ひきこもり令嬢は囚われの貴公子に溺愛される 《 第二章 囚われの貴公子は自由奔放 14

「……マレット男爵のことが好き?」
 眉間には深くしわが寄っている。
「好きな、ひとなんて……いない。……んっ!」
 きゅっ、と乳頭の根もとを強く挟まれた。ぴりっ、と体のなかにスパイスを入れられたような心地になる。
「それじゃあ、僕にこうしてさわられるのが、たんに気持ち悪いってこと?」
 オーガスタスの表情がひどく陰った。
 彼はこれまで他人に拒絶されたことがあるのだろうか。
 だからいま、こんなにも泣き出しそうな顔をしているのだろうか――。
「気持ち悪くなんかない」
 むしろその逆だ、と言ってしまいそうになり、あわてて口もとを押さえて咳払いをする。
「とにかく、あなたがどうこうって話じゃないの。私たち、なんでもないんだから……。こんなこと、おかしいわ」
「なんでもない、か。たしかに……そうだけど」
「ひゃっ……!」
 つんっ、と両方の乳頭を指で弾かれた。身をよじって前を隠そうと試みるが、乳房ごとソファに体を押し付けられているから動けない。
「いい手ざわりだ」
 嫌がる素振りをみせるリルなどおかまいなしにオーガスタスは乳首の根もとを指でこすり立てる。
 先ほどのリルの言葉をうのみにしているのだろう。すっかり自信を取り戻したようすで彼女の薄桃色をくにくにといじっている。
「嫌だ、って、言ってるのに……!」
 恨みがましく彼を見上げる。白金髪の男は小首を傾げてほほえむだけ。乳首をこねくりまわすのをいっこうにやめない。それどころかエスカレートしていく。
「ねえ、この美味しそうなイチゴ……食べてもいいかな」
「だっ、だから……! ひとの話、聞いてた?」
「聞いてたけど……やめられない。リルがかわいいから」
 彼の色っぽい唇が大きくひらく。リルはいよいよあせる。
「やっ、いや……!」
 両手をソファに縫い付けられた。体をくねらせるが、先端は揺れるばかりで隠せはしない。
 尖った先端を、意図せずなまめかしく揺らすリルの姿はオーガスタスの加虐心をあおる。火に油だ。
「ああ、たまらない――」
 ぽつりと、つぶやき声が聞こえた。
「ひっ、あぁぁ!!」
 左の乳頭を生温かい舌が舐め上げた。
 初めての感覚に、リルは卒倒しそうになる。恥ずかしいのと、それから認めたくはないが気持ちがよくて、下半身のある一点がひくひくとうごめく。
「気持ちいいみたいだね? もっと舐めてあげる」
「なっ、もう、だめ……!」
「いやだ。ほどよくコリコリになってて、舐め心地がいい。どこまで硬くなるか試してみたい」
 そんなことは試さなくていいと、告げることができなかった。
「ああっ、う……っ」
 時を刻むように一定してれろり、れろりと乳首を根もとから舐め上げられる。
 彼の言うとおり、先ほどよりもいっそう硬くしこってきたのが自分でもわかる。
「やっ、うぅ、ん……!」
 紅い瞳を細めて白金髪を見おろす。ふと目が合ってしまい、思わず逸らす。彼の鮮彩で挑発的な上目遣いを、見ていられなかった。
 オーガスタスはリルを攻めるのをやめない。
「ふぁっ、あああ!」
 舌が蛇行した。森で遭遇した蛇が茂みに去っていくさまを思い出した。
(いやだ、こんなはしたない声……!)
 ぎゅうっと唇を引き結び、なまめかしい声を漏らさないように耐えるが、オーガスタスの舌がふくらみのいただきを左右に激しく行きかうせいで、淫蕩な声があふれてしまう。
 出したくないのに、止められない。吐息と声を制御できない。
「やぁっ、あ、うっ……! ん、ふぅっ」
 まだ陽も沈まないうちからこんなことをしている背徳感と、なんでもない関係なのに、という道徳心がリルをさいなむ。
 それでも溺れてしまう。上半身のつぼみを舐めしゃぶる舌が巧みなせいで、込み上げ渦巻く快感をとても抑えられない。
「んぅっ……」
 ちゅぽっ、と淫猥な水音を発しながらオーガスタスが顔を上げた。
「こっちもさわっていい?」
 濡れた乳首に吐息がかかり、身震いしてしまう。彼の言う「こっち」がいったいどこなのかわからずにいると、オーガスタスは手でそこを示した。

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