あいまいな恋の自覚 ~鬼畜な御曹司と淫らな遊び~ 《 23

冬のおとずれを感じる肌寒いある日、愛莉は身をこわばらせながら日本家屋の廊下を歩いていた。ときどきすれ違うひとは角刈り頭をしている。

(碓氷さんの家って……本当に極道じゃないのかな?)

会社とは違ってややカジュアルなジャケットを着て前を歩く男の広い背中を見つめながら愛莉は思った。今日は碓氷の父親の誕生会だそうで、どういうわけか愛莉もいっしょに出席してくれと頼まれ、いまは彼の実家に来ている。身内を集めての酒宴だそうだ。

「宴の時間にはまだ早いな……。俺の部屋にくるか?」

碓氷はどこかソワソワとした様子でこちらを振り返った。落ち着かないのはこちらも同じだ。すれ違うひとたちがみな深々と頭を下げていくからだ。

「そうですね。碓氷さんのお部屋を見てみたいです」

「そうか、よかった。じつは今日のために新しいおもちゃを用意しておいたんだ」

「へえ」とだけ返事をして愛莉はふたたび碓氷のうしろをついて歩いた。そういえば昔、新しいおもちゃを買ってもらったときはそれを友達に見せたくて是が非でも家に呼びたかった。彼もそんな心境なのだろうか。

枯山水の立派な庭園沿いを歩くこと数分、奥まった場所にある座敷が彼の私室だった。障子を開けて中へ入る。畳替えをしたばかりなのか、いぐさの良い香りがした。
部屋のなかは和モダンな造りで、二十畳ほどの座敷の奥は板貼りの空間があって、そこに大きなベッドが置いてある。書斎も兼ねているらしく、隅のほう には机と本棚があった。

「それで、おもちゃってどんなのですか? ボードゲームとか?」

碓氷は机の上に置いてある大きな箱をゴソゴソと漁っている。

「ボードゲームなんて何年もやってないな。まあそれはいつかやるとして、今日はコレで遊ぶ」

「……それって」

彼の手には男根をかたどったおもちゃが握られている。愛莉は自身の青いワンピースの裾をぎゅっとつかんだ。

「ほら、こっちへおいで。いっしょに遊ぼう」

碓氷は卑猥なおもちゃを持ったままベッドに腰をおろした。それから、グレーの柔らかそうなジャケットを脱いで、首もとが大きくあいたニットシャツだけになった。動きやすそうだ。

「もう……。時間は大丈夫なんですか?」

「あと三時間はあるから平気だ」

どうりで妙な時間に呼び出されたと思った。午前九時というのは昼食には早すぎる。もともと彼は愛莉と淫らな遊びをするつもりだったのだ。

「……おてやわらかにお願いします」

愛莉はゆっくりと彼がいるベッドへと歩いた。まだなにもされていないのに、秘部が疼くのが情けない。碓氷のとなりに座ると、彼は品定めでもするように愛莉の身体を見まわした。

「その服、よく似合ってるぞ」

「……ありがとうございます」

似合うもなにも、彼が選んだ服だ。一週間ほど前にプレゼントされたのだ。

「人前では絶対に上着を脱ぐなよ」

カーディガンを脱がされる。なかのワンピースは胸もとが大きくあいていて、乳輪の少し上には虹色のレースがのぞいている。

「よし、俺が選んだ下着をつけてるな」

「だって……。この服に合う下着はこれしかないから……っん、ぁぅ」

胸もとが広くあいているせいで普通の下着ではそぐわない。彼がワンピースといっしょにくれた虹色のレース下着をつけざるをえないのだ。それが、大事な部分が透けている下着でも。
彼の指が乳房をたどる。いろどり豊かなレースの内側を指でなぞられ、愛莉はふうっと息を漏らした。

「なにを緊張しているんだ。もっと肩の力を抜け」

「そんなこと言われても……。っぁ、くすぐったい……ん、ぅ」

碓氷はうつむく愛莉の顔をのぞき込んで、桜色に届くぎりぎりのところまで指を這わせている。

「いままでなんどもきみに触れてきた。そろそろ慣れてくるもんじゃないのか? どうしてそんなに赤くなるんだ」

「んん……っ」

頬に唇を押し当てられる。彼の舌を冷たく感じるのは自分の顔がほてっているからだろう。

「それじゃあ碓氷さんは、私にさわるのはもう慣れっこなんですか……?」

「……そうだな、慣れない。きみに触れるときはいつも緊張する。いまも」

「うそ……。なんでもない顔でさわってくるじゃないですか」

「感情を表に出すのが苦手なだけだ。ほら、聞こえるか?」

腰を引かれてぎゅうっと抱きすくめられる。頭は横向きに片手でガッチリと固定されている。聞こえてくる心臓の音は自分のものと同じくらい速く感じた。

「なんで緊張するんですか?」

「さあな。あらためて聞かれると説明できない」

「さっきは私に同じようなことを聞いてきたくせに。自分でもわからないことを私に聞くのはやめてください」

「まったく、口は達者になってきたな。そろそろ俺の名前を呼べ」

「あ……っ!」

ふくらみを覆っていた虹色のレースとワンピースの布地を下にずらされる。乳房がふるんと顔をだす。その先端はピンとかたく張りつめていた。
碓氷はうしろから愛莉の身体に腕をまわし、乳房の中央にある円にそって指をめぐらせた。

「ん……っ、ぁう……。っふ、あぁ……」

色づいた敏感な部分にはなかなか指がやってこない。 愛莉はひざをすり合わせて身をくねらせた。

「もどかしそうだな。もうわかってるんだろう? どうしたら俺がそこに触れるのか」

「ん、う……っ!」

まくしたてるように碓氷は愛莉のふくらみを上下に揺らした。ふるふると揺れる先端はよけいに尖って疼きを増す。愛莉はたまらなくなって口を開く。

「……諒太さん、さわって」

呼びかたを変えるのはなかなか難しいものだ。なんだか気恥ずかしさもある。

「なにで触れられたいんだ? これか?」

「あ、ん……!」

碓氷は新しいおもちゃをふたたび手に取り右の乳房を下から突ついた。尖ったつぼみを男根型のおもちゃで前後左右になぶられる。シリコン製と思われるそれは冷たくはない。けれど温かさがないからものたりない。

「いやぁ……。諒太さんの指がいい」

自分のものとは思えない甘えた声が出る。言ってしまったあとで恥ずかしくなって彼の様子をうかがう。そっとうしろを向くと、すぐに視線が絡んで互いの顔の距離が狭まった。

「ん、んっ……」

唇を覆われながらベッドに沈み込む。スプリングがよくきいていて、はね返されそうだった。
碓氷はふたつの乳頭を強くつまみあげながら愛莉の唇に舌を割り入れる。

「ん、む……ぅっ!」

ワンピースのすそをシリコン製のおもちゃでめくりながら碓氷は愛莉の秘所をめざす。愛莉は彼が触れやすいように脚を開いた。

「どうした、積極的だな。いい子にはご褒美をあげようか」

「あ、あんん……っ!」

なごり惜しそうにちゅっと唇をついばんで碓氷は顔を離す。それから指で乳首をなぶりながら身体を移動させ、愛莉の脚を大きく開いてショーツの端を持ち上げ陰部をのぞき込んだ。

「ヒクヒクしてるな。どういうふうにさわられるのがお望みだ?」

「あ、ぁ……指……っ。碓氷さんの指がいい、です」

「名前で呼べと言ってるだろう」

「あぅぅっ! ん、はふっ」

碓氷は指の腹で愛莉の硬い棘をしごきながら大人のおもちゃで花芽を突ついた。
おもちゃは二股になっていて、敏感な突起は細いほうの先端でグリグリと押しなぶられている。

「りょ、た……さ、ぁう……っ!」

「聞こえないぞ。もっと大きな声で言え」

「んぁっ、ふ……! 諒太、さ……ん、んくぅっ」

秘めやかな箇所は愛蜜をあふれさせて空洞におさまる獲物を待ち望んでいる。

「諒太さんっ……。挿れて、ください……っ!」

焦れったくてどうしようもなかった。愛莉はブラジャーとそろいのショーツを脱ぎながら懇願した。

「そんなにこのおもちゃが欲しいのか。だったらくれてやる」

愛莉がショーツを完全に脱ぐ前に、碓氷は制するように手を動かす。下着は片足のくるぶしのあたりでまるまっている。

「あんんっ! ……っあ、ふぁぅ……!」

花芽を刺激しながら蜜壺に侵入してきた男根型のおもちゃは媚壁をズンズンと進む。碓氷のものよりもはるかに細めのソレではものたりなさを感じる。

「やぁっ……。ソレじゃなくて……っぅ、んぁっ」

「愛莉のお望みはコレじゃないのか? おかしいな、よけいに蜜があふれ出してきてるのに気持ちよくないのか」

「ひぁぁっ!」

あふれ出すというよりも蜜をかき出されているというほうが正しい。碓氷は細長いおもちゃを大胆に前後に往復させて愛莉の蜜壺をせめ立てる。ズププッ、ピチャリという卑猥な水音はさらに大きくなっていく。

「ああっ、だめ……! いっちゃ……う、ぁぁっ!」

下半身にきゅうっと力がこもる。あと少しで絶頂しそうだった。そのとき、

「ぼっちゃま、お取り込み中に申し訳ございません! 諒介様がお呼びでございます」

障子の向こうから男性の声が響く。碓氷は不愉快そうに眉間にしわを寄せ、愛莉のなかからそっとおもちゃを引き抜いた。

「前にもこんなことがなんどもあったな……。まったく、間の悪い……。愛莉、続きはまたあとで。すぐに戻ってくるからいい子で待ってろよ」

愛莉は身を起こす彼を呆然と見つめていた。碓氷が愛莉の頭を撫でる。

「待ってるあいだにひとりでシててもいいぞ」

意地悪くほほえんだあと、ジャケットを羽織って足早に部屋を出て行った。

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