ、焦らしちゃ……はやく、碓氷さん」

「すっかりねだり上手になったな、愛莉」

「……えっ」

ごく自然に名前を呼ばれたから、あやうく聞き過ごしてしまうところだった。いままではきみ とか嶋谷くん としか呼ばれていなかったのに。

「あの、碓氷さん。いま、私の名前……っあ、んぅっ!」

ソファの座面にひじをついて上半身を起こしながら愛莉は碓氷のほうを見た。すると碓氷は視線を合わせずに急に花芽にかぶりつき、そのまま強く吸い立てた。

「ああっ、んふ……っ! ひぁっ、うんん……っ!」

名前を呼ばれただけなのにこんなにも嬉しいなんて。愛莉は先ほどの絶頂の余韻を残したまますぐにまた身を震わせた。

「ふは……っん、ん……」

碓氷は身体を起こして愛莉に覆いかぶさり、口づけてきた。すぐに濃密なキスになって、水音が奏でられはじめる。

「ん……っ!?」

膣口に猛々しい一物を押しつけられたかと思うと、いっきに奥まで入り込んできて、愛莉は呼吸を荒くした。唇を塞がれているせいで大きく喘ぐことはできない。律動はふだんよりも性急で、ふたりともあっという間に絶頂してしまった。

「はあ……今日はいちだんと締まってたな……」

碓氷は身体の力を抜いて愛莉の上に倒れこんだ。重くて少し苦しかったけれど、彼と密着していたかったからなにも言わなかった。ただ、首すじに顔をうずめられているからくすぐったい。

「あ……っ、そうだ。碓氷さん、家賃はおいくらですか」

「んん……? そうだな……ツケておくからあとでまとめて払え」

「ええっ、そんな」

あとからとんでもない額を請求されたら困る。愛莉は「教えてください」と言いながら彼の胸をトントントンとせわしなく叩いた。

「きみが毎晩、俺に抱かれてくれるなら減額してやってもいい」

顔を上げて目を細める碓氷。愛莉はなにか言おうとして、けれど言葉が出てこなくて口をパクパクと動かしていた。

「……冗談だ。しかし毎晩でも抱きたいのは本当」

「んん………っ」

ふたたび彼のやわらかい唇に覆われる。愛莉は自分も同じ気持ちなのだと伝わるように、彼の頬を両手で包んで口づけに応えた。

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