般若部長の飼い猫 《 第十二話  子猫のいない夜

子猫は見つからないまま、理沙はひとりで部長の寝室にいた。

(きらら……こんな雨のなか、どこにいるの……?)

ベッドに腰かけて、理沙は街灯がわずかに差し込む薄暗い寝室で自身の太ももを見つめていた。
ザアーッと、雨とシャワーの音が断続的に響いている。
しばらく呆然としていた理沙だが、しだいにこの状況に疑問を持ち始めた。

(アレ、私……何で部長の部屋のお風呂を借りて、しかも部長のシャツまで着ちゃってるんだろう。下着、履いてないし……っ!)

ガチャ、と部屋の扉がひらいて部長が入ってきたのだが、理沙はその格好に目を丸くした。
バスタオルを腰に巻いただけの彼は、あいかわらずの無表情で近づいてくる。
特にスポーツをしているというわけでもなさそうなのに、上半身は引き締まっていてたくましく、男らしさを感じずにはいられない。薄暗闇といえど直視できずに目を逸らしてしまった。

「あっ、あの、私……もう一度きららを探しに……ひゃっ」

「頭、まだ乾いてないじゃないか。風邪ひくぞ」

部長はとなりに腰かけ、理沙が肩にかけていたバスタオルを手に取り背中から抱き込むように腕をまわして頭を拭き始めた。

「あ、の……部長……。きらら、いなくなって、寂しい……ですよね……?」

「ああ……」

「っ、ごめん、なさ……」

「慰めてくれ、理沙が」

急に名前を呼ばれ、新鮮さを感じるいとまもなく部長は理沙の胸をうしろから抱え上げるように両手で覆った。

「あ……部長、待って……んっ、あの……よ、夜ご飯は」

「先にお前を食わせろ。流石にこれ以上おあずけされてはたまらん」

「おあずけって、そんな……っあ、や……んっ!」

「何だ、頭だけじゃなくてここもずぶ濡れじゃないか……理沙」

くちゅり、くちゅりと彼の指が蜜口をえぐる。部長の裸を見たときから理沙の秘所は蜜を噴き出していた。

「俺の名前、知ってるか? 般若でも部長でもないぞ」

「あ……っぁ、ゃあ……っんん、んう!」

ドサリとベッドに押し倒されて、部長は理沙に馬乗りになった。
流れるような手つきでシャツのボタンをはずされる。屹立きつりつしたふくらみの頂点を、舌で突つかれている。

「理沙、喘いでないで答えろ」

「んっ、だって……ぶちょ、そこばっかり……あっ、やだ、おかしくなっちゃいそう……ンンッ!」

「名前を呼ばないと本当におかしくするぞ」

「あ、あぁぁっ! ……ひぅ、ぅ……ぁん!」

肉壁を突く指の動きはますます速くなって、同時に花芽をなぶる指にも力が込められたのがわかった。
ふくらみの先端からも水音がするほどに舌で吸い上げられて、下半身は瞬く間にビクンビクンと至高を味わってしまった。

「まさか俺の本名を知らないのか? ダメな部下だ」

「ちがっ、ちゃんと知って……え!? あ、やだ、そんなとこ舐めちゃ……っや!」

部長の名前は知っている。けれど気恥ずかしくて呼べないでいると、部長は理沙の脚を両手で大きくひらいて付け根に顔を寄せた。
ツンッと舌先で敏感な突起を探られ、名前を呼ぶどころか息をするのも苦しくなってきた。

「どうした、どこもかしこも汗ばんでるぞ。暑いのか?」

「ふぅっ、ぅ……んっ、ぁぅん……ッ!」

陰部をさんざん蹂躙したあと、部長は猫が唇を舐めるようにペロリと赤い舌をのぞかせてふたたび理沙に覆いかぶさった。

「自分のがどんな味か、知ってるか」

「知ら、ない……です」

「いけないな、料理をするときはいつも味見をするんだろう? 自分の蜜を知っていなければ」

なんて無茶苦茶なことを言うのだろうと思ったけれど、なにか反論する前に自分の蜜の味とやらを知ることになった。
しかし正直なところ、味なんてわからない。彼の舌があまりに官能的にうごめくから、下半身からは蜜が更に流れ出てしまう。
熱い舌が遠のく。もっと絡めていたいと思ったけれど、彼はもう次の行動に移っていた。
ふたたび両脚を大きくひらかれる。先ほど舐められた秘所に、今度は別のものが入ってくるのかと思うと、とたんに緊張した。

「理沙、楽にしてろ……」

初めて見る男性のそれは想像していたよりも大きくて、こんなものが自分の身体におさまるのか疑問だった。

「あ、ぅ……っや、やぁっ!」

無理、絶対に無理だ。こんなもの、入るわけがない。
理沙はうめきながら、痛みから逃れるように腰を引いた。

「痛いのは初めだけだ。すぐによくなるから……少しだけ、我慢しろ」

部長は理沙の腰を片手で押さえて、いつになく優しくささやいた。
さとすような声音にほだされて、理沙は彼のものを受け入れようと試みるが、痛いものは痛い。

「あっ、あ、いや、痛い……っや!」

おそらくまだほんの少ししか彼の昂ぶったものを含んでいないはずなのに、身を引き裂かれているような痛みが全身を突き抜ける。

「……理沙、あと少しだ」

いやだ、痛い。やはり無理だ。
やめてもらおうと部長の腕をつかんだら、反対に両腕をベッドに押し付けられて、ズンッ、といっきに下半身の異物感が顕になった。

「あああっ! ア、い、や……っう」

「理沙、愛してる」

あまりに唐突だったから、部長がなにを言ったのかすぐにはわからなかった。彼のものがなかに入ったまま、唇まで塞がれる。

「ん、んっ……」

部長はしばらく身体を動かさずに、甘い言葉をささやきながら口付けてきた。普段の彼からは想像がつかないくらい優しくて、しだいに身体は痛みを忘れ始める。

「そろそろ、動くぞ……」

「え、あの……待っ、あ、アアッ!」

小さくつぶやいたかと思うと、部長は身を起こして理沙の両ひざを押さえ、肉棒を前後にゆっくりと揺さぶり始めた。

「は、ぁ……っぅ、ん……あふっ」

なにもかも初めての感覚だったけれど、彼に頭を撫でられながらもたらされる体内の摩擦は水音とともに心地よさを増していった。

「……よくなってきたか?」

「ん、う……ん……あぅッ!」

次の瞬間、それまでのゆるゆるとした動きが一変した。
部長は理沙の両脚を抱え上げて肩に担ぎ、さらに深く男根を押し込んだ。

「ああっ、あ……やっ、ぶちょ、そんな……っんん、んく」

これ以上は進まないであろう身体の最奥を突かれると、全身が粟立つような快感がせり上がってきた。耐え切れずまぶたを閉じると、意識が飛んでいきそうになった。

「ああっ、だ、め……っも、や……あ、アアアッ!」

うっすらと目を開けると、彼の額からも汗が流れ落ちているのがわかった。それを見て、理沙は嬉しくなった。
いつも無表情な部長の違う面を知れたからだ。
そう思った矢先、外の雨音に負けないくらい律動による水音は激しくなって、初めてだからよくわからなかったけれど、たぶん同時に、ふたりは絶頂した。

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