ひきこもり令嬢は囚われの貴公子に溺愛される 《 第三章 勘違い 08

 温かな指先がやわらかな陰唇をゆるゆるとたどり、莢を大仰に払ってなかの芽をくすぐる。
「うぅっ……」
 達したとはいえいまだにそこは敏感だ。ぷっくりとふくらんで、ささいな刺激でも過剰に反応する。
「すごく敏感だね。舌で触れるほうがいいみたいだ」
「なっ……! い、や……っ」
 否定してみるものの、淫芽はかつての快楽を記憶していた。舌で触れられることの快さを覚えている。
「あぅ……んっ!」
 つんっ、と舌先でわずかに突つかれただけで、びりびりとした悦楽が体中に駆け巡った。
 それだけならまだしも、あわいの入口も責められる。オーガスタスは中指を膣口に沈み込ませ、えぐるように円を描いてまさぐった。
「ひぁっ、ぁ……! やぁ、っあ、ンッ……!」
 指はどんどん奥へ進んでいく。痛みはなく、あるのは快感ばかりだ。
 彼のもう片方の指は、体の外側を這っていた。いたずらにこちょこちょと素肌をくすぐりながら、ふくらみのいただきにのぼりつめる。左の乳首が押しつぶされるのと、下半身にうずまった指が最奥を突くのは同時で、とたんに快楽が突きぬけた。
「っぅ、ああ……ッ!!」
 秘芯を舐め上げる舌は緩慢だが、ほかの二箇所を激しく責め立てられているから、相乗効果とでも言うべきなのかとにかくめまぐるしい。めまいがしてきそうなほどの強い快感に襲われている。
 舌がいっそうねっとりと肉粒をえぐった。その瞬間にリルは蜜壺を収縮させた。しかしオーガスタスは蜜肉に沈み込ませた指を抜くことはせず、なおもぐちぐちとかき乱す。
「……うん、すごくいい状態だと思う。すんなり入りそう」
「ふぅっ、く」
 彼の言葉は聞き流した。理解できなかったというほうが正しい。
「ねえ、リル。あなたのなかに直接、注ぎ込むのがいちばん効果的だよ」
 なにがなにに効果的なのか、もはやわからない。リルがはじめにこだわっていた体液の話をしているのだと、動転しているせいで気がつかなかった。
 オーガスタスはとことんリルの妄信に付き合っている。彼女にはすでにどうでもよくなっていることをあえて理由にして、こじつけている。
「――リルのナカを味わってみたい」
 ぺろりと唇の端に舌を這わせて、オーガスタスは扇情的に本音をこぼし、じゅぶっ、と大きな水音を立ててリルの体から指を引き抜いた。
 彼の指を追いかけるように、膣口から蜜がとろりとしたたり落ちる。
 オーガスタスがグレーのトラウザーズの前をくつろげる。
 あらわになった陽根は初見ではないというのに、ひるんでしまう。彼がそれをどこに挿れるつもりなのか、なんとなくはわかるが現実味がない。
(こんな大きなもの――本当に入るの?)
 拒むという選択肢は初めからなかった。体はすっかり快楽のとりこだ。それでも、恐怖心はつきまとう。破瓜は痛む、という知識だけは持ち合わせていた。全身が小刻みに震え始める。
 彼女のそんなようすを、オーガスタスは不思議そうに見おろしていた。
「え……っと、もしかして……リルは、乙女?」
 こくん、とうなずく。彼がなにをそんなに驚いているのかリルにはわからなかった。オーガスタスは青と金の目を大きく見ひらいている。
「未亡人だからてっきりもう……」
「……誰とも、結婚なんて……したことないわ」
 ぽつりと静かに返した。震えはいまだにおさまらない。
(初対面の仮面舞踏会であんな格好だったから、勘違いしたのね)
 ロランも、どこからどう見ても未亡人だと太鼓判を押していたくらいだ。
 そういえば彼がここに来てからも、そういう話はまったくしたことがなかった。
「……へえ、そうなんだ」
 形のよい唇の端が上がっていく。
「そっか、そっか……。僕が、リルの初めてになるんだ?」
 そう言ってほほえんだオーガスタスの頬は心なしかほんのりと赤くなっているような気がした。
「なにもかも、あなたが初めて、よ……」
 彼につられてしまったのか、頬に熱がこもる。
「……うん。僕も、あなたが初めてだ」
 うなるように答えて、オーガスタスは身を乗り出した。肉傘が蜜口に押し当てられている。思わず息が止まってしまう。
「ゆっくり息をして。僕も同じようにするから。ほら、吸って……吐いて」
 すう、はあ、と何度か彼の声に合わせて呼吸した。それだけで不思議と気持ちだけは落ち着いてくる。体は、依然として興奮したままだ。
 大きく息を吸い込んだときだった。

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