ひきこもり令嬢は囚われの貴公子に溺愛される 《 終 章 想いのままに 03

 不意にちゅっと首すじを吸われ、びくんと体を弾ませる。
 オーランドはタオルを背から胸のほうへと滑らせ、ふくらみを下から押し上げた。
「――っ、オーランド! 真面目に、して」
「うん? 真面目にいじってもらいたいってことかな」
「ちっ、違うわ……!」
 はいはい、とオーランドはなだめるような調子で言って、そのあとはきちんとリルの体を清めていった。
「それじゃあ、最後にココね」
「だ、だから……っ」
 全身をくまなく拭いてもらったが、ふくらみの先端にだけは少しも触れられなかった。絶対にわざとだ。
「ココはとっても敏感だから、慎重に拭かなくちゃ」
 オーランドは折りたたんでいたタオルを広げ、リルの胸に引かっけた。タオル生地はとても薄く、桃色が透けて見えている。
 際立っているそこを、オーランドはタオル越しにきゅうっとつまむ。
「んん、ぅっ……!」
「あれ、どうしたのかな。僕はごく真面目にリルの乳首を拭いてるのに……。リルはずいぶんと色っぽい声を出すんだね?」
「ど、どこが真面目なのよ……! ゃっ、ぁあ」
 引っ張り上げられたり押しひねられたりと、どう考えてもそこを拭くことが目的だとは思えない。
 全身に、性的なところを避けて触れられていたせいでじれているところに、この仕打ちはあんまりだ。
 もともと熱っぽい体がさらに熱さを帯び、頭のなかがくらくらとしてきて視界がかすむ。
 リルのそんな変化に気がついたらしいオーランドは、
「はい、終わり。きれいになったよ」
 と締めくくってタオルをぬぐいさった。
「ふ、ぇ……っ?」
 いきなり終わってしまった愛撫に拍子抜けして目を丸くする。あっけにとられているリルにオーランドは下着とネグリジェを手早く着せた。
「さあ、ゆっくりおやすみ、リル。よい夢を」
「ええ……。あなたも、やすんだら?」
 リルは口を尖らせてそう言った。その顔には不満がにじみ出ている。
「うーん、そうは言ってもまだまだ陽が高いしね。ここでリルの寝顔を眺めているよ。……というか、そうしたい」
「………」
 リルは寝転がり、彼に背を向けた。
「え、どうしてそっちを向くの。そんなに寝顔を見られたくないの?」
「そうじゃ、ないけど……。なんとなく、よ。おやすみなさい、オーランド」
 ふしだらな夢を見て、それが顔に出てしまっては困る――とは、言えなかった。
(なんだかすごく中途半端……。でも、眠い)
 まぶたが重い。そうしようと思ってしたわけではないが、自然と目を閉じる。
 おやすみ、とつぶやいて髪の毛を撫でるオーランドの手を心地よく思いながらリルはまどろみ、間もなくして深い眠りについた。


 リルの体調はすぐに回復した。オーランドのある意味で献身的な介抱のおかげかもしれない。
(オーランドったら、ちょこちょこいたずらを仕掛けてくるんだから)
 バスタブに浮かぶ泡をふうっと吹いて流す。
 すっかり元気になったリルは真っ白な泡が敷き詰められたバスタブに肩まで浸かっていた。ほのかにバラの香りがしていて心身ともに癒される。
(……この気持ちは何なんだろう)
 体調が思わしくないリルを気遣って、オーランドはいたずら程度にとどまっていたのかもしれないけれど、その先をしてもらいたくてたまらなかった。
(恥ずかしい……。早く元気になって、続きをしてもらいたいだなんて思ってることが)
 リルは大きく息を吸い込み、思いきりふうっと吐き出した。泡はふわふわと揺れて流れていく。
「――リル」
「……ぶっ!?」
 もう一度、泡を吹き流そうと口を尖らせていたところに突然名前を呼ばれ、妙な音が出てしまった。
「体を洗うの、手伝ってあげる」
 振り返るとそこにはリルをじらしぬいていた張本人がいた。彼もまた裸だ。恥ずかし気もなくリルと同じバスタブに浸かり、距離を詰めてくる。
 リルはうつむいた。彼の裸体を見ただけで全身が興奮しているのを悟られたくなかった。
 真正面からぎゅうっと抱きしめられる。
「ずっと我慢してたんだよ……。やっと思いきりさわれる」

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