ひきこもり令嬢は囚われの貴公子に溺愛される 《 第三章 勘違い 10

「あなたのここ、やわらかくてさわり心地がいいよ?」
「そ……っ、とにかく、やめて……」
 仕方がない、と言わんばかりにオーガスタスは「ふう」と息を吐き出し、指を移動させる。抽送は先ほどからかわらずゆったりとしている。貫かれたばかりのときと同じで、まどろんでしまいそうな平坦さだ。
「あっ……!」
 少し油断していた。陰毛を伝っておりてきた指先がリルの不意をついて花芽をつまむ。
「あぁ、う……っ! やぅっ、んんっ……!!」
 根もとからしごきあげられると、下半身の脈動が激しくなってくる。
 オーガスタスはリルの体とベッドの隙間をぬって腕をくぐり込ませた。行きつく先はまろやかな双丘だ。
「ひぁっ、う……っ!」
 淫核に続いて乳房の先端までもつままれ、いじり倒される。
 彼の両手は同じ動きをしている。敏感なそこの根を二本の指でつまみ、きゅっ、きゅっとはさんで持ち上げているのだ。
 その微細な動きが、たまらなく官能をまくし立てる。
「達《い》けそう? リル」
 甘いささやき声が耳朶をくすぐる。オーガスタスのそのささやきが絶頂を誘引した。
「……ッ!」
 収縮する内部のリズムに合わせてオーガスタスは蜜壺におさめたままの陰茎を抜き差しする。
(ああ、わたし……)
 なにもかもがとろけ出してしまいそうだった。体も、理性も、すべてがぼんやりとしている。
「リル……。まだ、平気?」
 問いかけの意味がよくわからないので答えなかった。身をよじってうしろを見つめる。オーガスタスの情欲は枯れを見せない。
「……っん」
 今度は四つん這いにさせられた。四肢には力が入らず、ベッドにふせっているような状態だ。
 剛直は衰えることなことなくリルを貫く。オーガスタスの陽根はすっかり媚壁になじんでしまった。豪快に押し引きされているというのに、初めに感じた痛みは遥かかなたへ消え失せて、悦楽ばかりがほとばしる。
「んぁっ、は、ふ……っ!」
 しだいに、ひと突きが重くなってきた。パンッ、パンッと体までぶつかり合う。
 内壁をまさぐられる初めての行為に疲弊している。しかし苦痛ではなくその真逆だから、妙な具合だ。心地よく、疲れている。
「オーガスタス、私……もう……。んっ、ぅく」
「……うん」
「――ッ!! あぁっ、う、ひぁぁっ!」
 それまでだってじゅうぶん激しかった。いまはもう、どうたとえればよいのかわからない。
 響くのは水音、体がぶつかり合う音、ベッドがきしむ音――そして、はしたない喘ぎ声。そこへ、低いうめき声も重なる。
「……っく」
 オーガスタスはリルのなかから勢いよく雄棒を抜き出し、彼女の背に白い飛沫を散らした。
 リルは完全に力をなくして、ベッドにうつぶせになった。いますぐにでも眠りに落ちてしまいそうな倦怠感が手足の先まではびこっている。
 閉じかけたまぶたの向こうには、おだやかにほほえむオーガスタス。リルのとなりに寝転がって、黒い髪の毛を指に絡めて踊らせている。
「……まだ、眠らせたくないな」
 哀願するようなつぶやき声には気づかないふりをする。もはや自分の意思では目を開けていられない。まぶたがひどく重い。
「ね、む、らせ、て……」
 夢見心地にそうつむぎ、リルは深い眠りに入った。


 翌日は快晴だった。
 朝早くに目が覚めたリルはあちらこちらときしむ体にむちを打ってパンを焼き、掃除洗濯といつもどおりにこなして、昼前には農作業用の服を着て外へ出た。
「リル」
「ひゃっ!?」
 裏口から庭へおりる階段の中腹で、急にうしろから抱きしめられた。その弾みで麦わら帽子がひらりと舞って、階段のいちばん下に落ちる。
 リルは片目をわずかに細めた。白金髪が、目に入りそうな位置にあるからだ。オーガスタスがリルに頬ずりをしている。
「リルは本当に働き者だ。体、つらくないの?」

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