あいまいな恋の自覚 ~鬼畜な御曹司と淫らな遊び~ 《 21

愛莉は見慣れた道を歩いて本社へ向かっていた。少し前まであんなに復帰を望んでいたのに、いざそうなると足どりが重かった。少しのあいだだったとはいえ本 社の業務から離れていたから、仕事にたいする不安もある。けれどなにより、コワモテの彼のことが気がかりだった。いまだに家では一度も顔を合わせていな い。

「おかえりなさい、嶋谷さん! いえ、嶋谷主任」

「はは……、ただいま。主任って呼ばれるのに慣れるのは時間がかかりそうだなぁ……」

もとの部署に出戻った愛莉を同僚たちはあたたかく迎えてくれた。じつは辞令は転籍だけではなくて、主任のポストつきだったのだ。こんなに嬉しいことはない。それなのに愛莉のなかのモヤモヤはいっこうに晴れなかった。

復帰初日の昼休み、後輩の静香といっしょにランチを終えて部署へ戻っているときだった。廊下を颯爽と歩いてこちらに向かってくる愛しいひとを見つける。

「うす……っ、社長!」

愛莉は彼の役職名を呼びながら近づく。碓氷は最近はよく本社に赴いているようだったから、もしかしたら会えるかもと期待はしていた。

「社長じゃないぞ」

愛莉のすぐそばまでやって来た碓氷は首にかかっているネームプレートを指でつまんで見せつけてきた。

「第一営業部第三営業課……かっ、課長!?」

碓氷が身につけていたのは来客用のネームプレートなどではなく本社の社員証だったのだ。
「えっ、なに……どういう……っ、ええ!?」

あわてふためいていると、静香が耳打ちをしてきた。

「嶋谷さん、私は先に戻ってますね」

小さな声でそう言って、碓氷に会釈をして立ち去ってしまった。愛莉は「うん」と返事をしながら彼女を見送り、それからふたたび彼を見上げる。

「……あの、どういうことか説明していただけませんか」

「そうだな……では場所を変えようか。ついてこい」

そう言い終わる前に歩き始めた彼を追う。数メートル先の会議室へふたりで入る。まだお昼休みだから誰もいない。

「んっ、んん……っ!」

会議室に入るなり壁ぎわに囲われ、視界が真っ暗になる。塞がれた唇から割り入ってきた舌が愛莉のそれを追いまわし、瞬く間に絡め取られる。

(え、え……っ!? こんなところで)

深い口づけと同時に彼の手が愛莉のカーディガンのいちばん上のボタンを外しにかかる。なかに着ているシャツのボタンも次々と開かれていく。彼の手がふくらみをつかむのはあっという間だった。なにもかもが性急だ。

「んふ、ん……っ。碓氷さ……っぁ、ん!」

息つく間もない口づけが終わったと思ったら、ブラジャーのカップから乳房を無理にすくわれ、両方のいただきをつままれた。愛莉は思わずぎゅうっと彼のスーツのジャケットをつかんだ。

「誰か、きたら……どうす……っぁ、んく!」

昼休みはもうすぐ終わる。午後から会議室を使うひとが早めに来てもおかしくない。愛莉はつかんでいた彼のジャケットをやんわりと押した。

「知るか。俺はいま愛莉けつぼう症だ。きみに触れたくてたまらない……」

「アアッ! ん、ふぁっ……!」

髪の毛はうしろでひとまとめにしていたから、首すじはさらけ出ていた。碓氷はそこを舐め上げながらふたつの乳頭をぎゅうっとつまんでこねくりまわす。ふくらみも全体を手のひらで覆われていて、碓氷はゆっくりと揉みまわしていた。

「碓氷さん、だめ……っぁ、ぁふ……! それに、まだ……っぁ、いやぁ……っ」

彼がなぜ本社にいるのか、まだ事情を聞いていない。けれど碓氷はその説明をする気はないようで、愛莉の硬いつぼみをしごくのに熱心だ。

「……挿れてもいいか? 我慢できない」

「え……っ!?」

熱い吐息が耳にかかった。碓氷は懇願するようなまなざしを愛莉に向けている。

「だっ、だめですよ……。こんなところでなんて」

そう言って目を伏せると、彼の下半身が視界に入った。スラックスのむこうの肉塊はありありとふくらんでいる。

「きみのここは準備万端のようだが?」

「あ……っ!」

彼の一物に気を取られているあいだにチェック柄のボトムスのファスナーを開けられていて、ショーツのなかをつめたい指が這う。割れ目をとらえられ、あふれでている蜜の存在を知られてしまった。

「だめ、碓氷さん……。ひぁっ……! ゃ、ぁん」

「こっちの口はそうは言ってない。むしろ欲しがってるんじゃないか」

「んぁっ、はふ……っ!」

碓氷は片手で乳首をつまんだままもういっぽうの手で秘部をまさぐった。ボトムスは膝下までずり落とされている。ショーツは履いたままだけれど、お尻と陰毛が半分見えている状態だからほとんど機能していない。

「ヌルヌルしたのが次々にでてくるぞ」

「っや、言わないで……。あ、ひぅっ!」

肩をつかまれてうしろを向かされ、会議室の白い壁に身体を押しつけられる。碓氷は愛莉のショーツをボトムスと同じ位置まで引き下げ、背後から腕をまわして乳首と陰核を激しくなぶった。

「アアッ! やぁ……っふ、くぅ……。ん、ンン……ッ!」

「欲しくてたまらなくなってきただろ? 挿れさせろ」

「んぁぅ……っ」

生々しい彼の陰茎が臀部に当たっている。蜜口をかすめては遠ざかる。入るそぶりを見せながらも、なかなか奥へはいかない。

「やぁっ……。碓氷さんの、意地悪……っ!」

挿れさせろ、などと言いながら愛莉を焦らしているのだ。こちらが求めるまでなかには挿入しないつもりだろう。愛莉は身をよじって彼のほうを向き、小さな声で「はやく」と急かした。
「こんなところではダメなんじゃなかったのか」

「ダメ……だけど、だめじゃない……っぁ、んぅぅ……」

「どっちなんだ、それは」

肉竿は秘部の浅いところを出たり入ったりしている。碓氷は ふっと息を漏らして愛莉の耳たぶをペロリと舐めた。

「あん……っ! はやく、奥まで……。ん、ぁぅ」

上半身のつぼみと下半身の花芽をくすぐるように碓氷は素早く指を動かした。それがいっそうもどかしさを強調する。蜜口へわずかに挿し入れられた男根は何をためらっているのかそれ以上は進んでこない。

「……声、おさえてろよ」

「ん……っ。あっ、ひぁぁぁっ!」

彼の指示どおりにはできなかった。ひと息で最奥を突いた肉棒は短いスパンで激しく何度も打ちつけてくる。愛莉は絶叫した。

「コラ、大声を出すな」

「んむっ、ぅ……!」

口もとを大きな手のひらで塞がれる。律動は緩まることなくさらに激しくなって、快感からか愛莉のまなじりには涙が浮かんでいた。肉襞をこする陰茎が絶え間なく快楽の波を生む。愛莉はすぐに下半身を震わせ、同時に彼もビュクビュクと愛莉のなかに吐精した。

「ん、う……」

肩で息をしながらその場に座り込む。碓氷は肉棒を引き抜きながら愛莉の動きに合わせて腰をおろした。

「……たった一度では到底、足りないな」

「ゃ……。もう、本当にダメです。昼休みが終わっちゃう」

名残惜しそうに乳首を突つく彼の指を払って、愛莉は衣服を整えた。碓氷もしぶしぶといった様子で一物をしまっているようだった。

「それで、どうして碓氷さんは本社にいるんですか? 会社はどうしたんですか」

「ああ、そういえばその話の途中だったな」

碓氷は愛莉の身体をうしろから抱きしめながら口を開いた。力強くて少し苦しかったけれど、こうされているのはすごく嬉しいから文句は言わない。

「もともと期間限定であの会社の社長をしていてな。いずれは本社に勤務する予定だったんだ。転籍はもう少し先になるはずだったんだが、ちょうど希望していたポストが空いてな」

「そうだったんですか……。でも、じゃあ前の会社の社長は誰が?」

「要だ。覚えてるか? あいつのこと」

「もちろん覚えてますよ。なるほど、要さんが……ん、んんっ!?」

急に頬をつかまれ、グリンと彼のほうを向かされる。熱くて柔らかい唇を押しつけられ、愛莉はくぐもった声を漏らした。

「ほかの男の名前を呼ぶなと前にも言ったよな。むしずが走る」

つめたい視線を送ってくる碓氷。しかしいまのは会話の流れとして仕方がないではないか。そうは思ったけれど、愛莉は反論せずに「ごめんなさい」と謝った。そういうふうに言われて嬉しい気持ちのほうが勝ったからだ。
碓氷はこんどは愛莉を正面から抱きしめて語りはじめる。

「本社に転籍するにあたって、どうしてもきみをいっしょに連れて行きたかった。引き抜いたばかりだったのに、申しわけない気持ちはあったんだが……いっときでも離れたくなくて」

「私も……寂しかったんですよ。会社で碓氷さんに会えなくなるって思ったら、本当に」

「今日はそっちに帰る。朝まで寝かせないから覚悟しとけ」

愛莉の額にそっとキスを落とし、碓氷は優しげに目を細めた。

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