言いなりオフィス・ラヴ 《 05

 その日の午前中はなかなか調子が出なくて、午後になりようやくいつものペースを取り戻してきたところだった。そんなとき、

「柚子川さん、一緒に外回り行こっか」

 調子を狂わされた張本人に声をかけられ、断りたい気持ちは山々だったけれど、ここで抵抗したら今度はなにをされるかわからないから、仁美はいかにもこころよくと言ったふうに「喜んで」と答えた。

 仁美と中村は社用車に乗って会社を出た。行き先は車で15分ほどの場所にあるお得意様のクマノ工務店だ。

「柚子川さん、お昼はいつもどうしてるの」

「食堂で経理部のひとたちと一緒に食べてる。外回りの時は違うけど」

「そっか。経理部の高松さんだっけ、ずいぶんと仲がいいみたいだね」

「新人のころは色々と相談に乗ってもらってたから」

「彼女は知ってるの? 課長とのこと」

「……言ってないから、知らないと思う」

「なんで言わないの? 仲よしなんでしょ」

 もしそれを知られてしまったら、きっと軽蔑される。だから、言えるわけがない。

「わかり切ったこと、聞かないで」

「冷たいなあ。そんなに突き放さないでよ。これでも俺、きみのこと心配してるんだよ」

「余計なお世話よ。そういうのウザイ」

 ふうっ、とため息が聞こえた。カチッカチッと方向指示器の音が数回だけ鳴って、中村は急にハンドルを切った。

「どこに行くの? そっちはクマノ工務店とは逆方向じゃない」

 ビルのあいだに挟まれた一方通行の細い路地は薄暗く、人影がない。車はキュッと路肩に停まって、ハザードランプの無機質な音だけがしていた。

「柚子川さんがそんなに口の悪いひとだとは思わなかったよ。お仕置きが必要だ」

 バックルのリリースボタンを押された。シートベルトがゆるむと、彼の腕が仁美の肩をつかんだ。中村の顔が眼前に迫って、もともと薄暗くて不明瞭だった視界は完全に真っ暗になる。

「んっ……!」

 あまりに荒っぽいキスで息苦しくなる。けれど彼は下手なわけではない。力まかせだが、絡みつく舌は意に反して身体を痺れさせる。

「……っふ」

 唇を解放されて安心したのも束の間、スカートのなかに手を入れられて仁美は全身の毛が逆立つ思いだった。

「や、だ……っ、止めてったら!」

 太ももを撫でる手は冷たく、鳥肌が立つ。彼の手を押さえると、

「言うこと聞かなきゃだめだよ。きみは俺の部下なんだから」

「だったらセクハラで訴えるわよ」

「どうぞ、ご自由に」

 彼がそう言うのと、股間に手が這ったのはほぼ同時だった。ショーツのうえから割れ目に指を埋め込まれる。

「セクハラされてるんなら感じたりしないよね。なのにどうしてココは湿ってるんだろ」

「や、だ……っ! ぅ、くふっ」

 下着の生地を蜜口に擦りつけながら、中村はもう片方の手で上部の花芽をグリグリと押した。

「も、止めて……っ。ん、お願い、だから」

「しかたないな。それじゃ、俺のココを舐めてイかせてくれる?」

「なっ……!?」

 中村は仁美の陰部をショーツ越しに指でいじりながら片手で自身のベルトを外している。あらわになった肉棒はすでに猛っていた。

「アンタって、ホント最低……っ、くぅ!」

「するの、しないの? ああ、もしかしていじり合いたいのかな」

 仁美は拳を強く握って中村をにらんだ。いじり合うなんて、冗談じゃない。
 体勢を低くして彼の一物に顔を近づける。そばで見るとますます大きく感じた。

(大輔さんのも、そんなに舐めたことないのに……。ううん、もうなにか考えるのは止めよう)

 自分を押し殺して仁美は肉棒の先端をペロリとひと舐めした。

「あと15分で得意先との約束の時間だから、早くしてね。さあ、もっと深くくわえて」

 中村の大きな手が頭を押さえつけてきた。いやがおうでも喉もとまで陰茎が届く。早く終わらせたいのはこちらも同じだ。仁美は両手を使って雄棒をしごき、くわえ込んだまま舌で先端や裏側を刺激しながら吸い上げた。

「……っ、ん」

 ビュッ、ビュッと竿が脈を打って口内に精液が充満する。仁美はそれを外に出したかったのに、顔を上げた瞬間に口もとを手で塞がれてしまい、飲み込む以外に選択肢がなかった。喉を通る独特の味に耐えきれずケホッと咳をする。

「ありがと。気持ちよかった。じゃ、行こうか」

 中村はスラックスのファスナーを上げながらエンジンをかけ、何事もなかったかのように車を走らせた。

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