快感マッサージチェア 《 04

口の端からこぼれた唾液を舐め取って、修吾は少しだけ顔を離した。

(もう終わり……?)

彩奈は思っていることがすぐ顔に出るタイプだ。そう自覚しているから、彼の顔が楽しげに歪んだ時にはバツが悪くなってうつむいた。

「もっとして欲しかったですか?」

「……っ、そんなわけ無いでしょ!あなた……来た人みんなにこんなことしてるの?」

「まさか。彩奈さんだけですよ」

「ゃ……っ」

耳の中を熱い舌がうごめく。こういう愛撫はされたことがなくて、彩奈はゾクリと全身を粟立たせた。そもそもセックスの経験だって豊富な方じゃない。夫とは婚活サイトで出会った。夫も含めてこれまで付き合っていた人は みな大人しい方で、それほどセックスに積極的ではなかった。

「やめて……私、結婚してるんだから」

「知ってますよ。でもご主人とはレスなんでしょ」

「違う……そういうわけじゃ……っん、彼が、海外に行ってるから……っ」

「こんな可愛い奥さんを一人残して海外ですか。俺なら一緒に連れて行く」

「や、だ……っ!」

スカートの中に手を突っ込まれる。ショーツの隙間から潤んだ茂みを漁られ、彩奈はガクガクと脚を震わせた。

このままではいけない。自分は夫に愛を誓った身なのだ。流されていてはダメだ。

「いや……っ、さわら、ないで……!彼に合わせる顔が……」

「海の向こうにいる人のことなんて忘れたらどうですか」

「馬鹿言わないで……ん……っ、そもそも……ここは一応 会社、でしょ。こんなことして……いいと……っぁ、ぅ」

「誰も咎めません。なにせこの会社に上司はいませんから」

「どういう、意味……?」

「申し遅れました、わたくしクマーノモニタリング株式会社の取締役社長をしております 隈乃坂 修吾 くまのざか しゅうご です。以後お見知り置きを」

「んっ、ひぁぁっ!」

うやうやしく言った後、修吾は彩奈の蜜壺に中指を挿し入れた。湿り切ったショーツは膝のあたりまでずり下げられている。修吾は彩奈の尻を撫で回しながらもう片方の手で膣肉を揉みほぐした。

「はふっ、ぅ……ぁ、んっ……!」

「滑らかな肌ですねぇ……彩奈さんは二十六歳でしたっけ。年齢より若く見られませんか?初めて見たときは俺よりだいぶん年下かと思いました」

(年下……?年上の間違いじゃないの)

彩奈は修吾の年齢が気になり始めた。だけど質問できるような状態ではない。お尻に触れていた彼の手が上半身に伸びてきたからだ。

(でも……社長って言うくらいだから、意外と歳を食ってるのかも)

チラリと彼の顔を盗み見る。顔立ちは一見すると 精悍 せいかん で、肌はハリがあって艶やかだ。だから、自分よりも若いんじゃないかと思ったのだ。

「俺の歳が気になります?」

考えていることを言い当てられるのは癪だ。彩奈は短く「別に」と答えた。

「三つしか違わないですよ。俺の方が年上だからって敬語を使わなくても良いですよ。彩奈さんは憎まれ口を叩いてる方が可愛いですから」

「あ、ふぁ……っく、はふ……ンッ!」

ブラウスの上から乳房をわし掴みされ、ぐにゃりぐにゃりと捻り回される。敏感な膨らみの頂に下着が擦れ、下半身はしつこく指で突き上げられているから意に反して余計に濡れてきてしまう。

「ぐちゅぐちゅ、ぬちゃぬちゃって、いやらしい音ですね。さっきより濡れてるんじゃないですか?そんなに良いですか、俺の指」

彩奈は ぶんぶんと大きく首を横に何度も振った。

「いや、だ……って……言ってるでしょ!」

思い切り彼の胸を押す。息が上がっているのは色んな意味で興奮しているからだ。彩奈は荒い呼吸の合間に言葉を紡ぐ。

「帰る……っ!ここでのことは誰にも言わないし、忘れるから」

彩奈はすぐに彼から距離を取ってショーツを履き直し、ハンドバッグを片手に急いで部屋を出た。後ろは振り返らない。あんな男に秘部を湿らせたなんて認めたくなかったし、もたもたしていたら本当に取り返しがつかなくなる。

「またお会いしましょうね、彩奈さん」

開けっ放しで出てきた部屋から響く声を背に受けながら、彩奈は駆け足で閑散とした廊下を走り抜けた。

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