ひきこもり令嬢は囚われの貴公子に溺愛される 《 第三章 勘違い 07

 じらされているのだと、このときのリルは気がついていなかった。
(もっと強く……して欲しい)
 喘ぎながら指をくわえて白金髪を見おろす。しかしどう伝えればよいのかわからない。それに、言ったところでオーガスタスがリルの言うとおりにしてくれるとは限らない。
「ん、ぁぁ……っ」
 ため息まじりに、陰鬱さをにじませて声を吐き出す。
 するとオーガスタスは「ふっ」と息を漏らして笑い、リルの要望に応えるように彼女の乳首を強く吸い立てて貪った。
「ひぁっ!! ぁ、んぅ……ッ!」
 花芽への愛撫も激しくなった。膣口の蜜をすくってぬめりをくわえ、なめらかになったところを二本の指でこすり合わせる。器用に根もとからつまんでしごいていく。
 リルの両腕はもはや拘束の必要はなくなっていた。心地よい愛撫に悶え、快楽に溺れている。
 オーガスタスは口に含んでいないほうの乳首を指の腹で転がし、そうしているあいだも下肢の付け根にはしっかりと刺激を与え、ひっきりなしにリルの官能をあおる。
「ああ、ぁ――……っ!!」
 下半身を核としてせり上がってくるものの正体は、すでに知っている。それが弾け飛ぶ瞬間に快感が極まり、余韻は気だるく、罪悪感に襲われることも。
 リルは目をぎゅうっと閉じた。
 どくどくと身の内が震え、そしてすぐに絶頂の余韻にさいなまれる。
「……まだ、終わらないからね?」
 念を押しながらオーガスタスはリルの両肩をベッドに押し付け、彼女の体を仰向けにした。彼自身はどんどん下方へ向かっている。真っ赤な舌が素肌をたどりながら下半身へおりていく。
「ンッ……。な、に、するの……?」
 そっと胸もとを覆い、オーガスタスの動向をさぐる。
「んー……?」
 オーガスタスはわざとらしくとぼけた声を出して、リルの両脚を大きくひらかせた。
「っ、や……」
 何度か見られているところではあるが、それでも羞恥心は抜けない。脚を閉じようとしたが、閉じたところで彼の顔を挟み込んでしまうだけなので意味がない。
「そこをどいて、オーガスタス」
「いやだ」
 きっぱりと否定し、オーガスタスはリルの脚の付け根をべろべろと舌で舐め上げる。
「ぁ……っ」
 なんでもない場所だというのに、体が敏感になっているのか、内股を舐められただけでなまめかしい声が漏れ出てしまう。
 舌はどんどん秘芯へと近づいていく。そこへきて欲しいような、そうでないようなどちらともつかない心境だった。
 恥ずかしさと気持ちよさのはざまで揺れている。
 薄くほほえみ、挑発的に見上げられれば、心の内に関係なく「やめて」と口から出てしまう。そうしたところで彼がやめないのをわかっていながらも――。
「とろけてるね……。うまそうだ」
 つかまれている両脚が、無意識にぴくっと動いた。ひとりでに動いているところはほかにもある。いましがた「とろけている」と指摘された箇所だ。
 そこを満たしてくれるものの存在を待ち望み、蜜道はひくひくと期待まじりにうごめいている。
 オーガスタスの舌は太ももの内側をたいそうまわり道しながらねっとりと這い、茂みを飛び越え、ようやく淫唇にさしかかった。
「あなたのここは僕の欲をそそる。焼きたてのパンよりも、ね」
「っぁあ……!」
 蜜口をじゅううっ、と吸い上げられている。彼の喉もとがごくりと動いた。蜜の筒から淫液を吸い出し、飲み込んでいる。
「やっ、ぁぁ、やめて……!!」
 羞恥で身が焦げる思いだった。リルはぶんぶんと首を横に振りながら腰を引く。しかし両脚にはたくましい腕が絡みついていた。少し腰を引いたくらいでは、オーガスタスの口淫から逃れることはできない。
「……どうして? あなただって僕の体液を飲み込んだじゃないか。だから僕も同じことをしているだけだよ」
 なまめかしく濡れている唇の端をぺろりと舐め、オーガスタスはほほえむ。
「……っ、とにかく、だめ……。へんになってしまいそう」
「ふうん……?」
 もうとっくにへんだろ、と言われているようだった。目を細めて嗤う彼の表情が、そんなふうに訴えかけている。あるいは、そういう自覚があるからかもしれない。
「じゃあ蜜を飲むのはやめる」
「……っふ」
 それでは、つぎはなにをされるのだろうと不安になって身構える。
 体を硬くするリルを解きほぐすようにオーガスタスは彼女の素肌をゆっくりと撫でた。手のひらの温度はすっかりリルと同じになって、なじんでいる。

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