ひきこもり令嬢は囚われの貴公子に溺愛される 《 第三章 勘違い 12

 彼の手は熱い。ゆっくりと力を込められ、こった肩にはよく効いた。
「ねえ見て、リル。綺麗な夕陽だ」
「……ええ」
 一日が終わる。今日は、彼と過ごすことができた。しかし明日はわからない。リルとオーガスタスはとても曖昧な関係だ。
(やだ……夕陽のせいね。なんだか哀しくなってきちゃった)
 オーガスタスが真面目に肩を揉むものだから、リルはほかになにをするでもなく、不安に駆られた。そんな彼女の横顔をオーガスタスは不思議そうにのぞき込む。
「……リル。なにを考えてるの」
「べつに……なにも」
「そう……?」
 肩を覆っていた両手がするするとふくらみのほうへ落ちていく。
「んっ……やめてったら」
「疲れ果てて元気がないみたいだから、こっていそうなところを揉んであげる。リルがいつもどおりになるように、ね。奉仕だよ、奉仕」
「やっ……!」
 ふくらみの上部、乳輪には触れないぎりぎりのところをオーガスタスの両手が覆い、左右に揺らす。
「そんなところ、こってないわ……!」
「そうかな? ……ああ、リルは意外と胸の筋肉があるんだね。脂肪ばかりではないようだ」
「な……に、言ってるの。……っん」
 頂点を避けるようにしてふくらみをわしづかみにされた。ぱちゃっ、と湯がはねる。
 指の腹でふにふにと押され、乳房の形がさまざまに変わる。遊ばれているような気がしてくる。
「やだっ、ゃ……っ」
「んー、やっぱりこってるよ。マッサージが必要だ。それも、長時間の」
 オーガスタスはなにかと理由をこじつけてくるが、先ほどの言葉はいままで聞いたなかでもっとも白々しかった。
「う、嘘を言わないで……!」
「あたたかくて、やわらかい……。リルに触れていると、癒される」
 熱いため息が耳もとをかすめる。オーガスタスはリルの肩口に顔をうずめている。本当にリラックスしているようだ。のしかかられている右肩が重い。
「リルは、気持ちよくない……?」
「……ッン」
 ふくらみの、もっとも敏感な部分を指ではさまれている。それも、直接触れるのではなく柔肉を押し上げて乳頭を揺らされている。
 気持ちがいいかそうでないかと問われれば、もちろん前者だ。じれったい心地よさがじわじわと気持ちまでも犯してくる。
「ふ……っ、く……。オーガスタス……ッ」
「んー……? なあに。……その名前で呼ばれるの、ずいぶんと慣れてしまったな……」
 彼のつぶやきはリルの耳に届かない。
 リルは大きく息を吸い、いっきに吐き出した。さざ波のような快感だ。いいところまでやってくるが、すぐに遠のいてしまう。オーガスタスはけっして、じかにいただきに触れようとしない。
(だからって、私からねだるなんて……)
 しかしなにかしらの反応をこちらが示さなければ、オーガスタスはふくらみの頂点にさわらないだろう。いまは彼とのこんくらべだ。そしてリルは、圧倒的に不利な状況。
「……っ」
 ぴちゃっ、と湯が大きくはねる。リルはオーガスタスの両手に自分自身の手を重ね、彼の指を押すようにしていただきに触れさせた。
「リル……。ずいぶんと強引だね?」
「だ……って」
 そうしてしまったあとで、これでは口でねだったほうがまだよかったかもしれないと思った。きっとあきれられている。
 オーガスタスはくすっと小さく笑い、尖りきった乳首をぎゅうっとつまむ。
「わかった、ちゃんとさわってあげる。でも、覚悟しておいてね? 徹底的にいじり倒すから」
「ひぁっ……!! あ、ぁ……っ、んっ」
 じらされて硬度を増していた乳頭を指で強くつままれている。こりかたまって硬いというのに、もとの形をとどめていない。
「ぁぁっ、う、は……っん」
 乳首をこれでもかと圧迫されているが、痛みをともなったその刺激が快い。そう感じてしまう自分はどうしてしまったのだろうと、考える余裕をオーガスタスはリルに与えない。
 ひねりつぶす勢いでこすり合わされていた乳首はいま、指でぐりぐりと柔肉へ押し込められている。
「ああ、くわえたくなってきた……。リル、こっちを向いて」

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