伯爵ときどき野獣 《 番外編 04

「んぁっ! あ……っ。う、ぅ」
 夜とはいえ、メイドや執事たちはまだ仕事をしている時間だ。ここはテラスなのだから声を抑えなければと、そう思うとよけいに漏れ出てしまう。蜜があふれるのを止められないのと同じだ。
 フレデリックの舌先が乳首を執拗にくすぐる。いっそ貪りついて、強く吸い上げてくれればいいものを。
 クレアは「はっ、ぅぅっ」と短く喘ぎながら銀髪を見おろした。上目遣いでこちらを見上げていた彼と視線が絡む。にいっと意地悪くほほえまれた。やはりわざと焦らされている。
「っ、ずるい、わ……。フレデリック……!」
「ん? ああ、俺ばかりワインをあおっているのが気に入らないのか。ではきみも飲め。年代もののワインだから、うまいぞ」
 とぼけたようすでそう言って、フレデリックはグラスのワインをいっきにあおった。
「ふっ……!」
 勢いよく唇をふさがれ、苦味の強いワインが流れ込んでくる。ごくんとそれを飲み込むやいなや、今度は生温かい舌が口腔で暴れ始めた。湿った乳首はあいかわらずゆるやかに愛撫されている。
「んっ!? ふ、んぅぅっ」
 指とは違うものがふくらみの先端に押し当てられている。フレデリックは空のワイングラスをクレアの乳首に押し付け、グラスのステムを指でころころと転がしている。ぴちゅっ、と水音を立てて舌が引き抜かれた。
「やっ、やだ……! やめて、フレデリック」
「なぜ? グラスごしに見るきみの乳首も素敵だ」
 透明なワイングラスに押しつぶされた乳首は乳房のなかに沈み込んで平べったくなっている。どこか「素敵」なのかさっぱりわからない。
「とにかく、やめて……。いけないことをしている気になる」
「いまさらだな。テラスの柵に身体を縛られている状況がすでに『いけない』ことだよ、クレア」
「っや……!」
 乳首をグラスで押しつぶすのはやめてくれた。しかし次はふちだ。華奢なグラスのふちでふくらみの先端をもぎ取るようにえぐられている。
 何度も何度もそうして弾かれ、もうこれ以上ないというくらいに乳首は硬くしこっている。そうなることで、いっそう刺激が顕著になっていく。
「すごいな、下は大洪水だ。すくって飲んでみよう」
「なっ……!?」
 いまのフレデリックはなにを言い出すのかまったく予想がつかない。隠しようのない花唇にグラスを当てられ「ひっ」と短く喘ぐ。グラスのふちは蜜口ではなく肉粒をぐにゅぐにゅとさいなむ。そんなことでは蜜などすくえるはずがないが、彼の真意はそこではないだろうからあえて言及はしない。
「今日のあなたはへんよ……。んっ、ぁぅっ」
「……そうだな。疲れているのかもしれない」
 ひとごとのようにつぶやき、さらにきゅうっとグラスで花芽を押す。
「ぃっ、あぁ……! や、ぅ……っ!」
 縛られている足先や手の先がじりじりと熱くなってくる。いじられている箇所はわずかだというのに、ふだんよりも感じている気がする。クレアは恥を捨ててねだる。
「ちゃんと、さわって……。お願い……っふ、ぁ」
 彼女がそう言い終わるなりフレデリックは手にしていたグラスを無造作に投げ出した。かろうじて割れることのなかったグラスはごろごろと転がり、柵下の溝にはまり込む。彼の指も同様だ。
「ああっ! う、んぁっ……ん、んっ」
 フレデリックはずぷりと中指をクレアの濡襞に押し込み、いっきに最奥を穿った。ずん、ずんっと規則的にリズムを刻んで内奥をしたたかに翻弄する。

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