いたずらな花蜜 ~妖精がつなぐ未発達な恋心~ 《 第三章 06

 なぜ彼がそんなことをするのかと、もとを正せばアドニスのイタズラが原因なのだが、フィースはやけに楽しそうだった。
「んぁ、ぁっ」
 口に含まれていないほうの乳首を指でもてあそばれる。人差し指で、押したり引いたり突っつかれたりされている。シュミーズごしでも彼の指の感覚がよくわかるのは、生地が水に濡れているせいだ。
「んくっ、ぅ、ふ……。ぁっ!」
 硬く尖っているそこにカリッ、と歯を突き立てられた。
 するどい痛みがほとばしる。しかしそれだけではなくて、甘い痺れもともなっているのが不思議だった。
「……ねえ、アリシア」
 翡翠色の瞳が見つめてくる。アリシアは口もとを手で押さえ、つい目を逸らした。
「きみのココに、さわりたい。……じかに」
「え、と……。んっ、ん……!」
 フィースはアリシアの返事を待つあいだ、彼女のふくらみを濡れた生地ごと両手で揉みまわした。先端は指の関節に挟み込まれ、クニクニと踊らされている。
「ふっ、ぅく……っ」
 こんなふうにされて恥ずかしいのは間違いないけれど、嫌なわけではなかった。
(アドニスが、イタズラをするから……。だから、フィースは)
 対処をしてくれているだけ。それだけだ。
 しかし不意にクレアの言葉が脳裏をよぎる。
 これは本当に、「医学的な対処」なのだろうか――。
「……アリシア」
「んぁっ……!」
 答えを急くようにフィースは薄桃色の透けた突起を指で素早くなぶり、アリシアの顔をじいっと見つめた。
「ぅ……っ。う、ん……」
 同意とも喘ぎともとれるあいまいなものだったが、フィースはすぐに次の行動に移る。
「ひ、ぁっ!」
 一瞬の出来事のように思えた。
 フィースはアリシアのシュミーズを彼女の首のあたりまで一気にめくりあげ、それからドロワーズをズルリと引きおろして足先から抜けさせた。
「……ゃっ」
 首もとにシュミーズが残されているものの、もうほとんど裸の状態だ。羞恥心から、体を隠さずにはいられない。アリシアは肩をすくめて胸を腕で覆う。
「そんなふうにしてたんじゃ、さわれない」
 フィースの語気は強かった。咎められているような気分になってしまう。
「さらけ出して、アリシア」
 真面目な顔つきで、さもそうするのが当然のように言われ、混乱する。従わなくてはいけないような気がしてくる。
 アリシアはためらいながら、おずおずと腕を草むらの上に投げ出した。
「……ん。いい子」
 満足げにほほえみ、フィースは上体を低くする。
(見られて、る――)
 透けていたとはいえ、それでも下着があるのとないのとではずいぶんと恥ずかしさの度合いが異なる。
「んっ……! ふ、ぁ……」
 両方の乳房を脇のほうから手のひらでつかまれた。
 彼の手は熱い。触れられている部分が敏感になっていくような気がした。
「いつの間にこんなに大きくなったんだろうね」
 フィースはアリシアの胸をぐるぐると揉みまわしながらポツリと言った。
「……っ!! ん、んゃっ、ぅ……ッ」
 恍惚とした表情で見つめられると、頭のなかが――芯がぼうっとしてきて、まどろみに似た心地よさを覚える。しかしまったく眠くはない。むしろ冴え渡っていくようだった。
 執拗に胸を揉みしだくフィースの手のひらは大きく、そして熱い。アリシアにしてみれば、彼の両手のほうが「いつの間にこんなに大きくなったのだろう」と思った。
「ふっ、んぅ……」
 フィースにこうしてさわられているだけで、下半身の潤みが増してよけいに疼くような気がして、この行為がアドニスのイタズラに対する正しい処置なのかと疑問さえ浮かんでくる。しかし、やめてとは言えなかった。
「ぁ、うぅ……っ!」
 ――いや、言わなかった。
「……アリシア、かわいいよ。きみの声も顔も仕草も行動も。このピンク色だって……なにもかもが」
 フィースはアリシアの長い髪の毛を一束つまんだあと、それを胸まで持ってきて乳頭にあてがった。ピンク色が、織り重なる。
「ん……っ、ぁぅ」
 つい先ほどまで濡れた服を着ていたせいで湿り気を帯びているふくらみの先端を、フィースが指でつん、つんっとふたつ同時に小突く。
「あっ、ぁ! ゃっ、それ……。んっ、んくっ」
 アリシアは仰向けに寝転がったまま肩を左右に揺らした。そうすることで乳頭が揺れ、見る者をあおることになるのだが、無垢な乙女にその気はない。
 フィースはたまらないと言わんばかりに、揺れるふたつの薄桃色を親指と人差し指でぎゅうっとつまみ、クニクニとさらに踊らせた。
「ああ、アリシア……。かわいすぎて、ぜんぶ貪り尽くしたくなる――」
 切羽詰まっているような、そんな表情を浮かべてフィースは口を開け舌をのぞかせる。
 なぜそんなに苦しそうな顔をするのだろうと考える。しかしすぐに、それどころではなくなった。
「きゃっ!? あ、ぁっ、やぁ……ッ!」
 赤ん坊のように乳首を咥えたフィースはじゅっ、じゅるるっと水音を立ててそこを思いきり吸いあげた。
 薄桃色のいただきは口に含まれ吸われながらも、同時にベロベロと熱い舌に舐め転がされている。
 そこを核に、体の内側がきゅうっと締まる。両手両足がムズムズと甘く痺れ、力を込めずにはいられない。
 そして、もっとも熱を帯びているところ――下半身に、触れてほしくてたまらなくなった。
「あ、あぁっ……! フィース……ッ」
 ねだるように名を呼び、すでに開放的になっている無防備な脚の付け根をこすり合わせる。そこはヌルヌルとした愛蜜が秘所からしたたり落ちて濡れていた。
 フィースは口にしていないほうの乳首を指でこねながら、もう片方の手でアリシアの太ももを撫であげ、ぬめり気のある内股を指でたどった。
「ふっ、んぁ……っ。ぁ、あ」
 触れてほしいところに、無骨な指がじれったさをともなって伸びてくる。
 アリシアはすでに知っている。下半身の小さな突起に彼の指が触れたら、どれだけ気持ちがよいのかを。

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