般若部長の飼い猫 《 第十三話  愛してるの解釈

理沙は部長の寝室で雨音を聞きながらまどろんでいた。
全身が気だるくて、動きたくない。部長はというと、ふたりで達したあとしばらくは寄り添って理沙の頭を撫でていた。しかし例のごとくお腹が鳴ったから、なにか用意すると言ってルームウェアのTシャツとスラックスを着て部屋を出て行ってしまった。

「できたぞ」

黒縁眼鏡をかけた部長が顔を出す。理沙は「ありがとうございます」と力なく言ってベッドを出た。着替えは持ってきていないので、ふたたび部長のワイシャツを借りた。
ダイニングテーブルに置いてあったのは、カップラーメンだった。予想はしていので、文句は言わず椅子に腰かけた。
そういえば、部長の部屋で食事をするのは初めてだ。
カップラーメンをすすりながら、正面に座る部長をチラリと見た。黙々とトンコツ味のラーメンをすすっている。
先ほどまであんなことをしていたのに、部長はすっかりいつもの調子だ。

(……気まずい)

ふだんはきららがいるから、沈黙はそれほど気にならないのに。
なにか話題はないかなと探す。

「あの、部長……愛してるって、本当ですか」

「何でそんな事を聞くんだ」

「や、私をなだめるために言ったのかなって思って」

「好きに解釈していい」

「えっ、どういう意味ですか!?」

理沙は箸を止めて身を乗り出した。期待していた答えとは違う。

「……愛してる、という言葉にほかの意味なんてないと思うが。なんだ、もっと言ってもらいたいのか? 手のかかる奴だな」

部長はそう言って笑った。黒縁眼鏡をかけているからか、別人のように見えた。
あいかわらずの憎まれ口だけれど、彼のほほえみはとても柔らかくて、いつまでも見ていたくなる。
理沙はなにも言えずうつむいて、遅い夕食を再開した。

簡素な食事を終えたふたりは、リビングのソファに座ってお土産のパイを食べていた。

「きららがいないと、やっぱり寂しいですね……」

理沙は言って、後悔した。灯りが消えてしまった路地裏のような虚しさが漂ってしまったからだ。

「そうだな……寂しい」

部長はパイを食べるのをやめて、眼鏡をテーブルに置いて理沙のひざのうえに寝転んだ。

「部長……ごめんなさい」

「ところで……そうだろうとは思ってたが……お前、処女だったんだな」

突然、話題を変えられて、理沙は拍子抜けした。いきなりそんなことを言われるなんて思ってもいなかった。彼なりに気を遣ってくれたのかもしれないけれど。

「わ、悪かったですね! 初めてで……」

「いや、仕込みがいがあっていい」

挑発的にほほえみながら見上げられて、理沙はますます顔が熱くなった。

「もうっ、部長は何でそう……」

「理沙、いい加減に俺の名前を呼べ」

「知りません! 部長の名前なんか」

「呼ばなかったら、そのたびにいじるぞ」

部長は仰向けの状態から横になって、理沙の股間に手を滑り込ませた。

「っ、やだ、部長……っぁ!」

「なんだ、そんなにいじられたいのか」

下着は身につけていないから、彼の手はすぐに割れ目をとらえた。こんな格好で平然としていたことにいまさらながら恥ずかしくなった。

「もうこんなにとろけさせて……いけない子だ」

「あっ、んぅ……や、あふ……っ」

急に子ども扱いされて憤慨する間もなく、部長は蜜口を親指でなぶりながらワイシャツのなかに強引に手を入れ、ふくらみをまさぐった。

「や、だ、こんな明るいところで……あっ、ぅん!」

「安心しろ、眼鏡をはずしてるからよく見えない」

「ほ、ほんと……? んんっ、あ……ッ!」

見えないというわりには部長は的確に下半身の豆粒を指でつまんでこねくりまわしている。

「や、あ……っ、ん、うそ! 見え、てる、んでしょ……? や、恥ずかし……っん!」

「……ではうしろを向け。そうすれば恥ずかしくないだろう」

言われるままに理沙はソファの背に手をついて彼に背を向けた。すると部長がソファからおりて理沙の腰を抱えるように引いた。

「ひゃっ」

体勢を崩して座面にうつ伏せになる。両ひざは床についている。

「あの、なにす……っあ、やぁッ!」

グチュッと大きな音がして、彼の指が勢いよく秘部へ入ってきた。

「可愛い尻だな」

「あっ、やだ、揉まな……いっ、ぁ、ううっ!」

「理沙は『嫌』ばかり言う。素直に『もっと』と言えないのか?」

片手でお尻をグニャグニャと揉まれ、指の動きは加速している。部長の顔は見えないけれど、理沙の身体をいじるときにどんな顔をしているのかはわかるようになったから、想像がつく。

「それにしても濡れてるな……。指が二本、入ってしまうぞ」

「えっ? や……ああっ、ア……ッ!」

指は吸い込まれるように体内に入った。快感は高まるいっぽうだ。

「あ、アアッ、んぅぅ……ッ!」

「……もうイッてしまったのか。ダメだな、もっと耐性をつけないと」

先ほどの彼の言葉を思い出した。仕込みがいがあるって言っていたけれど、あれは決して冗談ではないらしい。
達してしまったあと、途端に眠気が襲ってきて、理沙はまぶたを閉じかけていた。
しかしすぐに現実に引き戻された。彼の大きな陰茎がふたたび身体を貫いたからだ。

「あっ、んくっ、うう……っ!」

「まだ寝るなよ。俺はまったく眠くないんだ。理沙のみだらな姿がもっと見たい」

ゆるく着ているワイシャツのあいだを縫って部長の手がふくらみをわしづかみにした。
うしろから突かれると、先ほどよりもさらに深く彼の肉棒が当たっている気がした。痛みはないけれど、あまりの快感で意識を保っているのがつらい。

「部長、もう……、あっ、んっ、アアッ!」

「可愛い声で呼ぶな。すぐに出してしまいたくなるだろ。このぶんじゃ名前を呼ばれたらあやういな……」

最後のほうに彼がなにを言ったのか、理沙は聞くことなく快楽に溺れてまぶたを閉じた。

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