あいまいな恋の自覚 ~鬼畜な御曹司と淫らな遊び~ 《 26

例年なら年末年始は実家へ帰省する。ところが今年は違う。婚約者の実家に寝泊まりすることになったのだ。

「あのう、諒太さん。まだ結婚もしていないのに本当にいいんでしょうか」

仕事納めの翌日、愛莉はボストンバッグを肩にかけて諒太の実家をおとずれていた。ここにくるのは彼の父親の誕生会 以来だ。廊下はあいかわらず長い。改築でもしない限り廊下が短くなるなんてことはないから、当たり前だ。

「なにも問題ない。……だいたい、きみと一週間も会えないなんて考えられない」

最後のほうはボソリとつぶやきながら、諒太は愛莉が肩にかけていたボストンバッグを もぎ取った。
愛莉は頬を赤らめながら「ありがとうございます」と言ってうつむく。

(最近の諒太さん、嬉しいことばっかり言ってくれるんだよね……。でも、照れる)

愛莉はうつむいたままパタパタと片手で顔をあおいだ。

「なんだ、暑いのか? だったら……部屋に着いたらぜんぶ脱げ」

「なっ、なんでそうなるんですか! もう……」

そうしているうちに彼の私室へ到着した。ぜんぶ脱がされてしまうのかと思ったけれど、そんなことはなかった。それよりもいまは、部屋の隅の机のうえにわざとらしく広げて置いてある雑誌のほうが気になる。

「諒太さん、これ……読んでたんですか?」

「ああ……。蜷川さんが勝手に持ってきたんだ」

結婚式場の情報誌にはところどころふせんがしてあった。机の端には同じ色のふせんの束があるから、きっと諒太が自分でチェックしたのだろう。

「それで、どの式場が気に入ったんですか?」

愛莉は雑誌を両手に持ってニヤニヤしながらベッドに腰をおろした。諒太は「べつに気に入ったところなんてない」と小さな声で言いながら愛莉のとなりに肩を寄せる。

(こんなにたくさんふせんを貼っておいて、よく言うなぁ)

ふせんのページをしげしげと読み込む。すると諒太は愛莉のひざのうえに頭をあずけてきた。ひざまくらは彼と一緒に住んでいる家のリビングでもよくしている。

「新婚旅行もかねて、海外挙式でもいいかと思ってるんだが……どうだ?」

「海外だなんて、ぜいたくですね。あ……でも、グアムだったら わりとお手頃」

海外ウェディングの特集ページを見ながら愛莉は心を弾ませる。ひざのうえには諒太の頭があるから、いまは雑誌を目の前に両手で広げている格好だ。

「よし、ではグアムに決めよう」

「えっ、もう決めちゃうんですか? もうちょっとよく考え……っ、ちょ、諒太さん!」

下から伸びてきた手がふくらみをフニフニと揺さぶる。愛莉の両手は ふさがっているから無防備だ。胸もとにダマスク柄のラインが入ったセーターは揉みくちゃにされて模様がさまざまに変化している。

「も、やめ……っぁ、んん……っ」

秘部がうずき始めてしまったそのとき、

「愛莉ちゃん、諒太くーん。いまちょっといいかなー?」

お約束というか、またしても部屋の外からふたりを呼ぶ声がした。

「……監視カメラでも仕掛けられてるんじゃないだろうな」

諒太は自分の部屋をぐるりと見渡しながら、面倒くさそうにのそりと身体を起こした。

私室でくつろいでいたふたりに声をかけたのは蜷川だった。愛莉だけが彼女の部屋へと招かれた。
蜷川の部屋は諒太の私室からさらに奥まったところにあって、造りは諒太の部屋と変わらないけれど、板貼りのうえには高級感のある花柄のカーペットが敷かれているから、それだけで印象がだいぶん異なった。

「わあ、素敵な振袖ですね」

畳のうえには桐箪笥とそれから衣紋かけがあった。梅と御所車の華やかな振袖はきわだって目を引く。

「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいわ。ねえ、愛莉ちゃん。この振袖、お正月に着てもらえない?」

「え……っ、いいんですか? でも、蜷川さんのほうが断然お似合いになると思います」

「やあね、私はもう結婚してるし歳も歳だから振袖なんて着れないわよ。さ、ちょっと試しに着てみましょう。脱いで脱いで」

「わわ……」

着ていたセーターをめくり上げられ、ほかの衣服もどんどん脱がされていき、愛莉はされるがままだった。
着替えを終えた愛莉は小さな歩幅でゆっくりと歩きながら諒太の部屋へ戻った。そっと障子を開ける。

「……なんだ、そのかっこうは」

諒太はキツネにつままれたような顔をして黙り込み、そのあとにようやく発したのがさきほどのひとことだ。

(どうしよう……。いきなり振袖なんか着てきたら、そりゃ驚くよね)

もう少し気の利いた言葉をかけてくれてもいいのに、と不満に思いながら愛莉はうつむきかげんに口を開く。

「これ、お正月用の振袖なんですけど……蜷川さんに着つけてもらったんです。……変、ですか?」

「……変だ」

久しぶりにこたえた。彼がなにごともハッキリと言うタイプだというのは知っていた。けれどもう少しやわらかく言ってくれてもいいのに。自分から尋ねておきながら愛莉は思った。

「あ、そ、そうですよね……。すぐ脱ぎます」

モタモタと帯に手をかける。すると諒太は書斎の椅子から立ち上がって足早に近づいてきた。

「眼鏡はかけないほうがいい」

赤縁眼鏡を取り上げられる。諒太はそれを白いシャツの胸ポケットにしまった。

(なっ、眼鏡フェチの諒太さんが……!)

愛莉は思わず顔をほころばせた。

「……眼鏡なしの私でも、いいんですか?」

愛莉の言葉に、諒太はバツが悪そうに視線を泳がせた。ぽりぽりと頬をかいて口をひらく。

「……散歩にでも行こうか。天気もいいし」

「あ……でも、眼鏡がないと私、本当にまわりが見えなくて」

「……だったらこうしておいてやる。行くぞ」

これまでなんども身体の内側をつなげてきたのに、どうしてこれだけでこんなにもドキドキしてしまうんだろう。
愛莉はひっぱられるようにして諒太の後ろを歩く。
彼の手はゴツゴツしていて少し乾いていて、けっしてにぎり心地はよくない。けれどとても温かかった。
手をつなぎながら庭へ出たふたりはしばらく広い庭を散策していた。12月のわりには暖かいぽかぽか陽気だ。

「本当に広いお庭ですね」

「そうだな。子どものころは要とふたりでよく探検していた。迷子になることもあったな」

「諒太さん、じつはけっこう方向オンチですもんね」

「……否定はしない」

いつだったかふたりで会社の近くの公園に行ったとき、彼は出口がわからず右往左往していた。完璧そうに見えてそういうところがあるから、なんだかかわいらしく感じてしまったのだった。

「ふふ、諒太さんてば――……っきゃ」

彼のほうを見上げながら話をしていたからか、なにもないところでつまづく。とっさに彼が身体を支えてくれたから、振袖は汚さずに済んだ。

「少し休もうか」

大きな木のしたまで手を引かれて歩く。

(休むもなにも、座るところなんてないのに)

そんなことを考えながらついて行くと、両肩をつかまれて木の幹に身体を押しつけられた。

「諒太さん?」

こもれびが彼の顔を優しく照らしている。

「……愛莉」

風が吹き抜ける。唇が重なる。はじめは穏やかだったのに、諒太の口づけはだんだんと官能的になっていった。

「ん、んく……っ。諒太さん……っぁ。だめ、です……!」

彼の手があやしくうごめきはじめる。着物の裾をかきわけて太もも這っているのだ。かたく閉じていた脚のつけ根を親指で刺激される。

「こんなに艶かしい格好をしているんだ、しかたがないだろ」

「な、艶かしいって……。ぁ、んぅぅ……! あの、せめて部屋に戻ってからに……。着物が汚れちゃいます」

「そんなに待てるわけないだろ。汚れないようにきみが手で持っていればいい」

「んぁぅ……」

諒太はかたく勃起した男性器を愛莉の太ももに押しつけながら秘部を指でこじあけた。ショーツの端から指を入れられ、愛莉はつまさき立つ。
蜜はすでに外へ漏れ出しはじめていた。愛莉は仕方なしに着物の裾を両手で持つ。

「ああ、とてもいい。そうやって自分で裾を持ち上げている姿はそそられる。それに、この髪型も……うなじが綺麗だ」

「は、ぁ……ん」

髪の毛は蜷川にまとめあげてもらっていた。器用なもので、着つけと髪の毛のセットをあっという間に仕上げてしまったのだ。普段から美容に気をつかっているからか、彼女はじつに多彩だ。

「あっ、あん……っ!」

考えごとをしていると、諒太にやや荒っぽく割れ目をえぐられた。俺に集中しろ、と言わんばかりだ。小さな豆粒は突然、押しなぶられていっきにふくらみを増す。

「ん、ぁ……っ、あ、うぅ……!」

「こんなにあふれさせて……俺の指がふやけてしまう」

粘液はつぎからつぎにあふれて彼の指を濡らす。この蜜は自分ではコントロールできないから、恥ずかしいけれどどうしようもない。

「だって、諒太さんが……。さわるから……っぁ、あう」

「さわるのがダメならこうしようか」

彼はニイッとほほえんでゆるゆると下降し、芝生のうえにひざをついた。愛莉は急にこころもとなくなって声を荒げる。

「やっ、諒太さん、だめです……! こんな、だれかに見られたら……っ」

さきほどまでは彼の身体が盾になっていたから、よほど近くに寄らなければなにをしているかはわからなかっただろう。けれどいまは違う。
地面のうえにひざまずいた諒太は愛莉のショーツをひきずりおろして秘部を口に含もうとしていた。

「顔、真っ赤だぞ。興奮してるのか? べつにだれかに見られてもいいじゃないか。愛莉の大切な部分は俺にしか見えない」

「ひぁっ、ぁ……アッ……!」

太ももの内側に流れた愛液をツツツと舌でたどって舐めあげながら諒太は蜜の出どころに触れた。舌で蜜口をひらかれ、快感で脚が震える。

「や、ぅ……。ぁ、んぁっ……!」

膣口のうえにある陰核はふくれあがっていて、そこを諒太は両方の親指ではさみ込んだ。指どおしを擦りあわせるような動きがたまらなく気持ちいい。

「諒太さん……っ、もう、だめです……! そろそろ……」

こんなところでは落ち着かないから、部屋に帰ってから続きをしてもらいたかった。そう告げようとしていたら、

「なんだ、もう我慢できなくなったのか?」

陰部をレロリと大胆に舐めあげて、諒太はすっくと立ち上がった。こちらがなにか言うまえに、察してくれたのだと思って愛莉は顔をほころばせた。

「え、え……っ!? 諒太さん、ちょっと待って……っぁ、あ」

うしろを向かされ、木の幹に両手をつく。着物の裾はさらにめくりあげられ、お尻が外気に触れる。
真冬だから、こんなかっこうをしているとさすがに寒い。けれどすぐに熱いモノが身の内に押し込められる。

「りょ、た、さ……っ、だめ……っ! 部屋に、戻ってから……っぁ、あん!」

「わかったわかった、部屋に戻ってからもタップリかわいがってやるから」

諒太はうしろから激しく突き込みながら愛莉の耳もとでささやいた。彼の右手が着物のえりあわせに伸びる。

「ち、ちが……んぅ、うぁっ」

きゅうくつなえりもとを強引にひらいて、彼の手が乳房に触れる。ブラジャーはつけていなかったから、すぐに乳首をとらえられて愛莉は悶えた。

「……きみの乳房が見たい。帯、ゆるめてもいいか」

「だっ、だめに決まってるでしょう……っ!?」

もしかしたらいまだってだれかに見られているかもしれない。帯をゆるめたりしたらよけいに着物が乱れるから、肌の露出がふえてしまう。愛莉はふるふると頭を横に振った。

「……けち」

不満げな声がボソリとつむがれる。すると急に律動が荒々しくなった。

「あっ、ああ……! っや、ァァ……ッ!」

愛莉のはしたない喘ぎ声が、真冬の静寂な日本庭園に高らかに響いた。

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