フィースがすべてを言い終わる前に、アリシアは言葉をかぶせた。
「ああ、体調が悪いんだろう。だから早く医者に診てもらおう」
「お医者さん……? ううん」
首を何度も横に振り、いま自分のなかに起こっていることを説明した。
フィースの表情に困惑の色が浮かぶ。
アリシアは彼の胸もとばかりを見ていた。無意識のうちに手が出て、フィースの肌に触れてしまう。
ああ、彼のバスローブを脱がせてしまいたい。なぜそんな気持ちになるのかわからない。けれど、その欲求を抑えているのがつらい。
アリシアは素直にそれを告白した。
「――落ち着くんだ、アリシア」
静かな声音でなだめられた。こんなことになっているのは、へんなものを食べたか、あるいは寝ぼけているのだと言われた。
(そう、なの……? わ、私、本当にどうしちゃったんだろう……!)
フィースに、あきれられている。不審がられている。
そう思うと、急に涙が込み上げてきた。それを目からこぼさないようにするので精いっぱいになる。
――彼からなぐさめの言葉を投げかけられた。しかしそれが、いまのアリシアにはよけいにこたえる。
(わた、し……私……っ)
落胆してうつむいていると、そっと背中を撫でられた。反射的にびくっ、と体を震わせる。
フィースに触れられて驚いたというよりも、背中に彼の手が添えられていることによってなにかべつのものが体のなかに湧き起こったのだ。
(……ムズムズ、する)
触れてほしいのは背中ではない。もっと下の――自分でもよくわからない、秘められたところだ。
アリシアは包み隠さずそれをフィースに伝えた。下半身を押さえてうったえかける。
「ここが、熱くて……なにかが、あふれてきて……さ、さわりたくて、たまらないの」
「そっ、それ以上は、言わなくていい」
フィースの顔はいままでに見たこともないくらい赤くなっていた。そんなふうに――顔が真っ赤になってしまうほど困らせてしまっているのが申し訳ないけれど、身の内に起こっている変化に困惑しきっていて、助けを求めずにはいられない。
フィースはしどろもどろしながらアリシアに尋ねる。
「ほかに、その……。つらいところはない? 頭が痛いとか、そういうことは」
アリシアはぶんぶんと首を横に振った。
「だったら、明日医者に――母さんに診てもらおう」
「明日、までなんて……っ、待てない……!」
いますぐ、どうにかしたい。なぜそう思うのか、自分でもわからない。
「フィース、脱いで」
「な、なんで」
「裸が見たいから」
「……じゃあ、アリシアも」
「や、やだ……」
彼の裸を見たいと思ういっぽうで、自分の体を見られるのはいやだ、とも思った。恥ずかしい。
「だったら、俺も脱がない」
「ええっ……!」
アリシアが眉尻を下げる。この押し問答はいったいなんなのだろう。そうしているあいだにも、アリシアの下半身はひとりでに濡れていく。
違和感に耐えきれず脚をもじもじさせていると、
「……コッチは、俺が触れてもいい?」
やけに穏やかな声音で尋ねられた。アリシアは深く考えずにふたつ返事をする。
「……うん。自分でさわるの、怖い」
なにかの病気なのだろうか。不安でたまらない。
フィースの母親は医者だ。彼は自分よりも医学の知識を持ち合わせているに違いない。
「……横になって、アリシア」
言われるまま、ベッドに横たわる。
フィースはアリシアと向かい合う恰好でベッドに寝転がった。片方の腕で上半身を支えている。
じいっと見おろされ、つい視線を逸らしてしまう。
「アリシア、本当にいいのか?」
「う、ん……。どんなふうになってるのか、フィースがたしかめて?」
彼が息をのんだのがわかった。
アリシアはますます不安になった。なぜフィースがそんな反応をするのか、さっぱりわからない。
「――いまから俺がすること、ほかの誰にも言っちゃだめだよ」
小さな子どもに言い聞かせるような口調だった。アリシアは「う、うん」と上ずった声で返事をした。
彼の手が、伸びてくる。バスローブごしに太ももを撫でる手はまるで探しものをしているようで、遠慮がちだ。
「フィース……」
アリシアが名を呼ぶ。フィースの喉もとがゴクリと動く。
バスローブの裾からするりとなかへ彼の手が入り込んだ。太ももの内側をたどって這い上がっていく。
「……っ」
極めて妙な心地だった。いまだかつて経験したことのない、ぞくぞくとした疼きが全身を駆け巡る。
「っぁ……!」
脚の付け根に到達され、疼きがいっそうひどくなった。
ためらいがちに、しかし明確に、ぬちゅっと水音を立てて指がぬかるみに浅く沈み込む。
「すごく……濡れてる……」
「ぅ、う……っ」
なにかがあふれているところの入り口をフィースは指でくすぐるようにしてまさぐった。くちゅくちゅ、という音が自分の体から聞こえるのだとは、にわかに信じられない。
アリシアは両腕を胸にぎゅうっと押しつけ、もじもじと内股をこすり合わせた。
「……アリシア、もう少し脚をひらいて。さわりづらい」
「ふ、ぇ……っ?」
フィースはどこか恍惚とした表情を浮かべて、身を縮こまらせているアリシアに言った。
「う、ん……」
戸惑いつつ、ほんの少しだけ脚をひらく。するとフィースの指は、湿っているところの上に移動した。割れ目になっている部分を指の腹でぞんざいに撫であげられる。
「ひぁっ!?」
「……ごめん、いやだった?」
「や、え……っと」
いや、というのとは違う。どちらかというと――。
「あ、あの、私……どうなってるの? フィース、わかる……?」
アリシアは目を伏せて尋ねた。そんな彼女にフィースは端正な顔を寄せる。
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「ああ、体調が悪いんだろう。だから早く医者に診てもらおう」
「お医者さん……? ううん」
首を何度も横に振り、いま自分のなかに起こっていることを説明した。
フィースの表情に困惑の色が浮かぶ。
アリシアは彼の胸もとばかりを見ていた。無意識のうちに手が出て、フィースの肌に触れてしまう。
ああ、彼のバスローブを脱がせてしまいたい。なぜそんな気持ちになるのかわからない。けれど、その欲求を抑えているのがつらい。
アリシアは素直にそれを告白した。
「――落ち着くんだ、アリシア」
静かな声音でなだめられた。こんなことになっているのは、へんなものを食べたか、あるいは寝ぼけているのだと言われた。
(そう、なの……? わ、私、本当にどうしちゃったんだろう……!)
フィースに、あきれられている。不審がられている。
そう思うと、急に涙が込み上げてきた。それを目からこぼさないようにするので精いっぱいになる。
――彼からなぐさめの言葉を投げかけられた。しかしそれが、いまのアリシアにはよけいにこたえる。
(わた、し……私……っ)
落胆してうつむいていると、そっと背中を撫でられた。反射的にびくっ、と体を震わせる。
フィースに触れられて驚いたというよりも、背中に彼の手が添えられていることによってなにかべつのものが体のなかに湧き起こったのだ。
(……ムズムズ、する)
触れてほしいのは背中ではない。もっと下の――自分でもよくわからない、秘められたところだ。
アリシアは包み隠さずそれをフィースに伝えた。下半身を押さえてうったえかける。
「ここが、熱くて……なにかが、あふれてきて……さ、さわりたくて、たまらないの」
「そっ、それ以上は、言わなくていい」
フィースの顔はいままでに見たこともないくらい赤くなっていた。そんなふうに――顔が真っ赤になってしまうほど困らせてしまっているのが申し訳ないけれど、身の内に起こっている変化に困惑しきっていて、助けを求めずにはいられない。
フィースはしどろもどろしながらアリシアに尋ねる。
「ほかに、その……。つらいところはない? 頭が痛いとか、そういうことは」
アリシアはぶんぶんと首を横に振った。
「だったら、明日医者に――母さんに診てもらおう」
「明日、までなんて……っ、待てない……!」
いますぐ、どうにかしたい。なぜそう思うのか、自分でもわからない。
「フィース、脱いで」
「な、なんで」
「裸が見たいから」
「……じゃあ、アリシアも」
「や、やだ……」
彼の裸を見たいと思ういっぽうで、自分の体を見られるのはいやだ、とも思った。恥ずかしい。
「だったら、俺も脱がない」
「ええっ……!」
アリシアが眉尻を下げる。この押し問答はいったいなんなのだろう。そうしているあいだにも、アリシアの下半身はひとりでに濡れていく。
違和感に耐えきれず脚をもじもじさせていると、
「……コッチは、俺が触れてもいい?」
やけに穏やかな声音で尋ねられた。アリシアは深く考えずにふたつ返事をする。
「……うん。自分でさわるの、怖い」
なにかの病気なのだろうか。不安でたまらない。
フィースの母親は医者だ。彼は自分よりも医学の知識を持ち合わせているに違いない。
「……横になって、アリシア」
言われるまま、ベッドに横たわる。
フィースはアリシアと向かい合う恰好でベッドに寝転がった。片方の腕で上半身を支えている。
じいっと見おろされ、つい視線を逸らしてしまう。
「アリシア、本当にいいのか?」
「う、ん……。どんなふうになってるのか、フィースがたしかめて?」
彼が息をのんだのがわかった。
アリシアはますます不安になった。なぜフィースがそんな反応をするのか、さっぱりわからない。
「――いまから俺がすること、ほかの誰にも言っちゃだめだよ」
小さな子どもに言い聞かせるような口調だった。アリシアは「う、うん」と上ずった声で返事をした。
彼の手が、伸びてくる。バスローブごしに太ももを撫でる手はまるで探しものをしているようで、遠慮がちだ。
「フィース……」
アリシアが名を呼ぶ。フィースの喉もとがゴクリと動く。
バスローブの裾からするりとなかへ彼の手が入り込んだ。太ももの内側をたどって這い上がっていく。
「……っ」
極めて妙な心地だった。いまだかつて経験したことのない、ぞくぞくとした疼きが全身を駆け巡る。
「っぁ……!」
脚の付け根に到達され、疼きがいっそうひどくなった。
ためらいがちに、しかし明確に、ぬちゅっと水音を立てて指がぬかるみに浅く沈み込む。
「すごく……濡れてる……」
「ぅ、う……っ」
なにかがあふれているところの入り口をフィースは指でくすぐるようにしてまさぐった。くちゅくちゅ、という音が自分の体から聞こえるのだとは、にわかに信じられない。
アリシアは両腕を胸にぎゅうっと押しつけ、もじもじと内股をこすり合わせた。
「……アリシア、もう少し脚をひらいて。さわりづらい」
「ふ、ぇ……っ?」
フィースはどこか恍惚とした表情を浮かべて、身を縮こまらせているアリシアに言った。
「う、ん……」
戸惑いつつ、ほんの少しだけ脚をひらく。するとフィースの指は、湿っているところの上に移動した。割れ目になっている部分を指の腹でぞんざいに撫であげられる。
「ひぁっ!?」
「……ごめん、いやだった?」
「や、え……っと」
いや、というのとは違う。どちらかというと――。
「あ、あの、私……どうなってるの? フィース、わかる……?」
アリシアは目を伏せて尋ねた。そんな彼女にフィースは端正な顔を寄せる。