伯爵ときどき野獣 《 番外編 05

「んっ、ンン」
 唇を覆われ、舌が割り入ってきた。受け入れるように積極的に絡める。いつもされるがままだから、たまにはこちらからも攻めたい。ちゅうっと彼の舌を吸うと、乳首を撫でつけていた指がわずかに震えて動きを止めた。しかしすぐに、猛攻される。
「ふっ、ぅぅ!!」
 蜜襞を押し広げるように指がうごめき、尖りきった乳嘴はこりこりと強くなぶられて柔肉に沈み込む。絡め取られている舌は、もはや自分の意思ではまったく動かせない。互いがひどく淫蕩な息遣いをしていた。
 ふたりがいるこの場所だけ空気が薄くなっているのではないかと思ってしまう。喘ぎながら口付けているせいで酸素が足りない。
「く、ぅっ」
 唇が離れたすきに大きく息を吸い込んだ。せわしなく上下する胸にフレデリックは顔をうずめ、先端を食む。もう片方は変わらずくにくにと指でこねくりまわされている。
 柔らかな銀髪が肌に触れてくすぐったい。どうしてかいま熊型の彼が脳裏をよぎった。蜜肉に埋められている指が獰猛に暴れまわり、ぷっくりとふくれて充血している肉芽にまで指が及ぶ。親指でねんごろに押しつぶされている。
「ああっ、ぁ、ぅ――!!」
 ぴちゃぴちゃと乳頭をなぶる音、それから蜜壷のなかをかき乱すぐちゅぐちゅという音とともにクレアはびくびくと下肢を震わせた。
「……もう達してしまったのか」
 気のない声だった。クレアのなかからずぷりと指を引き抜いたフレデリックは糖蜜でも舐めるかのようにぬめった指に舌を這わせ、それからおもむろに紐の端を手にした。
「そろそろ体勢がきつくなってきたんじゃないか?」
 無言でこくりとうなずく。足首の紐がほどかれ、乳房を上下に挟んでいた紐も拭い去られた。すべてほどいてくれると思ったのに、手首に巻き付いている部分だけはそのままだった。
「さて、これからどうしたい?」
「……っ」
 なかば無理やりに、裏庭をのぞむ方向に立たされた。手首から伸びる長い紐が股を通って前へやってくる。
「あっ、なにす……っ、や、いや」
 くんっ、と強く紐を持ち上げられれば、秘裂に沿って這う紐が花芯を甘く刺激する。それだけならまだしも、持て余る長い紐はふくらみのいただきをもこすり立てる。達したばかりでどこもかしこも過敏になっている。柔らかな紐が触れるだけで、腰がいやらしく揺り動いてしまう。
(これからどうしたいかと彼は訊いてきた――)
 クレアは吐息まじりに喘ぎながら懇願する。
「そんな、細いのじゃ……っん、いや……。あなたの、大きいのを」
 くださいと言うのと、肥大した剛直にうしろから貫かれるのは同時だった。クレアがねだるのをいまかいまかと待ち望んでいたに違いない。
「アアッ! っぅ、んぁぅ……!」
 挿入の衝撃でびくりと肩を震わせてつま先立つ。雄芯はすぐに最奥まで達した。異物をくわえこんだ蜜道がさらなる愛液を噴き出して律動を助ける。
「ああ、今日は一段と凄まじい締め付けだ……。やはりきみは外でするほうが好きなんだな?」
「ち、ちが……っ、う、うぅっ」
 否定はしたものの、自分自身がそれに疑問符を打つ。汗ばんできた身体を乾かすように吹き抜ける夜風が気持ちいいからだ。彼が言うとおり、本当は外でするのが好きなのかもしれないと思えてくる。
 ぐんっ、といっそう腰を引かれた。上体が低くなり、乳房の先端がテラスの柵に当たる。クレアは「んんっ」と瞬時に喘ぐ。
「なんだ、みずから柵に乳首をこすりつけて愉しんでるのか。淫乱になったな、クレア」
 セミロングの金髪をぶんぶんと横に振って彼の言葉に対抗する。
「そんなにやっきになって否定しなくてもいい。俺はどんなきみでも心の底から愛している。むしろ愛しすぎて――」
 ぎちっ、とクレアの内壁がきしむ。肉竿がいっそう大きくなったような気がした。
「ふぁっ……! う、んくっ」
 がつがつと勢いよくうしろから突かれ、身体が柵に密着する。いつもなら、こういう体位のときは両手で自身を支えるのだがいまは背中で縛られているから、柵で支えるしかない。胸のうえで丸まっていたネグリジェとシュミーズが、振動で落ちてきた。
 クレアが転落するかもしれないと危惧したらしいフレデリックの腕が彼女の身体にまわり込む。わずらわしいと言わんばかりに、胸に覆いかぶさる衣服をふたたび押し上げて乳房ごとつかむ。もう片方の手が、つながっている下肢の付け根をもれなくまさぐる。
 こうしてうしろから突かれながら花芽と乳首をいじられるのはクレアの好むところだ。そんなふうにしたのはまぎれもなくフレデリック。
「はあ、熱い……。きみのなかは焼け焦げているようだ」
「っ、それ、は……ぁっ、わたし、も……!」
 彼とまったく同じ体感だ。いつになく乱暴にかきまわされているせいか、媚壁は肉茎を力いっぱいくわえ込んで放そうとしない。少しはなかをゆるめて休憩したいのに、ふくらみのいただきと下半身の淫芽をこりこり、ぐりぐりといたぶられるせいで息つくいとまがない。

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