碓氷が出て行ったあと、取り残された愛莉は衣服を正してベッドに腰かけていた。なにをするでもなくソワソワと彼を待つ。
(ひとりでシてていいなんて言われても、できないよ)
彼の私室とはいえ、先ほどのようにいつ誰がくるのかわからない。そもそもまだ明るい時間なのだ。ひとりエッチをする勇気などない。そうしているうちに小一時間ほどが経った。
「悪い、遅くなった。もうそろそろ宴の時間だ。行こうか」
あわただしく帰ってきた碓氷につれられて部屋を出ることになった。早歩きをする彼のななめ後ろを歩いていると、
「いまからきみを俺の婚約者として親父に紹介するから、そのつもりで」
「……え?」
愛莉はあゆみを止める。いま、ものすごく大事なことを言われた。互いの顔も見ずに。
「え、ええっ!? どういうことですか」
「くそっ、誰がほかの女と見合いなんかするか」
碓氷は不機嫌そうな顔をしてブツブツとつぶやいている。
「諒太さんっ、きちんと説明してください」
「着いたぞ。入れ」
花鳥風月が描かれたひときわ豪華な襖の前で立ち止まった碓氷は愛莉のほうを振り向いてなかへ入るよう促した。愛莉は不満顔のまま彼に従う。
襖のむこうは大広間になっていて、畳の上のローテーブルには刺身や天ぷらなどおいしそうな料理がところせましと敷き詰められていた。ひとはまだまばらで、 愛莉は会釈をしながら碓氷のうしろを歩いた。そして床の間の前の上座に見知った顔を見つけて「あっ」と小さく声を上げる。
「愛莉ちゃん、やっほー」
「え……蜷川さん!? どうしてこちらにいらっしゃるんですか」
「……紹介しよう。俺の父親の諒介と、義母の……名前は、知ってるよな」
黒留袖を着てほほえむ蜷川と仏頂面の碓氷を交互に見つめていると、本社社長で碓氷の父親でもある諒介がこちらをにらんできた。愛莉は萎縮して深々と頭を下げる。
「は、はじめまして! 嶋谷 愛莉と申します」
「きみか、婚約者というのは。ワシは認めんぞ! そんなヒラヒラした服で息子をたぶらかしおって」
頭上から降ってきた声に愕然とする。先ほどいきなり婚約宣言をされて、こんどはそれを認めないと言い渡されてしまった。頭をあげられない。
「……お言葉ですが父上、この服は俺が彼女にプレゼントしたものです。それに、たぶらかしたのは俺だ。誰になんと言われようと絶対に彼女と結婚する。たとえ貴方と縁を切っても」
「あら、まあ」
蜷川は笑みをこらえるように口もとを手で覆った。諒介は眉ひとつ動かさない。
(縁を切るって、そんな……)
愛莉は碓氷の横顔を見つめた。真剣なまなざしだ。
「……よく言った、諒太。お前はワシに対して従順すぎる。そのくらいの威勢がないとな」
コワモテから一転して諒介はニイッとほほえんだ。とたんに彼が白髪まじりのただのおじいさんに見えてしまう。
「え、あの……?」
アタフタしている愛莉を見かねて蜷川が口添えをする。
「やあねぇ、諒介さんたら意地悪しちゃって。安心して愛莉ちゃん。諒介さんは最初からふたりの結婚に反対なんてしてなかったのよ」
父親の言いなりになってばかりの諒太くんにハッパをかけただけ、とつけ加えて蜷川は さも嬉しそうに目を細めた。
広間のなかはガヤガヤと賑わっていた。五十人ほどのひとびとが座して語り合いながら酒をあおっている。ななめ前に座る碓氷の両親に聞こえないよう、愛莉は小さな声で彼に話しかける。
「どうして もっと早く教えてくれなかったんですか、蜷川さんがお母さんだってこと」
「言っておくが義理の母親だ。蜷川というのは旧姓。彼女の指示でそういうふうに呼んでいる」
「質問に答えてください、諒太さん」
「……ヤキモチを妬かせたかっただけだ」
ポツリと小さな声で言って、碓氷はきまりが悪そうに焼酎をひとくち飲んだ。ほほが赤く染まっているのは酒のせいではないだろう。
「妬きましたよ、すごく……悩みました」
愛莉は刺身をひときれパクリと食べてつぶやく。
「……済まなかった。埋め合わせするから、もう抜けようか」
ふたりは箸を置いて席を立つ。蜷川は「ごゆっくり」と言って意味ありげにほほえみ、愛莉たちに手を振っていた。
「っぁ、ンン……ッ!」
ふたたび碓氷の私室のベッドにいた。こんどはたがいになにも身につけていない。愛莉は下肢をつなげて碓氷の太ももに座っていた。
「ああ、そこ……っ! もっと」
「そんなにねだられるとたまらないな。もう出していいか」
「まだ、だめ……っ。 あ、あふっ」
硬直が愛莉の膣肉をえぐる。ギシギシとベッドをきしませながら碓氷は浅い位置での抽送を繰り返す。
「んぁっ、はふ……っ! ん、んん……っ、気持ちいい……っぁ、う」
「このおもちゃと俺の、どちらが気持ちいい?」
「そんなの、決まって……っぁ、やだ……っ! 乳首、ブルブルしちゃ、いや……っぁ、ああんっ!」
碓氷は陰茎のかたちをした先ほどのおもちゃを手に取り電源ボタンを押した。そしてそれを愛莉のふくらみの頂点に押しつけている。振動するソレは桜色のつぼみを硬くしこらせていく。
「アアッ、ン……ッ! もう、だめ……っあ、ひぁっ」
「さっきは俺にまだダメだと言ったくせに。愛莉はワガママだな」
「ひぁぅっ!」
両肩を押されてベッドにあおむけになる。ズンッといっそう深く突き刺さった肉棒がもたらす快感はこのうえない。
「ああっ、いやぁ……ッ! ぁ、ぁふっ」
「ああ、それにしても本当に気持ちがいい。ずっとこうしてきみとつながっていたい」
碓氷は激しく突き込みながら愛莉に覆いかぶさり、唇を押しつけてきた。愛莉もそれにこたえて舌を絡める。
「ん、んん……っ!」
愛莉も願った。込み上げてくる愛しさを胸に、彼との淫らな遊びがこの先もずっと続けばいいと。
前 へ
目 次
次 へ
(ひとりでシてていいなんて言われても、できないよ)
彼の私室とはいえ、先ほどのようにいつ誰がくるのかわからない。そもそもまだ明るい時間なのだ。ひとりエッチをする勇気などない。そうしているうちに小一時間ほどが経った。
「悪い、遅くなった。もうそろそろ宴の時間だ。行こうか」
あわただしく帰ってきた碓氷につれられて部屋を出ることになった。早歩きをする彼のななめ後ろを歩いていると、
「いまからきみを俺の婚約者として親父に紹介するから、そのつもりで」
「……え?」
愛莉はあゆみを止める。いま、ものすごく大事なことを言われた。互いの顔も見ずに。
「え、ええっ!? どういうことですか」
「くそっ、誰がほかの女と見合いなんかするか」
碓氷は不機嫌そうな顔をしてブツブツとつぶやいている。
「諒太さんっ、きちんと説明してください」
「着いたぞ。入れ」
花鳥風月が描かれたひときわ豪華な襖の前で立ち止まった碓氷は愛莉のほうを振り向いてなかへ入るよう促した。愛莉は不満顔のまま彼に従う。
襖のむこうは大広間になっていて、畳の上のローテーブルには刺身や天ぷらなどおいしそうな料理がところせましと敷き詰められていた。ひとはまだまばらで、 愛莉は会釈をしながら碓氷のうしろを歩いた。そして床の間の前の上座に見知った顔を見つけて「あっ」と小さく声を上げる。
「愛莉ちゃん、やっほー」
「え……蜷川さん!? どうしてこちらにいらっしゃるんですか」
「……紹介しよう。俺の父親の諒介と、義母の……名前は、知ってるよな」
黒留袖を着てほほえむ蜷川と仏頂面の碓氷を交互に見つめていると、本社社長で碓氷の父親でもある諒介がこちらをにらんできた。愛莉は萎縮して深々と頭を下げる。
「は、はじめまして! 嶋谷 愛莉と申します」
「きみか、婚約者というのは。ワシは認めんぞ! そんなヒラヒラした服で息子をたぶらかしおって」
頭上から降ってきた声に愕然とする。先ほどいきなり婚約宣言をされて、こんどはそれを認めないと言い渡されてしまった。頭をあげられない。
「……お言葉ですが父上、この服は俺が彼女にプレゼントしたものです。それに、たぶらかしたのは俺だ。誰になんと言われようと絶対に彼女と結婚する。たとえ貴方と縁を切っても」
「あら、まあ」
蜷川は笑みをこらえるように口もとを手で覆った。諒介は眉ひとつ動かさない。
(縁を切るって、そんな……)
愛莉は碓氷の横顔を見つめた。真剣なまなざしだ。
「……よく言った、諒太。お前はワシに対して従順すぎる。そのくらいの威勢がないとな」
コワモテから一転して諒介はニイッとほほえんだ。とたんに彼が白髪まじりのただのおじいさんに見えてしまう。
「え、あの……?」
アタフタしている愛莉を見かねて蜷川が口添えをする。
「やあねぇ、諒介さんたら意地悪しちゃって。安心して愛莉ちゃん。諒介さんは最初からふたりの結婚に反対なんてしてなかったのよ」
父親の言いなりになってばかりの諒太くんにハッパをかけただけ、とつけ加えて蜷川は さも嬉しそうに目を細めた。
広間のなかはガヤガヤと賑わっていた。五十人ほどのひとびとが座して語り合いながら酒をあおっている。ななめ前に座る碓氷の両親に聞こえないよう、愛莉は小さな声で彼に話しかける。
「どうして もっと早く教えてくれなかったんですか、蜷川さんがお母さんだってこと」
「言っておくが義理の母親だ。蜷川というのは旧姓。彼女の指示でそういうふうに呼んでいる」
「質問に答えてください、諒太さん」
「……ヤキモチを妬かせたかっただけだ」
ポツリと小さな声で言って、碓氷はきまりが悪そうに焼酎をひとくち飲んだ。ほほが赤く染まっているのは酒のせいではないだろう。
「妬きましたよ、すごく……悩みました」
愛莉は刺身をひときれパクリと食べてつぶやく。
「……済まなかった。埋め合わせするから、もう抜けようか」
ふたりは箸を置いて席を立つ。蜷川は「ごゆっくり」と言って意味ありげにほほえみ、愛莉たちに手を振っていた。
「っぁ、ンン……ッ!」
ふたたび碓氷の私室のベッドにいた。こんどはたがいになにも身につけていない。愛莉は下肢をつなげて碓氷の太ももに座っていた。
「ああ、そこ……っ! もっと」
「そんなにねだられるとたまらないな。もう出していいか」
「まだ、だめ……っ。 あ、あふっ」
硬直が愛莉の膣肉をえぐる。ギシギシとベッドをきしませながら碓氷は浅い位置での抽送を繰り返す。
「んぁっ、はふ……っ! ん、んん……っ、気持ちいい……っぁ、う」
「このおもちゃと俺の、どちらが気持ちいい?」
「そんなの、決まって……っぁ、やだ……っ! 乳首、ブルブルしちゃ、いや……っぁ、ああんっ!」
碓氷は陰茎のかたちをした先ほどのおもちゃを手に取り電源ボタンを押した。そしてそれを愛莉のふくらみの頂点に押しつけている。振動するソレは桜色のつぼみを硬くしこらせていく。
「アアッ、ン……ッ! もう、だめ……っあ、ひぁっ」
「さっきは俺にまだダメだと言ったくせに。愛莉はワガママだな」
「ひぁぅっ!」
両肩を押されてベッドにあおむけになる。ズンッといっそう深く突き刺さった肉棒がもたらす快感はこのうえない。
「ああっ、いやぁ……ッ! ぁ、ぁふっ」
「ああ、それにしても本当に気持ちがいい。ずっとこうしてきみとつながっていたい」
碓氷は激しく突き込みながら愛莉に覆いかぶさり、唇を押しつけてきた。愛莉もそれにこたえて舌を絡める。
「ん、んん……っ!」
愛莉も願った。込み上げてくる愛しさを胸に、彼との淫らな遊びがこの先もずっと続けばいいと。