言いなりオフィス・ラヴ 《 10

「……っふ」

 汗でワイシャツが肌に張りついているから気持ち悪い。ボタンを外してシャツを脱ごうとしていたら、

「シャワー、浴びるでしょ」

「ちょ、え……っ!?」

 いわゆるお姫様だっこで中村はスタスタと歩きはじめた。お互いにシャツ一枚だから、はたから見ると滑稽かも知れない。
 脱衣所に着くと、中村は自身のワイシャツを脱いでから仁美のそれもはぎ取った。彼は仁美の身体を足先から頭にかけてじっくりと眺めている。

「俺の家にいるときは裸で過ごさない?」

 真顔でそんなことを言われ、仁美は顔面に血が集まるのを感じながら中村の胸を押し退け、無言のまま浴室へ入った。

「仁美、聞いてる?」

「……聞いてない。ていうか軽々しく名前で呼ばないで」

 仁美はシャワーハンドルをひねってお湯を止め、彼を一瞥した。裸で過ごせ、なんて言われてハイそうですねと返事ができるわけがない。

「あれ、身体は洗わないの?」

「だってボディタオルがないし」

「あるから、座って」

 言われるまま風呂椅子に腰をおろす。正直に言えば石鹸できちんと身体を洗いたかったから、仁美は中村がボディタオルを持って来てくれるものだと思って大人しく待っていた。ところが、彼は手にボディソープを泡立てはじめた。

「中村くん、まさかとは思うけどその手がタオルだなんて言わないよね」

「言わないよ。ゲスト用のタオルはあるけど、仁美には俺の手で充分だから」

 べっとりと背中に泡をつけられ、仁美は反射的に胸を両腕で隠した。そうしなければきっとまた愛撫がはじまってしまう。

 けれど彼は予想に反して、仁美の腕をどけようとはしなかった。背中やお腹、脚などをマッサージするように撫でられ、くすぐったい反面とても気持ちがよかった。

「じゃ、流すよ」

「うん……っ、ふ!?」

 すっかり警戒が解けてのんびりとかまえていたら、片手で股を開かれ、そこに勢いよくシャワーを当てられた。至近距離の水流はとても刺激的で、割れ目のなかの花芽は豪雨に見舞われて震え上がっている。

「んん、んっ……! ひぁ、ぁっ」

「どうしたの。変な声、出しちゃって。俺は真面目に洗ってるだけなのに。ご希望ならいじってあげてもいいけど」

 いまだにぬめっている指先で上半身のつぼみをツンと押され、そんなつもりはなかったのに下半身がとろけ出す。シャワーの湯を断続的に陰部に当てられているから、浴室内には湯けむりが立ちのぼり暑いくらいだった。

「黙ってないでなんとか言ったら」

「っふ、ぅぅ……」

 乳輪をたどる指がもどかしかった。先端に触れて欲しいけれど、乞わなければずっとこのままだろう。それでも仁美はかたくなになにも言わなかった。先ほど堕ちてしまったことを少なからず後悔していたし、これ以上はまってしまったら取り返しがつかなくなりそうで、おそろしかった。

「……頑固だね」

 中村は仁美の股間にシャワーを当てるのを止めて立ち上がり、正面にまわり込んだ。そして浴槽の端に腰かける。

「俺のを仁美のオッパイで洗って。これ、命令」

 ひどく横柄な態度で中村は小首を傾げてこちらを見おろしている。仁美がねだらなかったのを怒っているのかもしれない。
 仁美はノロノロと浴室の床タイルにひざをつき、彼の肉棒を胸のあいだに挟んだ。乳房にはボディソープがくっついたままだから、取りこぼしてしまいそうになる。

(中村くん、やっぱり怒ってるのかな……)

様子をうかがおうと見上げるのと同時に片手で額ごと目を覆われ、彼の表情はわからなかった。

「続けて」

 ポツリと響いた声にしたがって肉竿と乳房を擦り合わせる。すると、股間でなにかがモゾモゾと動いた。

「っや、なに……? ん、く」

 彼は足先で仁美の秘めた裂け目のなかを突ついている。小さな突起を前後左右にクニクニといじられ、蜜壺はヒクヒクとうごめきはじめた。
 換気扇がまわっていないのか、浴室内は蒸していて頭がクラクラする。視界は彼の手に阻まれているから暗いし、彼の足先が股間にもたらす微弱な刺激がたまらなく焦れったい。
 仁美は胸のあいだに挟んだ陰茎に両の乳首を擦りつけた。こうでもしなければ、もどかしくてしかたがなかった。すると、ビュッ、ビュッと雄棒の先端から白い淫液が飛び出し、仁美の口もと首のあたりを濡らした。

(そんなに強くしごいたわけじゃないのに……)

 思っていたよりも早く彼がイッてしまったから、仁美は拍子抜けして脈打つ肉棒を眺めていた。しばし呆然としていると、急に腕をつかまれ立たされた。

「な、なに……っ、ん」

 鏡に身体を押しつけられ、乳頭が鏡面に当たる。頭からザアッとシャワーをかけられ、仁美はコホコホとむせた。

「中村くん? どうし……っ、ん、ああッ!」

 雄棒は猛々しさを取り戻しているらしく、肉襞をかきわけて強引に侵入してきた。首筋を舐めていた彼の唇はちゅうっと音を立てて痛みを伴い肌に吸いつく。

「名前で呼べって言っただろ」

 中村の荒っぽい口調に本能的な危機感を覚えて、仁美は彼の名前を繰り返し呼んだ。突き上げる律動は彼の名を呼ぶたびに激しくなっているような気がする。

「あ、ああんっ、ふぁぁ……!」

 激しい抽送に耐えきれず、鏡に何度も身体をぶつけた。乳房の根もとをわしづかみされて仰け反っているから、乳首が先に鏡をこする。

「鏡、見てみろよ。ヤらしい顔してる」

 鏡には曇り止めが施されているらしく、如実に映し出されているのは中村の言う通りの表情をしている自分だった。
 彼は羞恥心をあおるのがうまい。仁美は鏡を見た次の瞬間には身体を痙攣させていた。

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