ひきこもり令嬢は囚われの貴公子に溺愛される 《 第三章 勘違い 09

「―――っ!!」
 ぎちぎちっ、とそんな音が聞こえたわけではないが、それに近いものを体感した。小さくせまいそこに入り込んできた肉塊は媚壁をめりめりと押し広げて突き進んでくる。
「っ、く……ッ!」
 ある一点を通過されると、内側を切り裂かれているような痛みに見舞われた。ひどく喉が渇き、悲鳴も嬌声も出てこない。いまだかつて経験したことがない、壮絶な痛みだった。
 リルのまなじりに浮かんだ涙をオーガスタスがそっと舐め取る。それから彼はゆっくりと肉棒を進め、根もとまでおさめきると、しばらく微動だにしなかった。
 どく、どくんと痛みによる脈動で全身がたぎっているあいだじゅう、オーガスタスはリルの唇を優しくついばんだ。
「……やっぱり、痛む?」
「い、いえ……」
 ちくちくとした痛みはまだ残っているが、否定した。
「動かすよ……」
 そうされることでいったいどうなるのか、わからないので返事はしない。
 体のなかに打ち込まれている硬直が静かに動き出す。彼の表情がつやめいたものに変わる。
「ああ……すごくせまい。さすがに鍛えてるだけあるね?」
 そんなところ、鍛えた覚えはない。しかし返す言葉がない。体内でうごめく陰茎が肉襞をこする感覚はもちろん初めてだが、まるで昔から知っていることのように心地よいのだ。痛みにまさる快感に、心も体も酔い始める。
「……っふ、う……」
 隘路を往復する肉竿の動きが速いのかゆるやかなのか、リルは知らなかった。ずっとこのまま、ぬるま湯に浸かっているような快さが続くのだと思っていた。
「そろそろ、思いきり……いいかな」
 低い声音で告げられ、目を丸くする。現状がすべてではなかったことに驚く。
「え……っ?」
 頓狂な声を上げたのと同時に、ぐんっ、と体が大きく揺れた。
「――っ、あぁ、うっ!!」
 ベッドのきしみがいっきにひどくなった。リルの体とともにぎしぎしと大きく揺れて弾む。
 ぐらぐらと揺らぐ視界には、額に汗を光らせる白金髪の王子様。青と金の瞳が交錯して光の軌跡を作っている。いっそう、美しい。
「あぁ、んっ……! くっ、ふぅっ」
 リルの体内をまさぐる楔に遠慮はひとかけらもなかった。彼女のなかで痛みが消え、すべてが快感に支配されているのをオーガスタスは感じ取ったのだろう。
「はふっ、ぁぁ……っ!!」
 オーガスタスの両手が、リルのふくらみを絞り込むようにつかんだ。先端はよけいに際立ち尖りきっている。その硬く尖った敏感な薄桃色を、オーガスタスは人差し指でぎゅっ、ぎゅうっと押しつぶす。
 それが、最奥を穿たれるのと同時だったものだから、リルは悲鳴に近い大きな嬌声を上げた。とっさに口もとを押さえる。しかしいまさら口を押さえたところで、先ほどの絶叫を消すことなどできない。
「まだ理性が残ってるみたいだね? そんなもの、不必要だよ」
「な……っ? ん、んくっ」
 ゆるやかに内奥をかき乱されている。乳頭を指の腹と爪で交互になぶられ、異なる硬さがもたらす快感に翻弄される。
「んっ、や、ぁ……っ」
「感じるままに喘いで、全身で僕を求めて。体裁なんて気にしてはいけない。僕はありのままのあなたを見たい」
 白金髪の王子様は思いのほか野性的だ。リルは彼から視線をそらした。
(そんなこと言われても)
 いったいなにが「ありのまま」なのか自分でもわからない。喘いでいることすら、信じられないというのに。
「わ、たし……。もう、わからな……っぅ、ンンッ!」
 ずちゅっ、とひどい水音がした。オーガスタスは肉棒をいったん入り口のあたりまで引き、そこからひといきに最奥を突いたのだ。リルを乱すべく、文字どおり揺さぶりをかけている。
 そうして何度も往復されると、肉襞は悦びばかりを覚えてさらに蠕動する。
「ああ、リルのなか……すごくいい」
 艶っぽいため息が頬をかすめる。「このままじゃもたないな」と小さくつぶやき、オーガスタスはリルの体をおもむろに横たえた。
「んっ……!? な、に……?」
 緩慢な律動を続けながら、オーガスタスはリルの背後にまわり込む。彼女と同じほうを向いてベッドに横たわった。
 腰もとにうしろから腕がまわってきたことでぴたりと体が密着した。背中が、熱い。
「ぁ……っ。いや」
 武骨な指先が陰毛を梳いている。黒い茂みを漁られるのには羞恥しか感じない。

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